私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ

榎夜

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107話

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温室で待つレオンハルト様の所に行くために、準備を終えた私は早速廊下へと向かいましたわ。

ここから温室までそんなに時間はかからない、ということで、長い時間待たせることはないと思いますが、それでも待っていることには変わらないですものね。

少し急がないといけませんわ。

そう思いながら急ぎ足で温室に向かっていると、急にどこかから

「お嬢様、お嬢様!」

と私を呼ぶ声が聞こえてきましたわね。

この家でお嬢様と呼ばれるのは私しかいない、ということで、確認なんかしなくても私を呼んでいる、ということがわかりますわ。

わかるんですが.......えーっと、この声は一体どこから聞こえてきているんでしょう?

正面には誰もいませんし、振り返ってもただただ長い廊下が見えるだけですわ。

......となるときっとどこかの部屋の中から、だとは思いますが......。

そう思いながらキョロキョロと辺りを見渡していると

「お嬢様、そこです」

と私よりも先に見つけたユーリが教えてくれましたわ。

ユーリが指をさす方を見ると、そこにはニコニコと満面の笑みを浮かべているネイトの姿があって

「ネイト!凄く久しぶりですわね!」

そう言いながら、駆け寄って行きましたわ。

ここに来てからユーリとは一緒にいることが多いんですが、他の3人とは会わなさすぎなんですのよ。

特にネイトに関しては既に何か月か経っているのに今日久しぶりに会ったのが最初ですからね。

私のことなんて忘れているのかも、とすら思っていましたわよ。

なんて思っていると

「いやぁ......休憩をしていたら偶然お嬢様が通るんですもん!なんか運命を感じちゃいますよね!」

そう言ったネイトは本当に久しぶりに会えたことを喜んでいるみたいで、どこか上機嫌な気がしますわね。

あ、もちろん私もネイトに会えて嬉しいですわよ?

今まで何をしていたのか、とか色々聞きたいことはありますし。

なんて思っていると、私がネイトに質問するのよりも先に、ユーリが

「そんなに会いたいならお嬢様の部屋に来ればよかったのに」

とネイトに言いましたわね。

これには反射的に

「あぁ、そういえばそうよね」

と頷いてしまいましたわよ。

だって、今までは話がしたくなったらネイトの方から私の部屋に来てくれていましたもの。

それなのに、ここ最近は一度も来ないので疑問には思っていましたのよね。

するとネイトは、私とユーリの言葉に

「いやぁ.....なんか従者でも男の俺が令嬢のお嬢様の部屋に行くのは良くない、ということで、禁止されていたんですよね」

苦笑しながらそう言って、頭をポリポリと掻いていますわ。

なるほど......確かに、言われてみるとそれが当たり前なのかもしれませんわよね。

あ....ですが、それを言ってしまうとメイドは子息や領主の部屋に入っても何も言われないのにおかしい話だとは思いません?

流石に考えすぎだ、としか思えませんわよね。

なので、ネイトに行っても仕方がありませんが、今思ったことをそのまま伝えると

「俺も最初に聞いた時は驚きましたよ」

そう言って笑っていましたわ。

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