私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ

榎夜

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95話 アーリアside

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勢いのまま馬車に乗り込んで約2時間。

私は手紙を送った子息の家に到着していたわ。

馬車の中でしっかりとお気に入りのドレスに着替えたし、準備は完璧よね。

なんて思いながら、門番に話しかけに行った。

一番最初に来たのは、婚約者のいない貴族の中でも一番爵位が上の侯爵子息の家よ。

確か三男の婚約者が居なくて、今も絶賛募集している、とのことだった気がするわ。

まぁ、三男ということはきっと上の兄弟から虐められているわよね。

そう考えると、ここはか弱い令嬢、ということを印象付けておいた方が良い、と判断した私は、さっきからチラチラと私のことを見ている門番に

「あのぉ.......シグリ様に用事があって来たんですけどぉ......」

と上目遣いで声をかけたわ。

まぁ、当然だけど私のような可愛い令嬢からの上目遣いなんて今後ありえないからね。

きっと将来自慢することになると思うわ!

なんて思っていると、門番は一瞬

「ひ...ひぃっ............」

という声を上げた.......ような気がしたけど気のせいよね!

だってすぐに

「し、シグリ様ですか?え、えっと.......一体どのような用事で........」

と私に聞いて来てくれたもの!

まぁ、私の美貌に驚いた、とでも思っておきましょう。

にこやかに質問してきた門番に対して、私は

「婚約者候補のアーリアがシグリ様に会いに来ました、と伝えてもらっても良いですかぁ?きっとすぐに来てくれると思うのでぇ」

とだけ言うと、すぐに

「か、かしこまりました.......少々お待ちください」

と言ってお屋敷の中に入っていったわ。

まぁ、シグリ様も私が来てくれた、と知ったらすぐに門に来るわよね。

全く......焦らされるのってあんまり好きじゃないんだけど、イケメンが来たら許してあげようじゃない。



そんなことを考えながら、待つこと15分。

さっきの門番とは違う門番が

「申し訳ございません。そのような名前の令嬢は知らない、とのことなんですが.......」

と冷たくそう言ってきたわ。

しかも、私のような可愛い令嬢を見ても何の反応も無しよ!?

あり得ないんじゃない!?

シグリ様が来ない、ということと、この門番の態度に少し苛立った私は

「はぁ!?そんなわけがないわ!だって3日前に手紙を送っているもの!」

そう言って、思わず門があるにも関わらず中に押し入ろうとしたわ。

でも、意外なことも門番の体はがっしりとしていて、か弱い私にはビクともしなかったの。

はぁ......こんな状況になるんだったら鍛えておけば良かったかしら?

パーティーに参加しないからヒールを履いている足も痛くなってきちゃったし。

とりあえず、シグリ様に会ってみたら考えが変わる、と思った私はどうにかしてこの門番をどかして中に入ろうと考えていると

「とにかく、シグリ様が知らないと言っているんです。これ以上ここに居座る、というなら力ずくで追い返すことになります」

門番はそう言うと、急に目が鋭くなったのを感じたわ。

ほら、私ってそういう視線には敏感だから嫌でもわかっちゃうのよ。

きっとこの門番は今から私に酷いことをする。

そう思った私は納得できなかったけど

「わ、わかったわよ!帰ればいいんでしょう、帰れば!」

と言って侯爵家を後にしたわ。


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