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119話 デールside
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その後のことはよく覚えていない。
殿下に何か失礼なことを言ってしまったかもしれないし、もしかしたら何も言わずに立ち去ったのかもしれないし。
とにかく気が付いたら馬車の中にいて、呆然と天井を見つめていた。
いや.....だって、俺に婚約破棄されたときはあれほど悲しそうな顔をしていたじゃないか。
それなのに、急に学園に来なくなったと思ったら婚約?
あり得ないだろう。
そもそも、相手は一体誰なんだ?
この国の奴か?
いや......もしかしたら殿下が何か裏で手を引いていて他国の奴の可能性もあるな。
セリスティアがどこにいるのかもわかっていないのに、話をすることも出来ないじゃないか。
そう思いながら馬車に揺られていると、俺の意識が切れている間に結構時間が経っていたんだろう。
馬車はゆっくりと家の前に停止して、馬車の扉を開けられてしまった。
はぁ........今まではセリスティアと再び婚約するんだ、という思いが俺の原動力みたいなものだったし、少しでも希望があったからこそ、周りからの声も耐えられたのに.......。
セリスティアと婚約することが出来ない、とわかった今、俺は何もすることがないではないか。
そう思いながら嫌々ながらも家の中へと入っていった。
玄関に入ると、今日も執務室のある方向から父上の叫び声が聞こえてくる、という異様な状況で毎日こんな状況では嫌でも慣れてしまう。
メイド達も最初は驚いたような顔をしながら父上のことをなんとか宥めようとしていたけど、今では聞こえていないかのように普段通りに仕事をこなしているし。
まぁ、辞めていった人も結構な人数いたけどな。
なんて思いながら自分の部屋に向かっていると、正面の方から母上が歩いてくるのが見えて思わず身構えてしまった。
普段はこの時間に廊下を歩いているなんてことはあり得ないのに.....。
そう思ったが、無視するわけにもいかないと判断した俺は恐る恐る
「ただいま戻りました........」
と母上に声をかけてみた。
すると
「あぁ.....帰ってきたのね」
そう言った母上は力なく微笑んでくれたが、今までの優しい笑みなんかではなく、無意識に口角が上がっているだけの、本当に弱弱しい笑みだった。
母上も、セリスティアと婚約破棄してから人が変わったかのように元気がなくなってしまった。
いや、性格には父上がおかしくなってから母上もおかしくなってしまったんだ。
最初の方はセリスティアに頼りすぎたんだ、と反省して自分たちのやり方を見つけようと2人で頑張っていたみたいだが、どうしても難しい書類の内容になると捌けなくなってしまって、の繰り返し。
今では仕事をするどころか、書類がただただ溜まっていくだけで、兄上が必死にしがみついている、という状況だ。
正直、いつ領地が傾いてもおかしくない状況なのに、兄上は本当によく頑張っていると思う。
そんなことを思いながら、俺の隣にある兄上の部屋の中をチラッと見ると、真剣な顔をして、大量の本を隣に机に向かっていた。
ただ、婚約破棄しただけなのに.....そう訴えたかったが、俺にそんなことを言う資格なんてどこにもない。
殿下に何か失礼なことを言ってしまったかもしれないし、もしかしたら何も言わずに立ち去ったのかもしれないし。
とにかく気が付いたら馬車の中にいて、呆然と天井を見つめていた。
いや.....だって、俺に婚約破棄されたときはあれほど悲しそうな顔をしていたじゃないか。
それなのに、急に学園に来なくなったと思ったら婚約?
あり得ないだろう。
そもそも、相手は一体誰なんだ?
この国の奴か?
いや......もしかしたら殿下が何か裏で手を引いていて他国の奴の可能性もあるな。
セリスティアがどこにいるのかもわかっていないのに、話をすることも出来ないじゃないか。
そう思いながら馬車に揺られていると、俺の意識が切れている間に結構時間が経っていたんだろう。
馬車はゆっくりと家の前に停止して、馬車の扉を開けられてしまった。
はぁ........今まではセリスティアと再び婚約するんだ、という思いが俺の原動力みたいなものだったし、少しでも希望があったからこそ、周りからの声も耐えられたのに.......。
セリスティアと婚約することが出来ない、とわかった今、俺は何もすることがないではないか。
そう思いながら嫌々ながらも家の中へと入っていった。
玄関に入ると、今日も執務室のある方向から父上の叫び声が聞こえてくる、という異様な状況で毎日こんな状況では嫌でも慣れてしまう。
メイド達も最初は驚いたような顔をしながら父上のことをなんとか宥めようとしていたけど、今では聞こえていないかのように普段通りに仕事をこなしているし。
まぁ、辞めていった人も結構な人数いたけどな。
なんて思いながら自分の部屋に向かっていると、正面の方から母上が歩いてくるのが見えて思わず身構えてしまった。
普段はこの時間に廊下を歩いているなんてことはあり得ないのに.....。
そう思ったが、無視するわけにもいかないと判断した俺は恐る恐る
「ただいま戻りました........」
と母上に声をかけてみた。
すると
「あぁ.....帰ってきたのね」
そう言った母上は力なく微笑んでくれたが、今までの優しい笑みなんかではなく、無意識に口角が上がっているだけの、本当に弱弱しい笑みだった。
母上も、セリスティアと婚約破棄してから人が変わったかのように元気がなくなってしまった。
いや、性格には父上がおかしくなってから母上もおかしくなってしまったんだ。
最初の方はセリスティアに頼りすぎたんだ、と反省して自分たちのやり方を見つけようと2人で頑張っていたみたいだが、どうしても難しい書類の内容になると捌けなくなってしまって、の繰り返し。
今では仕事をするどころか、書類がただただ溜まっていくだけで、兄上が必死にしがみついている、という状況だ。
正直、いつ領地が傾いてもおかしくない状況なのに、兄上は本当によく頑張っていると思う。
そんなことを思いながら、俺の隣にある兄上の部屋の中をチラッと見ると、真剣な顔をして、大量の本を隣に机に向かっていた。
ただ、婚約破棄しただけなのに.....そう訴えたかったが、俺にそんなことを言う資格なんてどこにもない。
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