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313話
しおりを挟むそれから10年後。
「お母様!あの薔薇が凄く綺麗に咲いています!」
そう私に声をかけてきたのは、一昨日5歳になったばかりのこの国の第一王女、シャルムでしたわ。
子供ながらの満面の笑みで、私に話しかけてくる姿は、貴族の間でも可愛らしいと凄く評判で、5歳ながらも是非婚約者に、と色んなところから申し出があって凄く困っている真っ最中ですのよね。
そんなシャルムに
「えぇ、そうね。とても綺麗だわ」
と言いながら、すぐ近くにある薔薇の花を見ると、確かに今年の薔薇は去年よりも出来がいいものが多く、花の大きさも揃っているので凄く綺麗に見えますわね。
最近、庭師が世代交代をしたので、どうなるか、と思っていましたがしっかりと親の技術が受け継がれているみたいで安心しましたわ。
なんて思っていると、今度は少し離れたところから
「シャル、ずるいよ!僕もお母様の隣が良いのにー!」
という男の子の声が聞こえてきましたわ。
この男の子は、この国の第一王子、ジェインで今年で7歳になるとても優秀な子ですのよ。
今年から学園に通っていますが、婚約者がいるにも関わらず令嬢たちから凄く人気者で、毎回ジェインの婚約者が半泣き状態になっていますのよね。
私からすると、自慢ではありますが、婚約者のことを考えるとジェインも断り方、というのを知った方が良いですわよね。
なんて思いながら、頬を膨らませてシャルムを移動させようとしているジェインに
「あらあら、だったら左側に来たらいいでしょう?」
と微笑みましたわ。
ですが
「僕は、右側の方が良いんです!」
と言うと、無理やりシャルムを移動させて隣の椅子に腰を掛けてしまいましたわね。
うーん....これを他の令嬢たちにも出来たらいいんですが..........。
そう思いながら、左の空いている椅子にシャルムを座らせて、ユリに用意してもらった位お茶を口に含みましたわ。
あ、自分だけではなく他の皆はどうしたんだ、という話ですわよね。
ではまずはフェルマー達のことから、どうなったのか話しましょうか。
最初に、夫人とフォルン様は、平民に降格しましたが、今は幸せに暮らしている、と報告がありましたわ。
やっぱり最初はお金の稼ぎ方も知らず、凄く苦戦していたみたいですが、10年もいたら周りの平民達とも仲良くなって貴族より楽かもしれない、とすら言っていたらしいですわね。
まぁ、幸せに暮らしているなら私たちの選択が間違っていなかった、という証拠にもなるので嬉しいですわよね。
それからキーン様ですが、禁錮の後しっかりと夫人たちの元に送り届けましたわ。
といいますか、キーン様が釈放される時に、夫人たちにも報告していましたのよね。
そしたら、門の前でキーン様が来るのを待っていたみたいで、3人で嬉しそうに帰っていきましたわ。
2人はキーン様が出て来るのを待っていてくれた、と思うと私まで嬉しくなった、というのは今でもしっかりと覚えていますわ。
それから、シルム様に関してなんですが、シルム様は今も鉱山でしっかりと働いているみたいですわ。
報告書によると、最初は何かに怯える様な事があったり、急に暴れだしたりと、精神的に不安定な部分が目立つ、とのことでしたが、今ではだいぶ安定してきて周りの人とも会話するようになったみたいですわ。
その時も、上から目線で命令するのではなく、楽しそうに雑談している、とのことなので、様子を見ながらですが、外に出すことも検討していこうと思っています。
最後にフェルマーですが、赤の間が終わってすぐに強制労働の地へと送り出されましたわ。
私たちが公爵と話をしている間に、前皇帝が送り出したい、と言ってくれたのでお任せをしましたのよね。
フェルマーについての報告は、一切来ないのでどうなっているのかわかりませんが、生きているなら死と隣り合わせの世界でせっせと働いていると思いますわ。
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