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276話

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なんて思っていると、流石の夫人もこの状況を、無視するわけにはいかない、と判断したんでしょう。

「あの......とりえずメイドに話だけしておいても良いでしょうか?」

そう言うと、メイドの中でも一番年上であろう女性に軽く目配せをしていますわ。

別に聞かなくても当然、メイド達に話をしておかないと皆大混乱ですものね。

勿論、話をしても大丈夫ですわ。

そう思った私は、アルフレッド様にも一応視線で許可を貰って

「えぇ、もちろんですわ」

と微笑みましたわ。

すると、てっきりメイド達が経っているところまで移動して話をしに行く、とばかり思っていましたが、夫人は私たちとなるべく近いところで、話をするように、と気を遣ってくれたのかメイドを手招きして

「ちょっと今から王宮に行ってきますわ。何時頃に戻るのかまだわからないから、夕食は作らなくても良い、と伝えてもらって良いかしら?」

と指示を出しましたわ。

あぁ、もちろん、罪人がメイドと話をしたい、というのであれば、私たちも聞かないといけないので、こちらに呼んで話をするように、と指示しますが、夫人は罪人ではないので、普通に話をしに行っても良かったんですよ?

まぁ、話をしてしまった後なので今更ですけどね。

案の定メイドは夫人の話を

「か、かしこまりました!」

と戸惑いながらも頷いていますし。

こんなの夫人が犯罪を犯したのか、と勘違いしてしまいますわよね。

しかも、シルム様が縄で縛れれているので余計にそう勘違いされても仕方ありませんわ。

まぁ........シルム様以外の3人は拘束されていないので、それで察して欲しい、というのが私の願いですわね。



そんなこともありながら、やっとのことで馬車の前に到着しましたわ。

玄関の外に泊まってある馬車は全部で2台。

その中の片方が王宮から乗ってきた物なので、もう片方が私を逃がすために、と用意してくれたものでしょうね。

4人乗りだ、と聞いていましたが、それよりも少し大きめの馬車なので、これだったら皆で逃げられたと思いますけどね。

なんて思っていると、アルフレッド様の乗ってきた馬車の前に

「皇帝、縄を外してくださいよ。皇妃様を助けられたんですからもういいでしょう?」

不服そうな顔をしているフェルマー様の姿を発見しましたわ。

いつ捕まったのかはわかりませんが、しっかりと手だけではなく足までもが縄で縛られていて、強く縛りすぎているのか腕や足には縄の痕がついて、少し痛々しいですわね。

ですが、こうなったのも自業自得、と考えると同情なんてしませんわ。

アルフレッド様は、フェルマー様を小馬鹿にしたような目で見ると

「そんなわけないだろう。お前は国を混乱に陥れた責任を取ってもらう。父上にも伝言を頼んでいるから今頃フェルマーの話を聞いて頭を抱えているだろうな」

とハッキリと言いましたわ。

まぁ、当然ですわ。

私が無事だったから、とはいえフェルマー様の罪は何も消えていませんからね。

牢屋の中で一生後悔して欲しい、と私は思いますわ。

なんて思っていると、フェルマー様は何を思ったのかアルフレッド様の言葉にニヤッと笑って

「だったら丁度いいです。前皇帝に聞いてみてくださいよ。私の書類はどこに隠したのか、と」

と言ってきましたわね。

きっと父上にも伝えた、という言葉を聞いてのことだとは思いますが.......私の書類、ですか......。

フェルマー様の言葉に、思わず首を傾げると、アルフレッド様も一体何を示しているのかわからなかったみたいで

「書類.........?」

と不思議そうな顔して首を傾げましたわ。

するとフェルマー様はそんなアルフレッド様を見て

「まぁ、おバカな皇帝には内容を話してもわかりませんよ。執務室の中を探してもどこにもなかったんですよねぇ」

ニヤニヤと、気持ちの悪い笑みは崩さないまま、そう言ってきましたわね。

本当に気味が悪いですわ。

今までのヒョロヒョロとしたフェルマー様はどこへやら、ですわよ。
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