21 / 344
20話
しおりを挟む目に涙を浮かべているセバスに、門番2人は驚いた顔をして
「セ、セバスさん?あの人は.........」
と尋ねると、セバスは悲しいような、寂しいような、そんな表情で
「セリスティア様はな、あのセリアーティ様の娘だ」
と2人に言いましたわ。
ただ、あのセリアーティ様、って........。
あ、セリアーティというのは私のお母様の名前ですわ。
門番2人はセバスの言葉に
「えぇ!?」
大げさだ、と言いたくなるほど大きく仰け反って驚いた後に、マジマジを私のことを眺めると
「た、確かに似ているような.......」
「いや、そっくりだろ........」
と何やらブツブツと呟いていますわ。
似ている、ですか。
確かに私とお母様は、よく生き写しだ、と言われるほど顔が似ていますわ。
唯一違うのは目の色くらいかしら?
お母様は綺麗なエメラルドグリーンの瞳ですが、私はお父様と同じスカイブルーの瞳をしていますの。
ただ、あまり違いがないので、ぱっと見ではお母様と間違えられてもおかしくないと思っていますわ。
そう思いながら、少し引っかかったので
「セバス?あのセリアーティ、というのは一体どういうことなの?」
と聞いてみましたわ。
だって、お母様の娘、だったらわかりますが、あのってつけられていますのよ?
違和感しかありませんわ。
なんて思っていると、セバスは
「す、すみません........旦那様も奥様もセリアーティ様のことを亡くなった後でもとても大事にしている、というのは従者たちの仲で有名な話なんです」
と言って苦笑していますわ。
な、なるほど.........そういうことでしたのね。
言われてみると、10年前に来たとき、お母様に対する態度と言いますか、なぜか皆お母様に物凄く優しかったんですのよね。
昔は久しぶりだから、皆喜んでいるのかしら?と思っていましたが、どうやらお母様は純粋に家族から愛されていましたのね。
お母様はいなくなってしまいましたが、その後でも皆に愛されている、とわかって、私も嬉しいですわ。
そう思っていると、セバスは急にハッとしたような顔をした後に
「申し訳ございません!このようなところで立ち話をさせてしまって......すぐに中に案内しますので........」
と言って、凄い勢いで頭を下げましたわ。
そんなセバスに驚きながら
「え、えぇ、ありがとう。我が家の従者たちも一緒にいるけど大丈夫かしら?」
と尋ねて馬車の方をチラッと見ると、私とセバスが話をしている間に、皆で荷物を下ろしていてくれましたわ。
こうやって見ると、5人分の荷物なので物凄く多いですわね。
......いや、よく見て見ると、ほとんどが私の物じゃないですか!
いくら皆に荷造りを頼んだとはいえ、流石に多すぎますわよ!?
合計10数個もの鞄に思わずため息をつきそうになりましたが、とりあえずセバスの
「もちろんでございます。旦那様もセリスティア様が来たと聞いてとても喜びますよ」
という許可を貰ってお屋敷の中に入ることが出来ましたわ。
伯父様との再会ですか..........。
なんだか緊張しますわね。
私のことを覚えているでしょうか?
メイド達は雇ってもらえるかしら?
など、色々と思うことはありますが、今はグッと堪え、セバスの後ろへと続きましたわ。
50
お気に入りに追加
4,232
あなたにおすすめの小説

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!
志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。
親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。
本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。

婚約を解消してくれないと、毒を飲んで死ぬ? どうぞご自由に
柚木ゆず
恋愛
※7月25日、本編完結いたしました。後日、補完編と番外編の投稿を予定しております。
伯爵令嬢ソフィアの幼馴染である、ソフィアの婚約者イーサンと伯爵令嬢アヴリーヌ。二人はソフィアに内緒で恋仲となっており、最愛の人と結婚できるように今の関係を解消したいと考えていました。
ですがこの婚約は少々特殊な意味を持つものとなっており、解消するにはソフィアの協力が必要不可欠。ソフィアが関係の解消を快諾し、幼馴染三人で両家の当主に訴えなければ実現できないものでした。
そしてそんなソフィアは『家の都合』を優先するため、素直に力を貸してくれはしないと考えていました。
そこで二人は毒を用意し、一緒になれないなら飲んで死ぬとソフィアに宣言。大切な幼馴染が死ぬのは嫌だから、必ず言うことを聞く――。と二人はほくそ笑んでいましたが、そんなイーサンとアヴリーヌに返ってきたのは予想外の言葉でした。
「そう。どうぞご自由に」

成人したのであなたから卒業させていただきます。
ぽんぽこ狸
恋愛
フィオナはデビュタント用に仕立てた可愛いドレスを婚約者であるメルヴィンに見せた。
すると彼は、とても怒った顔をしてフィオナのドレスを引き裂いた。
メルヴィンは自由に仕立てていいとは言ったが、それは流行にのっとった範囲でなのだから、こんなドレスは着させられないという事を言う。
しかしフィオナから見れば若い令嬢たちは皆愛らしい色合いのドレスに身を包んでいるし、彼の言葉に正当性を感じない。
それでも子供なのだから言う事を聞けと年上の彼に言われてしまうとこれ以上文句も言えない、そんな鬱屈とした気持ちを抱えていた。
そんな中、ある日、王宮でのお茶会で変わり者の王子に出会い、その素直な言葉に、フィオナの価値観はがらりと変わっていくのだった。
変わり者の王子と大人になりたい主人公のお話です。

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!
仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。
ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。
理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。
ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。
マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。
自室にて、過去の母の言葉を思い出す。
マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を…
しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。
そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。
ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。
マリアは父親に願い出る。
家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが………
この話はフィクションです。
名前等は実際のものとなんら関係はありません。

家族に裏切られて辺境で幸せを掴む?
しゃーりん
恋愛
婚約者を妹に取られる。
そんな小説みたいなことが本当に起こった。
婚約者が姉から妹に代わるだけ?しかし私はそれを許さず、慰謝料を請求した。
婚約破棄と共に跡継ぎでもなくなったから。
仕事だけをさせようと思っていた父に失望し、伯父のいる辺境に行くことにする。
これからは辺境で仕事に生きよう。そう決めて王都を旅立った。
辺境で新たな出会いがあり、付き合い始めたけど?というお話です。

結婚式をボイコットした王女
椿森
恋愛
請われて隣国の王太子の元に嫁ぐこととなった、王女のナルシア。
しかし、婚姻の儀の直前に王太子が不貞とも言える行動をしたためにボイコットすることにした。もちろん、婚約は解消させていただきます。
※初投稿のため生暖か目で見てくださると幸いです※
1/9:一応、本編完結です。今後、このお話に至るまでを書いていこうと思います。
1/17:王太子の名前を修正しました!申し訳ございませんでした···( ´ཫ`)
ことりの上手ななかせかた
森原すみれ@薬膳おおかみ①②③刊行
恋愛
堀井小鳥は、気弱で男の人が苦手なちびっ子OL。
しかし、ひょんなことから社内の「女神」と名高い沙羅慧人(しかし男)と顔見知りになってしまう。
それだけでも恐れ多いのに、あろうことか沙羅は小鳥を気に入ってしまったみたいで――!?
「女神様といち庶民の私に、一体何が起こるっていうんですか……!」
「ずっと聴いていたいんです。小鳥さんの歌声を」
小動物系OL×爽やか美青年のじれじれ甘いオフィスラブ。
※エブリスタ、小説家になろうに同作掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる