206 / 344
206話 デールside
しおりを挟む首を傾げながら兄上の言葉を待つ俺を、兄上は呆れたかのような目で見て来たかと思ったら
「セリスティア様のことだ。噂では隣国で婚約者を作ったと聞いているが」
そう言ってきた兄上の顔は、なんだか気まずそうというか......言って良いのか、と不安に思っているのが感じ取れた。
ただ、まさか久しぶりに兄上と話す話題がまさかセリスティアのことだとは思ってもいない俺は、小さな声で
「あぁ........」
と呟いた後に、
「そんなのただの噂ですよ」
力なく微笑みながらも、ハッキリと兄上に否定してやった。
だって、セリスティアは国に戻ってきたら俺と婚約するんだろう?
そして前のように我が家の経営についてアドバイスをしながら、自分の家の領地も管理する。
そうするだけで、セリスティアは俺という婚約者が戻ってきて、俺はこのような扱いを受けなくて済むんだ。
だから隣国で婚約者、なんて馬鹿げた話あり得るわけがない。
なんて思っていると、兄上は俺の言葉を聞いて、はぁ.....と大きくため息を着いてきたではないか。
そんな兄上の行動が、まるで俺をバカにしているかのような、呆れているかのようなため息だったから、つい俺は
「セリスティアは俺に婚約破棄をされたときに泣いていたんだ。きっと、まだ俺のことが好きなのに誰かに言われて仕方なく他の奴と婚約をしたんです」
カッとなって兄上にそう言ったが、そんな俺の言葉が悪かったのか、それとも何か他に原因があるのか、兄上は再びため息をついた。
そして、大きくため息を着いた兄上は再び俺の方に視線を向けてきたが、その時の兄上の顔が俺に対して同情しているかのような表情をしていて、また何か言ってやろうかと思ったが
「お前、自分が周りから何と言われているか聞いたか?」
と言われて、苛立ちをグッと堪えた。
はぁ......なんで兄上にまで同情されているかのような目を向けられないといけないんだ。
俺は間違ったことを言っているのか?いや、言っていないだろう?
なんて思いながら、
「なんですか」
と兄上を睨みながら尋ねると
「勘違い野郎、だぞ。正直、今のお前の発言を聞いて俺もそうだと思った」
そう言ってきた兄上の顔は悲しそう、というか同情しているというか......物凄く複雑な顔をしていて、さっきの怒りは飛んで一気に冷静になった。
皆は俺のことを勘違い野郎、と陰で呼んでいるのか?
初めて聞いたし、そんな呼び方.....不名誉にも程がある。
しかも、それを兄上の口から聞かされる、って.......
「なぜそのようなことを言うんですか?俺は本当のことを言っただけで......」
兄上からの言葉にショックを受けながらも、なんとか声を絞り出してそう尋ねると、そんな俺に対して兄上は容赦なく
「じゃあ、もし婚約の話が本当で、セリスティア様がお前のことなど好きでもなんでもない、というのが現実だったらどうするつもりなんだ」
冷たい目と声色で、そう言ってきた。
16
お気に入りに追加
4,199
あなたにおすすめの小説
使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。気長に待っててください。月2くらいで更新したいとは思ってます。
金の亡者は出て行けって、良いですけど私の物は全部持っていきますよ?え?国の財産がなくなる?それ元々私の物なんですが。
銀杏鹿
恋愛
「出て行けスミス!お前のような金のことにしか興味のない女はもううんざりだ!」
私、エヴァ・スミスはある日突然婚約者のモーケンにそう言い渡された。
「貴女のような金の亡者はこの国の恥です!」
とかいう清廉な聖女サマが新しいお相手なら、まあ仕方ないので出ていくことにしました。
なので、私の財産を全て持っていこうと思うのです。
え?どのくらいあるかって?
──この国の全てです。この国の破綻した財政は全て私の個人資産で賄っていたので、彼らの着てる服、王宮のものも、教会のものも、所有権は私にあります。貸していただけです。
とまあ、資産を持ってさっさと国を出て海を渡ると、なんと結婚相手を探している五人の王子から求婚されてしまいました。
しきたりで、いち早く相応しい花嫁を捕まえたものが皇帝になるそうで。それで、私に。
将来のリスクと今後のキャリアを考えても、帝国の王宮は魅力的……なのですが。
どうやら五人のお相手は女性を殆ど相手したことないらしく……一体どう出てくるのか、全く予想がつきません。
私自身経験豊富というわけでもないのですが、まあ、お手並み拝見といきましょうか?
あ、なんか元いた王国は大変なことなってるらしいです、頑張って下さい。
◆◆◆◆◆◆◆◆
需要が有れば続きます。
婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~
ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。
そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。
自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。
マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――
※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。
※第二章まで完結してます。現在、最終章について考え中です(第二章が考えていた話から離れてしまいました(^_^;))
書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m
※小説家になろう様にも投稿しています。
強い祝福が原因だった
棗
恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。
父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。
大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。
愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。
※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。
※なろうさんにも公開しています。
婚約破棄された貧乏令嬢ですが、意外と有能なの知っていますか?~有能なので王子に求婚されちゃうかも!?~
榎夜
恋愛
「貧乏令嬢となんて誰が結婚するんだよ!」
そう言っていましたが、隣に他の令嬢を連れている時点でおかしいですわよね?
まぁ、私は貴方が居なくなったところで困りませんが.......貴方はどうなんでしょうね?
7年ぶりに帰国した美貌の年下婚約者は年上婚約者を溺愛したい。
なーさ
恋愛
7年前に隣国との交換留学に行った6歳下の婚約者ラドルフ。その婚約者で王城で侍女をしながら領地の運営もする貧乏令嬢ジューン。
7年ぶりにラドルフが帰国するがジューンは現れない。それもそのはず2年前にラドルフとジューンは婚約破棄しているからだ。そのことを知らないラドルフはジューンの家を訪ねる。しかしジューンはいない。後日王城で会った二人だったがラドルフは再会を喜ぶもジューンは喜べない。なぜなら王妃にラドルフと話すなと言われているからだ。わざと突き放すような言い方をしてその場を去ったジューン。そしてラドルフは7年ぶりに帰った実家で婚約破棄したことを知る。
溺愛したい美貌の年下騎士と弟としか見ていない年上令嬢。二人のじれじれラブストーリー!
婚約破棄って、貴方誰ですか?
やノゆ
恋愛
ーーーその優秀さを認められ、隣国への特別留学生として名門魔法学校に出向く事になった、パール・カクルックは、学園で行われた歓迎パーティーで突然婚約破棄を言い渡される。
何故かドヤ顔のその男のとなりには、同じく勝ち誇ったような顔の少女がいて、パールは思わず口にした。
「いや、婚約破棄って、貴方誰ですか?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる