私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ

榎夜

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196話

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ユーティン様の件があってから、特に私たちに絡んでくる令嬢は居ませんが、やっぱりどこか鋭い視線はずっと感じますわね。

ジャミン様が合流した、ということもあって余計に興味本位で.....という人も中にはいるみたいですが.....。

とりあえずは絡んでくる人がいないので一安心ですわ。

なんて思っていると、急にレオンハルト様の動きがピタッと止まりましたわね。

これには反射的に

「どうしましたの?」

とレオンハルト様の顔を見ましたが.......表情は普段と特に何も変わらないので、問題が起こった、という訳ではなさそうですわ。

ただ、そうなると余計になぜ動きが止まったのかわからないんですが......。

そう思いながら、レオンハルト様の言葉を待っていると

「ごめん.....父上たちが呼んでいるから行ってこないといけない」

と言ったレオンハルト様の表情はさっきまでとは変わって、本当に申し訳なさそうな顔をしていましたわ。

えーっと......つまりは、レオンハルト様のご家族が呼んでいる、ということですわよね。

ただ、それに私も一緒に行くことは出来ない、と。

普通に考えて、婚約していない相手なのであれば、家族の呼び出しに参加するのは...と思いますが一応、私は婚約者ですし、レオンハルト様のご両親にも挨拶はしているんですから、私もついて行ってもいい事だと思いますわ。

だからこそ、私も一緒に、といえないことが申し訳なさそうにしているんでしょう。

なんて思いながら、謝罪するレオンハルト様に

「仕方がありませんわ」

と苦笑してジャミン様の方を見ると、ジャミン様の方もやむを得ない、と思ってくれたみたいで小さくため息を着いた後に

「とりあえずセリスティア嬢の隣には俺が........」

と言いかけた時でしたわ。

「ジャミン様」

どこからか現れたメイドがジャミン様にヒソヒソと何かを伝えているではありませんか。

話を聞くにつれて表情が強張って来ているので、きっと良い内容でないんでしょうけど.......このタイミングで、と思ってしまいますわよね。

なんだか嫌な予感がしますわ。

そう思いながら、メイドとジャミン様の会話が終わるのを待っていると、やはりこのような時の嫌な予感というのは当たってしまうみたいで

「すまない。俺も少し行かなければいけないところが出来てしまった」

ため息交じりで、ジャミン様はそう言ってきましたわ。

まぁ、大体予想が出来ていましたし、驚くことはありませんが......ハッキリ言うと最悪なタイミングですわよね。

まるで誰かが意図的にタイミングを合わせたとしか思えませんわ。

そう思いながらチラッと隣に立つレオンハルト様を見ると、物凄く心配そうな顔をして私を見ていますわね。

1人で置いて行ってしまっても大丈夫なのか、と思っているんでしょう。

まぁ、当然ですが大丈夫ではないだろう、と思っていますわ。

ですが、呼ばれているのに1人の令嬢の相手で家族の呼び出しを、無視するわけにもいきませんし、ここは仕方がありません。

そう思った私は、余裕そうにニッコリと微笑んで、レオンハルト様とジャミン様を交互に見た後にこう言いましたの。

「大丈夫ですわ。この状況で私に手を出してくる令嬢なんて居ないと思いますし、出来るだけ端の方で息を潜めてまっています」

この状況、そう言うしかありませんわよね。

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