私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ

榎夜

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205話 デールside

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セリスティアが国を出て約5か月近く経過した。

まだ半年も経っていない、というのにその間に俺の環境はガラッと変わって、今では家にも学園にも俺の居場所がない最悪な状況となっていた。

はぁ........正直、セリスティアにここまでこだわっている理由がわからないし、領地の経営だって人任せにしないで自分でどうにかすればいいとは思わないか?

なぜ俺だけがここまで言われなければならないのか......最初は父上に婚約破棄のことを言われて反省と後悔をしたが、今では苛立ちを感じる様にすらなってしまった。

だって、5ヶ月も経っているのにセリスティアと婚約する以外の打開策がないなんておかしいとは思わないか?

そう思いながらも、俺の意見なんて父上に聞いてもらえるわけもないから

「ただいま戻りました」

とだけ挨拶をして、今日も自室へと引きこもった。

はぁ.....いつまでこんな生活をしないといけないんだ。

父上は最近まともに仕事をしなくなってしまったから、母上と兄上がなんとか頑張っていると聞くし.......。

そんな状況なら、兄上に爵位を渡してしまった方が楽になれるのではないか?

俺自身もその方が父上に文句を言われなくなるし......。

なんて思いながらも、あの父上がそう簡単に伯爵の座を譲るとは思えない俺は、小さくため息をついた。

すると、それとほぼ同時に珍しく俺の部屋の扉をコンコンとノックする音が聞こえてきたではないか。

この時間に俺の部屋に来る人なんて普段は誰もいないから見当がつかないが.....一体誰が部屋に来たんだ?

そう思いながら、ゆっくりと開く扉に視線を向けると、そこには

「久しぶりだな」

と少し悲しそうな顔で微笑む兄上が立っていた。

まさか俺の部屋に兄上が来るとは思ってもいなかった俺は、なんて返事を返したらいいかわからず黙り込んでしまったが、そんな俺を兄上は苦笑しながら見た後に

「部屋に入ってもいいか?少し話をしよう」

と俺に話しかけてきたではないか。

なんだ?なぜ兄上が部屋に?

も、もしかして俺がセリスティアと婚約破棄してしまってから、家がおかしくなった、と文句を言いにきたのか?

なんて思いながらも、流石に断ることは出来ない、と判断した俺は渋々兄上を部屋の中に入れることにした。

まぁ、一発くらいは殴られても仕方がない、くらいで考えておくしかないな。

実際に俺は兄上たちから殴られても仕方のないことをしてしまったんだし。

そう思いながら、兄上と2人向かい合って椅子に座ると、兄上は早速と言わんばかりに

「お前、これからどうするんだ」

と言って、悲しそうな視線を俺に向けてきたが.......

「どうする、とはどういうことですか」

き、急にどうするのかと聞かれても、なんのことを言っているのか理解が出来なかった俺は、思わずそう聞き返してしまった。

だって.....なぁ?

どうするって言われても、この状況はどうすることも出来ないし、かといって逃げ出すことも出来ない。

どうしようもないんじゃないか?

そう思いながら兄上の答えを待った。

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