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31話 テオルside
しおりを挟む家の中をフラーっと歩いていると、目の前から怒った顔をしている父上と、涙目になっている母上が歩いてきたのが見えた。
正直無視したかったけど、面倒なことになるから横を通り過ぎようとすると
「お前が馬鹿な女に引っかかったせいで......っ!」
と父上は俺の胸ぐらを掴んできた。
はぁ......横を通ることすら出来ないのか。
「あなたっ!やめて!テオルが可哀想よ!」
母上は、俺とマロンが謹慎を命じられてから、よく可哀想、と言ってくる。
別に俺達は可哀想なんかじゃないし、その言葉が不愉快だ、とマロンとよく話している。
「何が可哀想だ!自業自得じゃないか!」
まぁ、父上の言う通り、自業自得ではある。
だから今、元に戻そうと必死に頑張ってるじゃないか。
「そうは言っても......!」
「大体、お前は子供たちを甘やかしすぎだ!だからこんなことになったんだろ!」
「私のせいだって言うの!?」
「あぁ、そうだ!お前のせいだ!」
あー、うるさいな。
喧嘩するなら俺のいない所でやって欲しい。
そう思いながら
「父上、母上」
と話しかけると、母上が目を輝かせながら
「て、テオル?どうしたの?」
だって。
母上は俺をなんだと思ってるの?
小さい子供を見るような目で見てきてさ。
「そんなことどうでもいいから、これをキーファに届けてよ」
胸元から手紙を出すと
「わかったわ!すぐに届けるように伝えておくわね」
と母上が受け取ろうと手を伸ばした......が
「いい加減にしろ!」
父上の言葉で動きが止まってしまった。
「キーファの気持ちを考えたことがあるのか!?急に婚約破棄されたと思ったら、急に復縁を求められるんだぞ!しかも最低な形でな!」
最低な形?
でも俺は他の奴らより早くアリスを見限ったし、キーファだって、俺のことが好きなはずだ。
何が悪い?
「でも、あなた......」
「でも...とかじゃない!いいか、お前がやっていることはキーファを侮辱していることと同じだ!」
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そうだ。
俺はただ、前みたいにキーファと仲良くデートに行ったり、将来の話をしたかった。
俺が勉強に躓いていたら、隣にいて応援して欲しかった。
ただそれだけなのに.........。
「無理に決まってるだろう!?お前は自分でその未来を崩したんだ!」
父上にそう言われて、頭を殴られたような感覚だった。
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