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93話

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私の言葉に顔を真っ赤にして固まっている伯爵に

「それでは、2人が待っているので失礼しますわね」

そう言ってその場を後にしようと背中を向けると、

「ふんっ!どうせ出来損ないの妹の方は教えるだけ無駄なのにな!」

吐き捨てる様にそう言ってきましたが、私には負け惜しみにしか聞こえませんわね。

それに、出来損ないの妹、ですか。

何を根拠にそのようなことを言っているのかわかりませんが、リーシャ様は飲み込みが早いですし、教えた内容をしっかりと理解する能力を持っています。

そんなリーシャ様のことを出来損ないだ、なんて言うのであれば、自分よりも年下の、しかも女性を捕まえてネチネチと文句を言っている伯爵の方が出来損ないだと思いますわよ?

まぁ、そんなことを言ったら授業どころではなくなってしまうので、言いませんけどね。

喉まで出かかった言葉をグッと飲み込んで、伯爵に背中を向けたまま

「そう思うなら、勝手に思っていればいいと思いますわよ」

そう言うと、何かを言いたそうにしていましたが、私はすぐにその場を離れましたわ。

これ以上伯爵と話をしている方が時間の無駄ですし、無意味ですものね。

せいぜい自分の娘を出来そこない、なんて言ったことを後悔したらいいと思いますわ。

そう思いながら、2人の待つ応接室へと急ぎました。


その途中、黙って話を聞いていたユーリが

「なんですか!あの伯爵は!」

なんとか声の大きさは必死に抑えて、そう叫びましたわね。

気持ちは物凄くわかりますわ。

ですが、流石に伯爵の家で、当主の悪口を言うのはダメだろう、と判断した私は、

「まぁまぁ、仕方がないわ」

苦笑しながら、なんとかユーリの怒りを抑え込もうとしましたが、

「ですが、あれを毎日聞いているカティ様やリーシャ様が可哀そうですよ!」

相当伯爵に対してムカついたんでしょうね。

普段から感情を表に出す方だ、と思っていますがいつも以上に憤慨しています。

ユーリがそうなってしまうほど、伯爵が異常だった、ということなんでしょうね。

なんて思いながら、ユーリの言葉に思わず

「確かにその通りですわよね.........」

と頷いてしまいましたわ。

最初はあまり悪く言ってもよくないと思ったので、どうにかフォローしようとも考えましたが、流石に出来ませんわよね。

なんて思いながら、小さくため息をついた後に

「私としては夫人の方は伯爵と違って2人の話をしっかりと聞いてくれる人だと思っているわ。ただ、家の中でどれくらいの発言力があるのか、はわからないのよね」

と言うとユーリは難しそうな顔をして

「お嬢様とは違った嫌な親、ですね」

と呟いたのが聞こえてきましたわ。

私とは違った嫌な親、ですか......。

言われてみると確かにその通りのような気もしますが、私の場合は義理の、ですからね。

「むしろ実の親だ、と考えたら私の方よりも質が悪いと思うわ」

私がそう言うと、ユーリは小さな声で、ですが

「そうですよね.......」

と呟いて黙り込んでしまいましたわ。

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