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276話 レオンハルトside
しおりを挟む夫人の気持ちは物凄くわかるし、僕としても同じ気持ちだったから悔しさはある。
でも、最終的な決断を下すのは陛下だからね。
つまり、僕らは陛下に報告をした後はどのような決断を下すのか待っているしかない、ということか。
そう思いながら公爵とブレイド様を見ると、2人も僕と同じことを思ったらしく、悔しそうな表情をして黙り込んでしまっていた。
まぁ、そうだよね。
僕でもセリスティア様のことに関しては色々と思うことがあるんだからこの3人は僕以上に何かと抱えていることがあるだろう。
それなのに、自分の手が届きそうで届かないところで話が進む、というのは相当悔しいし、やるせない気持ちになっているはずだ。
それがわかっているからこそ、どう声をかけていいのかわからず僕も黙り込んでしまったせいで、僕たちがいる応接室は静寂に包まれてしまった。
ど、どうすればいいんだ?
こんな状況で僕が話題を提供して話すようなことはないし......かといって、このまま重たい空気の中無言なのも辛いんだよね。
何か話題.......いや、でも和気藹々と話が出来るわけでもないから無言なのも仕方がない、と思うしかないのか?
内心、ソワソワとしながらこの状況をどうしようか、と悩んでいる僕に夫人や公爵たちは気付くはずもなく、何か考えているのか徐々に目が鋭くなってきたような......い、いや、きっと僕の考えすぎだ。
なんて思っていると、急に応接室の扉をコンコンとノックする音が聞えてきた。
これは幸い、と言わんばかりに勢いよく扉の方を確認すると、そこには公爵家のメイドが立っていて、部屋に入ってすぐこの重たい空気を察したんだろうな。
一瞬、怯えたような戸惑ったような顔をして僕たちの顔を順番に見たけどすぐに
「旦那様、コルストン公爵がいらっしゃいましたが如何なさいましょう?」
と質問をしていた。
あれ?手紙を出して2時間ほどしか経っていないのに到着したって......相当早いんじゃないかな?
もしかして、手紙を読んですぐに来た、ということなのか?
そう思いながら公爵の方を見ると、鋭かった視線は普段通りに戻っていて、報告に来てくれたメイドに普段通りの優しい笑みを向けながら
「あぁ、そのままここに通してくれ」
と言っていた。
やっぱりさっきのは僕の勘違いだったのかな?
だって、こんなにも早く気分を切り替えるのは難しいし、雰囲気までガラッと変わったからね。
メイドは公爵の指示を聞いてすぐに、かしこまりました、と部屋を後にしたけど、今見てみると夫人の目も鋭いものから普段通りの感情のわからない目に変わっていた。
そんな夫人は
「思った以上に早い到着だったわね」
ニコニコと笑いながらそう言ったけど、正直あまりの変わりように動揺してしまうな。
しかも、笑って言うことではないし.......。
でも、公爵もブレイド様も特に気にした様子もなく
「きっと自分の娘が初めてこれほどまでに大きなことをやらかしたから相当焦っているんだろう」
「えぇ、そうですよね」
となぜかニコニコとしながら話をしていた。
正直、この話を笑いながらする、というのは怖いんだけど........この家ではこれが普通なんだろうな。
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