私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ

榎夜

文字の大きさ
上 下
105 / 344

104話 義父side

しおりを挟む
正直、毎日が憂鬱だ、という本でしかない心境に自分がなってしまうんだ、と驚いているが、本当に気分は最悪だ。

なんで俺ばかりがこのような思いをしないといけないんだ。

そもそも、ここはユーミアの実家の領地だろう?

俺がここまで頑張る意味もないのでは?

そう思った俺は、急に子爵家に関わる書類が全てゴミのように見えてしまった。

クシャクシャにして、ごみ箱に入れてー.........そう思いながら、一枚の紙に手を伸ばした時だった。

「旦那様!速達でお手紙がー......」

そう言って、さっきとはまた違うメイドが執務室の中に入ってきたではないか。

しかも、速達で手紙だと?

なんだか嫌な予感がして手紙を持っているメイドの手を見ると、そこには1枚の手紙.....ではなく5枚もの手紙がしっかりと握られていた。

流石に5枚も、しかも速達でなんて嫌な予感しかしないだろう。

そう思った俺は、ため息をつきながらメイドから手紙を受け取った。

手紙を届けたメイドはすぐに仕事に戻っていった、というのもあって、仕方なく1人で手紙を開けることになるんだが.....伯爵家と侯爵、それに公爵もいるじゃないか!

なぜ我が家のような下位貴族に手紙を?

そう思いながら、少し警戒して手紙を読むと5枚とも内容は殆ど同じだった。

娘の教育がどうなっているのか。

急に押しかけて来るなんて非常識ではないか?

婚約者候補とはどういうことだ?

何も聞いていないし、話もしていないのに、勝手に勘違いをされたら困る。

........とまぁ、こんな感じの内容だな。

正直、何を言っているんだ?という疑問しかないが.......。

この手紙の内容的に、娘、というのはアーリアだとして.......公爵家のような家に手紙もなしに、押しかけている、ということなのか?

しかも婚約者候補です、と嘘をついてまで。

そう思った俺は、急いでアーリアの元へと向かった。

というのも、もし俺の予想が当たっているのならアーリアはとんでもないことをしているのではないか?

だって、子爵家の....しかも、引きこもっていたような令嬢が急に家に押し掛けてくるなんて、マナーのかけらもないとバレバレではないか!

そんなことをしたら、元々婚約者に困っているのに、本当に誰も結婚してくれなくなってしまう!

今までにないくらい急ぎ足で廊下を歩いていると、ちょうどメイドが驚いた顔をして俺のことを見ていたから反射的に

「アーリアはどこにいるんだ!?」

と尋ねると

「あ、先ほど外出から戻ってきて、今はお部屋の方にいるかと.......」

キョトンとした顔をしながらも、そう答えてくれた。

くそ......さっき帰ってきた、ということはやっぱりそうだったんだな!

なぜそんな面倒なことばかりするんだ。

セリスティアは俺に迷惑をかけないんだぞ?

そう思いながらアーリアの部屋へと急いだ。

まぁ、結局あまり強くは言えなかったんだけどな。

ただ結婚相手に関しては誠実な人だったら平民でも良い、と俺は本当に思っている。

領地のことは、俺が教えることだって出来るんだから変な貴族と結婚するくらいなら平民の方が安心だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!

仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。 ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。 理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。 ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。 マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。 自室にて、過去の母の言葉を思い出す。 マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を… しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。 そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。 ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。 マリアは父親に願い出る。 家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが……… この話はフィクションです。 名前等は実際のものとなんら関係はありません。

婚約を解消してくれないと、毒を飲んで死ぬ? どうぞご自由に

柚木ゆず
恋愛
 ※7月25日、本編完結いたしました。後日、補完編と番外編の投稿を予定しております。  伯爵令嬢ソフィアの幼馴染である、ソフィアの婚約者イーサンと伯爵令嬢アヴリーヌ。二人はソフィアに内緒で恋仲となっており、最愛の人と結婚できるように今の関係を解消したいと考えていました。  ですがこの婚約は少々特殊な意味を持つものとなっており、解消するにはソフィアの協力が必要不可欠。ソフィアが関係の解消を快諾し、幼馴染三人で両家の当主に訴えなければ実現できないものでした。  そしてそんなソフィアは『家の都合』を優先するため、素直に力を貸してくれはしないと考えていました。  そこで二人は毒を用意し、一緒になれないなら飲んで死ぬとソフィアに宣言。大切な幼馴染が死ぬのは嫌だから、必ず言うことを聞く――。と二人はほくそ笑んでいましたが、そんなイーサンとアヴリーヌに返ってきたのは予想外の言葉でした。 「そう。どうぞご自由に」

魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど

富士とまと
ファンタジー
一緒に異世界に召喚された従妹は魔力が高く、私は魔力がゼロだそうだ。 「私は聖女になるかも、姉さんバイバイ」とイケメンを侍らせた従妹に手を振られ、私は王都を追放された。 魔力はないけれど、霊感は日本にいたころから強かったんだよね。そのおかげで「英霊」だとか「精霊」だとかに盲愛されています。 ――いや、あの、精霊の指輪とかいらないんですけど、は、外れない?! ――ってか、イケメン幽霊が号泣って、私が悪いの? 私を追放した王都の人たちが困っている?従妹が大変な目にあってる?魔力ゼロを低級民と馬鹿にしてきた人たちが助けを求めているようですが……。 今更、魔力ゼロの人間にしか作れない特級魔力回復薬が欲しいとか言われてもね、こちらはあなたたちから何も欲しいわけじゃないのですけど。 重複投稿ですが、改稿してます

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!

志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。 親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。 本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。

【完】はしたないですけど言わせてください……ざまぁみろ!

咲貴
恋愛
招かれてもいないお茶会に現れた妹。 あぁ、貴女が着ているドレスは……。

婚約者と妹が運命的な恋をしたそうなので、お望み通り2人で過ごせるように別れることにしました

柚木ゆず
恋愛
※4月3日、本編完結いたしました。4月5日(恐らく夕方ごろ)より、番外編の投稿を始めさせていただきます。 「ヴィクトリア。君との婚約を白紙にしたい」 「おねぇちゃん。実はオスカーさんの運命の人だった、妹のメリッサです……っ」  私の婚約者オスカーは真に愛すべき人を見つけたそうなので、妹のメリッサと結婚できるように婚約を解消してあげることにしました。  そうして2人は呆れる私の前でイチャイチャしたあと、同棲を宣言。幸せな毎日になると喜びながら、仲良く去っていきました。  でも――。そんな毎日になるとは、思わない。  2人はとある理由で、いずれ婚約を解消することになる。  私は破局を確信しながら、元婚約者と妹が乗る馬車を眺めたのでした。

処理中です...