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13話

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私が今.......いや、普段から肌身離さず付けているネックレスは、お母様の形見の本当に大事なネックレスですわ。

ドレスはサイズ的に取られる心配はありませんが、アクセサリーはお姉様たちが勝手に盗んでいきますからね。

これだけはお姉様に取られないように、と細心の注意をしていたので、きっとユーリ以外はこのネックレスの存在すら知らなかったでしょう。

そう思いながらネイトにネックレスを手渡すと、それを見ていたミリアが

「お嬢様、あのネックレスは........?」

と私に尋ねてきましたわ。

一瞬、話してもいいか、と悩みましたが、ここにはあの人たちはいませんし、隠す必要もない、と判断した私は

「お母様の形見なの。裏にクリストファー公爵家の家紋が彫られているのよ」

と簡単に説明をすると、ミリアとディアは

「知らなかったです.......」

「いつも付けているとは思っていましたが、そんなに大切なものだったんですね」

そう言って、少し驚いた顔をしながらネイトの持っているネックレスを眺めていますわ。

あら、ユーリ以外知らないと思っていましたが、気付いていましたのね。

まぁ.......ですが、肌身離さず毎日付けていたから目には入るかもしれません。

そう考えると、あのお姉様たちが奪わなかったことが驚きですわね。

太りすぎて自分では付けられない、とでも判断したのかしら?

それとも、シンプルなデザインなので、安物だ、と思って手を出さなかったんでしょうか?

........いや、あの人達のことなので、私がネックレスを付けている、ということ自体知らなかったんでしょう。

それほどまでに、私に対して興味がありませんもの。

なんて思いながら

「ユーリ以外には教えていなかったのよ。お姉様たちに知られたら厄介ですもの」

私がそう言って苦笑したのとほぼ同時くらいのタイミングで

「お嬢様、ありがとうございました」

と言って、ネイトがネックレスを返してくれましたわ。

その時、ちょうど馬車の扉を開けたので、外にいる門番の人と目が合ってしまいましたが、私の顔を見るなり驚いた顔をして隣の門番に話しかけていますわね。

一体どうしたんでしょう?

貴族なのにワンピースを着ている、ということに驚いたのかしら?

そう思いながらも、わざわざ門番に聞く様なことでもないので、ネイトに

「いいのよ。大丈夫だった?」

と微笑みながら尋ねると

「はい!見た瞬間、驚いていたみたいですが、最終的には、なんで早く言わなかったんだ、と言われましたよ」

と苦笑していましたわ。

なんで早く言わなかったんだ、と言われましても.......。

どう説明したらいいんですの?というのもありますが、最初からその情報を出してしまうと胡散臭いですわよね。

「自分はこの領主の姪です!」

なんて言われても、それを信じる人の方が心配になりますわ。

そう思いながら

「言っても良いとは思うけど、そんなに自慢げに言うことではないものね」

と私が言うと、それを聞いていた皆も

「確かに」

と苦笑しながらも頷いていましたわ。

ま、まぁ......とりあえず門は通ることが出来ましたし、公爵家まで到着してしまえば安心ですからね。

やっと一息が付ける、という感じでしょうか?

そう思いながら、出発したばかりの馬車の中から領地内を眺めました。

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