私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ

榎夜

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10話

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とりあえず、馬車の問題は何もない、ということもわかり、通行許可書のおかげで無事に門も通り抜け、隣国まで残り半日、というところまで来ましたわ。

あ、もちろん、ネイトしか馬車を動かすことが出来ないので、休憩も取りながらの移動ですわよ。

おかげで、隣国まで1週間と3日ほどだと思っていましたが、倍の時間がかかっていますわ。

まぁ、久しぶりにゆっくり出来ている、と思えば何も文句はありませんけどね。

強いて言うなら移動の半分は馬車での寝泊まりなので、もう少し宿屋で泊まりたい、ということくらいかしら?


そんな馬車で寝るのにも慣れたある日の夜。

「セリスティア......セリスティア、起きなさい」

という優しい声で私は目を覚ましましたわ。

ただ、ついて来てくれたメイドの声ではありませんわね.........。

一体誰の声なんでしょう?

それに、すでに日が昇っているのか、目を瞑っているのにとても眩しいですわ。

色々と普段と違うことがあるので少し警戒しながら

「んんー.......」

と一回伸びをした後に、ゆっくりと目を開きました。

もう、隣国に到着したのかしら?

そう思って目を開けると、そこは馬車の中......ではなく、真っ白な何もない空間でしたわ。

そして、その空間の中にお母様が1人、ポツンと立っています。

ほ......本物ですわよね?

え?で、ですが、私のお父様とお母様は3年前に事故で亡くなって.........それで、あの化粧の濃い達が来たんですもの。

本物なわけがありませんわ。

それは頭の中でしっかりと理解はしているんですが、目の前に立っているのは紛れもなく、私の大好きなお母様ですわ。

恐る恐るですが、目の前に立つお母様に

「お、お母様ですのよね........?」

と尋ねると、お母様は昔と全く変わらない優しい笑みを浮かべながら

「随分とお寝坊さんね。皆待っているわよ?」

そう言って優しく私の頭を撫でましたわ。

ですが、何でしょう?

お母様の手が私の頭の上を掠めたはずなのに、全く感覚がありませんの。

それに違和感を抱きながら

「皆、ですか.........?」

と呟くと、お母様は小さく頷くだけで、真っ白い空間の奥の方へと進んでいこうとしましたわ。

それを見た私は

「ま、待ってください!」

とお母様に声を掛けましたが、お母様は私に手を差し伸べることはせず、前へ、前へと進んでいきます。

私も後を追おうと足を前に出しますが、なぜかお母様に追いつきませんの。

一歩進んだら、お母様は十歩進んでいる、という感覚ですわ。

私は、お母様と一緒に居てはいけない、ということですの?

これほどまでにお母様のことが大好きなのに?

「お母様!待ってください!」

と叫びながら、前へ、前へと進もうとしますが、どう頑張ってもお母様との距離は縮まりません。

そんな私に、10mほど離れたところで立ち止まったお母様が

「あの地獄から皆を連れ出してくれてありがとうね。流石私の娘だわ」

というと、優しく微笑みながら小さく手を振りましたわ。

それと同時に、お母様の体がみるみるうちに光に包まれていきましたの。

その光景はまるで、お別れだ、と言われているような気持ちになって

「お母様!」

と叫びましたが、お母様は

「またね」

という言葉だけを残して私の目の前から消えてしまいました。

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