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206話 デールside

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首を傾げながら兄上の言葉を待つ俺を、兄上は呆れたかのような目で見て来たかと思ったら

「セリスティア様のことだ。噂では隣国で婚約者を作ったと聞いているが」

そう言ってきた兄上の顔は、なんだか気まずそうというか......言って良いのか、と不安に思っているのが感じ取れた。

ただ、まさか久しぶりに兄上と話す話題がまさかセリスティアのことだとは思ってもいない俺は、小さな声で

「あぁ........」

と呟いた後に、

「そんなのただの噂ですよ」

力なく微笑みながらも、ハッキリと兄上に否定してやった。

だって、セリスティアは国に戻ってきたら俺と婚約するんだろう?

そして前のように我が家の経営についてアドバイスをしながら、自分の家の領地も管理する。

そうするだけで、セリスティアは俺という婚約者が戻ってきて、俺はこのような扱いを受けなくて済むんだ。

だから隣国で婚約者、なんて馬鹿げた話あり得るわけがない。

なんて思っていると、兄上は俺の言葉を聞いて、はぁ.....と大きくため息を着いてきたではないか。

そんな兄上の行動が、まるで俺をバカにしているかのような、呆れているかのようなため息だったから、つい俺は

「セリスティアは俺に婚約破棄をされたときに泣いていたんだ。きっと、まだ俺のことが好きなのに誰かに言われて仕方なく他の奴と婚約をしたんです」

カッとなって兄上にそう言ったが、そんな俺の言葉が悪かったのか、それとも何か他に原因があるのか、兄上は再びため息をついた。

そして、大きくため息を着いた兄上は再び俺の方に視線を向けてきたが、その時の兄上の顔が俺に対して同情しているかのような表情をしていて、また何か言ってやろうかと思ったが

「お前、自分が周りから何と言われているか聞いたか?」

と言われて、苛立ちをグッと堪えた。

はぁ......なんで兄上にまで同情されているかのような目を向けられないといけないんだ。

俺は間違ったことを言っているのか?いや、言っていないだろう?

なんて思いながら、

「なんですか」

と兄上を睨みながら尋ねると

「勘違い野郎、だぞ。正直、今のお前の発言を聞いて俺もそうだと思った」

そう言ってきた兄上の顔は悲しそう、というか同情しているというか......物凄く複雑な顔をしていて、さっきの怒りは飛んで一気に冷静になった。

皆は俺のことを勘違い野郎、と陰で呼んでいるのか?

初めて聞いたし、そんな呼び方.....不名誉にも程がある。

しかも、それを兄上の口から聞かされる、って.......

「なぜそのようなことを言うんですか?俺は本当のことを言っただけで......」

兄上からの言葉にショックを受けながらも、なんとか声を絞り出してそう尋ねると、そんな俺に対して兄上は容赦なく

「じゃあ、もし婚約の話が本当で、セリスティア様がお前のことなど好きでもなんでもない、というのが現実だったらどうするつもりなんだ」

冷たい目と声色で、そう言ってきた。
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