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60話 カインside

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さて、だいぶ話が逸れてしまったが、現在、俺たちの前にはセリスティアの元婚約者であるデールが不安そうな顔をして俺たちのことを見つめていた。

はぁ.....あの令嬢たちの言う通り、頭でも打ったのか?と言いたくなるくらい腹立たしい顔をしているな。

なんというか......

「王太子が怖いです.....」

とでも言いたそうな顔をしているような、そんな雰囲気だ。

あ、もちろん、デールに対して俺は圧を送ったりなんかもしていないし、睨みつけてもいないからな。

強いて言うなら、話しかけられて面倒だ、というオーラを出しているくらいだ。

これに関しては、酷い!とか言われるかもしれないが、よく考えてみて欲しい。

自分の幼馴染のことを酷く振った男に優しく出来るか?

答えは無理、だよな?

なんて思いながら、デールに向かって

「そんなに時間がないから手短に頼む」

とそっけなく言うと

「あ、ああ、ありがとうございま、す!」

なんだかイラっと来るような喋り方をしながら深々と頭を下げて

「その....そ、そのー......」

と話し始めた。

この無意味にオドオドとする意味も理解できないよな。

正直、そういう人が男女問わず嫌いだ、というのは結構有名な話だと思っているんだが.....。

流石にこの喋り方はエリザベートも苛立っているらしく、俺にしか聞こえないくらいの小ささでため息を何度もついてしまっていた。

そんな苛立ちをなんとか抑えながらデールが話すまで待つこと2分。

やっと何を言うのか決まったのかパッと顔を上げたデールは、廊下にいる全員に聞こえるくらいの声の大きさでこう言ってきた。

「せ、セリスティアについて!何か知っていたら教えてもらえないかなぁ......と、思いまして!」

まぁ、その話だとは思っていた。

だって、デールはセリスティアの噂を聞くたびに飛びつくように興味を示している、と聞いていたからな。

近いうちに俺に聞きに来るだろう、とエリザベートとさっき話したばかりだ。

そして聞かれた場合、どう返事をjするのか、についてもしっかりと話し合いをしていた俺たちは、デールに冷たい視線を送りながら

「なぜだ?」

と短く尋ねた。

すると、まさかそんな返事が返ってくるとは思わなかったんだろう。

デールは一瞬驚いた顔をしたが、なんとか

「い、一応、じ、自分も婚約者なので!」

なぜか自慢げにそう答えてきたが、自分婚約者、って.......頭がおかしいんじゃないか?

なんでそこで、一応元ですが婚約者なので気になって.......といえば良いものを無意味に変な言葉を使うんだ。

なんて思いながら、教えてもらう気満々のデールに

「元、婚約者だろう。自分で振っておきながらなぜセリスティア嬢のことを気にするのか理解が出来ないんだが......」

俺がそう言うと、デールは何も言い返すことが出来ないみたいで

「そ、それは........」

と言葉に詰まらせていた。

もうここまでくると、話すこともないな。

そう判断した俺はチラッとエリザベートに目配せをした後に

「とにかく、セリスティアがお前に話す必要がない、と判断していなくなったんだ。俺の判断で話すわけにはいかない」

と言ってその場を後にした。

なんとなくだったが、デールの表情が暗かった気がするが......俺は間違ったことは言っていないよな?
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