私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ

195話 カインside

キーンの行動について、考えてみても納得できる理由が思う浮かばない俺は、大きなため息をついた。

うーん.....確か婚約破棄の原因はセリスティアの義理の姉.....いや、従兄弟たちの行動があまりにも目に余る、ということだったよな？

つまり、セリスティア嬢に関して何か悪い印象は持っていないからこそ、婚約破棄してしまって後悔している、とかそんな感じか？

はぁ......婚約破棄をする前のキーンはどちらかと言うと目立たなくて気弱な印象を持っていたが、最近のキーンは頭がおかしくなってしまっている、というか.....何かに追い詰められているような、そんな気がしてならない。

なんて思っていると、何度もため息をついている俺に

「そのことなんですが、どうやら伯爵がセリスティア様と再び婚約するように言っているみたいですわよ？」

まるで、今何を考えているのか察していたかのようなタイミングで、エリザベートがそう言ってきたではないか。

サラッと言ってきたのは良いんだが........

「伯爵が、か？」

まさかの人物の登場に驚いて、思わずそう聞き返してしまった。

だって、キーンの親の伯爵って......穏やかで伯爵の中でも一番大人しい印象の人だぞ？

そんな伯爵に責められて、と考えてもキーンがあれほどまでにおかしくなるとは思えないんだが.....。

そう思った俺は、優雅にお茶に口を付けているエリザベートに詳しく説明するよう頼んだ。

すると、俺の言葉に

「もちろんですわ」

と言ってカップを置いたエリザベートが詳しく説明をしてくれたんだが想像もしていなかった事実に思わず言葉を失ってしまった。

「まぁ、私も噂で聞いただけなので確かな情報とは言えないかも知れませんが........」

と前置きをして話した内容は、セリスティア嬢とキーンの婚約の背景、みたいなものだった。

これは俺も知らなかったんだが、セリスティア嬢は婚約をしてくれるのであれば、領地経営について手助けをする、という契約で伯爵家の手伝いをしていたんだとか。

まぁ、それについては特に違法でもないし、セリスティア嬢はしっかりと教えながら手伝いをしている、ということで、逆に良い事だと言える。

ただ、キーンが勝手に婚約破棄をしたことで、婚約で得ていた恩恵を受けることが出来なくなってしまった、と。

そのせいで、伯爵は荒れてしまいキーンに当たり散らかして経営は伯爵家の長男が行っている、とのことだ。

「そういえば、伯爵領地の経営も最近下がってきているな。本当に少しずつだということであまり問題には上がっていなかったが」

エリザベートの話を聞いてそう呟くと

「再びセリスティア様とキーン様を婚約させて、伯爵家の領地を助けてもらう、という考えなんでしょうね。既に他に婚約者がいる、と聞いているはずですが、いまだに諦めていませんもの」

そう言ったエリザベートは、その考えを不快に思っているみたいで、思い切り眉を顰めているな。

まぁ、自分の領地を他の令嬢に管理してもらっているようなものだから仕方のない反応かもしれないが、それほどまでにセリスティア嬢が優秀だ、ということだ。

なんて思いながら、皮肉交じりに

「セリスティア嬢の義姉たちからの攻撃はすぐに逃げたのにな」

と言うと、これにはエリザベートも苦笑して頷いていた。