55 / 344
54話
しおりを挟む
カティ様と話をした後、伯爵たちへの挨拶もそこそこに帰宅することになりましたわ。
本当なら挨拶をした方が良いと思ったんですけどね。
伯爵のいる執務室にお邪魔したときに、なぜか
「終わったならさっさと帰るんだな!」
と怒鳴られてしまったので仕方なかったんですのよ。
まぁ、少しだけイラっとはしましたが、カティ様の家庭教師変更の件を引きずっているんだ、と思っておくことにしましたわ。
といっても、ダラダラと引きずっていたら面倒だと思われて厄介者扱いされるでしょうけどね。
自分からそのように仕向けたんですから仕方ありませんわ。
さて、帰宅までの間にも色んな事がありながらクリストファー公爵家に帰宅した私は、早速伯母様の元に向かいましたわ。
一応、公爵家を出発する前に帰ってきたらすぐに報告する、ということを言ってから家を出たので、きっと今頃首を長くして待っている......と思っていますわよ。
コンコン、と控えめに執務室のノックをして
「伯父様、伯母様、ただいま戻りました」
と私が声をかけると、近くにいた伯父様も話をしたそうにしていましたが、空気を読んでくれたんでしょうね。
ぐっと堪えて、羨ましそうな顔をして私の方を見ていますわ。
一方、伯母様は私のことをニコニコと見ながら
「家庭教師はどうだったかしら?」
と聞いてきたので、ここは正直に、なんとも言えないような表情になりながら
「うーん......なんといいますか.......」
と言葉に詰まっていると伯母様も伯父様も不思議そうな顔をして首を傾げていましたわね。
まぁ、行く前はあれほどまでに気合十分で向かったのに、帰ってきたら一気に気分が落ちているんですもの。
2人とも何があったのか、と気になりますわよね。
なんて思いながら、大まかにですが今日会った出来事を2人に説明しましたわ。
まず、私の教え子になるこは、伯爵家に引きこもりをしているらしく部屋からもまともに出ていないらしい、ということ。
それから急遽、予定にはなかったはずの姉の方も教えることになってしまったこと。
伯爵は私が家庭教師に行ったことで不服そうに怒っていたこと。
後は......リーシャ様が伯爵のことを嫌っていることについて言うか迷いましたが、いまではない、と思ってその件は心の中に閉じ込めることにしましたわ。
私の話をずっと小さく頷いて聞いてくれた伯母様は、リーシャ様の引きこもりについて
「あらあら.....最近顔を見ないとは思っていたけどそんなことになっていたのね」
と心配そうな顔をして頬に手を当てていたので、伯母様もこの話は聞いていなかったんでしょうね。
その証拠に、伯父様は複雑そうな顔をして
「そうか.....あの明るかった子がねぇ......」
と呟いていますもの。
そんな2人に
「そうなんですよ。私なんてこの国の情報が微塵もないような人なので、一体どうするのが正解なのかもわからなくて」
思わず視線を下に向けながら話してしまいましたが、本当に言ってて気分がよくなる話題ではありませんからね。
リーシャ様と今後関わっていくならどうすればいいのか、それに加えてカティ様も伯爵に対して何かと思うことがある様子だったので、それも気になりますし......。
流石にほぼ初対面の私になんでも話をして、といっても無理な話ですしね。
なんて思っていると、伯母様は
「そりゃそうよ。誰も正解なんてわからないわ」
そう言いながら苦笑していましたわ。
正解なんてわからない、ですか。
なんだか難しい話ですわね。
本当なら挨拶をした方が良いと思ったんですけどね。
伯爵のいる執務室にお邪魔したときに、なぜか
「終わったならさっさと帰るんだな!」
と怒鳴られてしまったので仕方なかったんですのよ。
まぁ、少しだけイラっとはしましたが、カティ様の家庭教師変更の件を引きずっているんだ、と思っておくことにしましたわ。
といっても、ダラダラと引きずっていたら面倒だと思われて厄介者扱いされるでしょうけどね。
自分からそのように仕向けたんですから仕方ありませんわ。
さて、帰宅までの間にも色んな事がありながらクリストファー公爵家に帰宅した私は、早速伯母様の元に向かいましたわ。
一応、公爵家を出発する前に帰ってきたらすぐに報告する、ということを言ってから家を出たので、きっと今頃首を長くして待っている......と思っていますわよ。
コンコン、と控えめに執務室のノックをして
「伯父様、伯母様、ただいま戻りました」
と私が声をかけると、近くにいた伯父様も話をしたそうにしていましたが、空気を読んでくれたんでしょうね。
ぐっと堪えて、羨ましそうな顔をして私の方を見ていますわ。
一方、伯母様は私のことをニコニコと見ながら
「家庭教師はどうだったかしら?」
と聞いてきたので、ここは正直に、なんとも言えないような表情になりながら
「うーん......なんといいますか.......」
と言葉に詰まっていると伯母様も伯父様も不思議そうな顔をして首を傾げていましたわね。
まぁ、行く前はあれほどまでに気合十分で向かったのに、帰ってきたら一気に気分が落ちているんですもの。
2人とも何があったのか、と気になりますわよね。
なんて思いながら、大まかにですが今日会った出来事を2人に説明しましたわ。
まず、私の教え子になるこは、伯爵家に引きこもりをしているらしく部屋からもまともに出ていないらしい、ということ。
それから急遽、予定にはなかったはずの姉の方も教えることになってしまったこと。
伯爵は私が家庭教師に行ったことで不服そうに怒っていたこと。
後は......リーシャ様が伯爵のことを嫌っていることについて言うか迷いましたが、いまではない、と思ってその件は心の中に閉じ込めることにしましたわ。
私の話をずっと小さく頷いて聞いてくれた伯母様は、リーシャ様の引きこもりについて
「あらあら.....最近顔を見ないとは思っていたけどそんなことになっていたのね」
と心配そうな顔をして頬に手を当てていたので、伯母様もこの話は聞いていなかったんでしょうね。
その証拠に、伯父様は複雑そうな顔をして
「そうか.....あの明るかった子がねぇ......」
と呟いていますもの。
そんな2人に
「そうなんですよ。私なんてこの国の情報が微塵もないような人なので、一体どうするのが正解なのかもわからなくて」
思わず視線を下に向けながら話してしまいましたが、本当に言ってて気分がよくなる話題ではありませんからね。
リーシャ様と今後関わっていくならどうすればいいのか、それに加えてカティ様も伯爵に対して何かと思うことがある様子だったので、それも気になりますし......。
流石にほぼ初対面の私になんでも話をして、といっても無理な話ですしね。
なんて思っていると、伯母様は
「そりゃそうよ。誰も正解なんてわからないわ」
そう言いながら苦笑していましたわ。
正解なんてわからない、ですか。
なんだか難しい話ですわね。
21
お気に入りに追加
4,232
あなたにおすすめの小説

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!
志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。
親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。
本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。

婚約を解消してくれないと、毒を飲んで死ぬ? どうぞご自由に
柚木ゆず
恋愛
※7月25日、本編完結いたしました。後日、補完編と番外編の投稿を予定しております。
伯爵令嬢ソフィアの幼馴染である、ソフィアの婚約者イーサンと伯爵令嬢アヴリーヌ。二人はソフィアに内緒で恋仲となっており、最愛の人と結婚できるように今の関係を解消したいと考えていました。
ですがこの婚約は少々特殊な意味を持つものとなっており、解消するにはソフィアの協力が必要不可欠。ソフィアが関係の解消を快諾し、幼馴染三人で両家の当主に訴えなければ実現できないものでした。
そしてそんなソフィアは『家の都合』を優先するため、素直に力を貸してくれはしないと考えていました。
そこで二人は毒を用意し、一緒になれないなら飲んで死ぬとソフィアに宣言。大切な幼馴染が死ぬのは嫌だから、必ず言うことを聞く――。と二人はほくそ笑んでいましたが、そんなイーサンとアヴリーヌに返ってきたのは予想外の言葉でした。
「そう。どうぞご自由に」

成人したのであなたから卒業させていただきます。
ぽんぽこ狸
恋愛
フィオナはデビュタント用に仕立てた可愛いドレスを婚約者であるメルヴィンに見せた。
すると彼は、とても怒った顔をしてフィオナのドレスを引き裂いた。
メルヴィンは自由に仕立てていいとは言ったが、それは流行にのっとった範囲でなのだから、こんなドレスは着させられないという事を言う。
しかしフィオナから見れば若い令嬢たちは皆愛らしい色合いのドレスに身を包んでいるし、彼の言葉に正当性を感じない。
それでも子供なのだから言う事を聞けと年上の彼に言われてしまうとこれ以上文句も言えない、そんな鬱屈とした気持ちを抱えていた。
そんな中、ある日、王宮でのお茶会で変わり者の王子に出会い、その素直な言葉に、フィオナの価値観はがらりと変わっていくのだった。
変わり者の王子と大人になりたい主人公のお話です。

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!
仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。
ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。
理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。
ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。
マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。
自室にて、過去の母の言葉を思い出す。
マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を…
しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。
そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。
ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。
マリアは父親に願い出る。
家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが………
この話はフィクションです。
名前等は実際のものとなんら関係はありません。

家族に裏切られて辺境で幸せを掴む?
しゃーりん
恋愛
婚約者を妹に取られる。
そんな小説みたいなことが本当に起こった。
婚約者が姉から妹に代わるだけ?しかし私はそれを許さず、慰謝料を請求した。
婚約破棄と共に跡継ぎでもなくなったから。
仕事だけをさせようと思っていた父に失望し、伯父のいる辺境に行くことにする。
これからは辺境で仕事に生きよう。そう決めて王都を旅立った。
辺境で新たな出会いがあり、付き合い始めたけど?というお話です。

もうすぐ婚約破棄を宣告できるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ。そう書かれた手紙が、婚約者から届きました
柚木ゆず
恋愛
《もうすぐアンナに婚約の破棄を宣告できるようになる。そうしたらいつでも会えるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ》
最近お忙しく、めっきり会えなくなってしまった婚約者のロマニ様。そんなロマニ様から届いた私アンナへのお手紙には、そういった内容が記されていました。
そのため、詳しいお話を伺うべくレルザー侯爵邸に――ロマニ様のもとへ向かおうとしていた、そんな時でした。ロマニ様の双子の弟であるダヴィッド様が突然ご来訪され、予想だにしなかったことを仰られ始めたのでした。

見知らぬ子息に婚約破棄してくれと言われ、腹の立つ言葉を投げつけられましたが、どうやら必要ない我慢をしてしまうようです
珠宮さくら
恋愛
両親のいいとこ取りをした出来の良い兄を持ったジェンシーナ・ペデルセン。そんな兄に似ずとも、母親の家系に似ていれば、それだけでもだいぶ恵まれたことになったのだが、残念ながらジェンシーナは似ることができなかった。
だからといって家族は、それでジェンシーナを蔑ろにすることはなかったが、比べたがる人はどこにでもいるようだ。
それだけでなく、ジェンシーナは何気に厄介な人間に巻き込まれてしまうが、我慢する必要もないことに気づくのが、いつも遅いようで……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる