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272話 ユースティンside

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絶体絶命の状況ですが、どうにかしてこの状況を切り抜けようと頭をフル回転させながら、

「お、お父様?これには理由が……」

となんとか声を出しましたが、そんな私の様子を見て察したんでしょうね。

「なるほどな」

と冷たく呟くと、もう話すことは無い、とでも言わんばかりに椅子に座ったまま私に背中を向けましたわ。

流石にこれはまずい、と瞬時に判断した私は、縋るような気持ちで

「お、お父様?違いますの!これは何かの勘違いで……」

と言って机に置かれた紙をビリビリに破り捨てようとしましたが、これが逆効果だったみたいで

「お前がそこまで取り乱すという時点で聞かなくても答えを言われたようなものだ」

お父様はそう言うと、今までされたことがないくらい冷たい眼差しで私のことを見てきましたわ。

正直、私も咄嗟のことだったとはいえ、お父様に届いた手紙を破り捨てる、なんてことを自分がするとは思ってもいなかったので、驚いていますのよね。

だって、この私が、ですわよ?

勉強もマナーも全て完璧だ、と言われている私がこんなことをするなんて......それほどまでにあの令嬢に対して腹を立てている、ということなのかしら......。

呆然としながらビリビリになった手紙を眺めていると、急に黙り込んだ私に対してお父様は大きくため息をついた後に

「なぜこのような事をした」

静かに、でも怒りを含むような低い声でそう聞いてきましたわ。

なぜこのようなことを、ですか....。

私自身がなぜこのようなことをしてしまったのか知りたいのに、答えられるわけがありませんわよね。

なんて思いながら、お父様の質問に答えることなく俯いていると、

「普段のお前なら、いくら腹を立てたとはいえ隣国の令嬢に対して失礼な行動はしないはずだ」

さっきの質問に付け加える様にそう言われましたわ。

これには何か自分の意見といいますか、思いを伝えた方が良い、と思った私は、なんとか

「だ、だって……」

と話をしようと思いましたが、何も言葉が思いつかず結局は言葉を詰まらせてしまいましたわ。

すると、そんな私を見たお父様は、何度目かわからない大きなため息をついたかと思ったら

「元々言ってあったはずだぞ?レオンハルト殿を我が家の入り婿として迎えるつもりはない、と」

呆れた、とでも言いたそうな顔をしながらそう言いましたわ。

......やっぱり、私がレオンハルト様に好意を持っていたことを知っているお父様はすぐに察したみたいですわね。

いや、そもそも私があのような令嬢に負けるわけがありませんのよ。

だって、私の方がレオンハルト様と長い年月を共にしていますし、私の方がレオンハルト様の好きな物も癖もお茶を飲むときのお砂糖の量だって把握しています。

それに、パーティーの時だって他の令嬢はエスコートしなかったのに私のことだけはエスコートしてくれましたわ。

考えれば考えるほど、レオンハルト様と私は相思相愛だとしか思えませんわよね?

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