上 下
249 / 314

248話

しおりを挟む

フェルマー様から何か情報を引き出せないか、と思って話しかけてみましたが、全く効果がありませんわね.......。

どうやら心理戦のようなことは通用しない、ということがわかりましたわ。

ただ、通用しないのはフェルマー様だけ、ということもわかりましたけどね。

....どうにかして、この子息様と2人になることが出来たら、こちらにも勝ち目があるような気がしますわ。

ただ、その機会はあるのか、ということが問題ですけどね。

そう思いながら、チラッと子息様の方を見ると、都合が悪いのか、それとも私とは目を合わせたくないのか、ひたすら窓の外を見て深呼吸をしていますわ。

この様子だと、急に話かけたら悲鳴でも上げてしまうんじゃないかしら?

なんて思っていると、急にフェルマー様が

「おい、目隠しだけ付けておけ」

と子息様の方に命令しましたわね。

なんでしょう?

この自分の息子のはずなのに、話しかける声が物凄く冷たいですわ。

それに、気のせいかもしれませんが目だって、氷のような冷たさです。

こんな目で自分の息子を見る人は初めてですわよ。

...そんなことを考えているうちに、子息様によって目隠しをされてしまうんですけどね。

ですが、目隠しをした、ということは外の景色が見られないように、ということですわよね?

つまり、目的地に物凄く近い、ということですわ。

その証拠に

「皇帝が助けに来る間、私と一緒に何をしますか?一部の地域でロシアンルーレット........でしたっけ?そんな名前のゲームが流行っているらしいんですが、どうでしょう?」

とすでに到着した後のことをフェルマー様が楽しそうに話しかけてきますもの。

ロシアンルーレット、ですか。

確かこの国から5つほど離れたところで、1年前くらいから流行している悪趣味なゲームですわよね。

拳銃を使ったゲームで、一発だけ当たり.....つまり弾を入れて、順番に引き金を引いて誰が当たるか、というゲーム。

確か、あまりにも残虐だ、ということで禁止された、とお兄様が物凄く険しい顔をして教えてくれましたわ。

まさかフェルマー様が知っているとは思いませんでしたけど。

なんて思いながら、目隠しされているので睨むことは出来ませんでしたが

「そんなのを一番に提案してくるなんて趣味が悪いですわね。それを喜んでやる令嬢が存在するとでも?」

となるべく冷たい声で、フェルマー様に言いましたわ。

すると

「あぁ、やっぱり皇妃様は知っていましたか。知らなかったら受けてくれると思ったんですけどね」

そう言ってきたフェルマー様の声は、気持ちが悪いくらい機嫌の良さそうな声ですわ。

やっぱり、ということは断る、と想定していましたのね。

だったら言わなければいいのに。

....とは流石に抵抗の出来ない今は言えないので

「貴方が提案してくるゲームなんて絶対に受けないわよ」

とだけ言って、馬車が停車するのを待ちましたわ。


私が2度目の目隠しをされて15分後、ゆっくりと馬車が止まって、ドアが開いた音が聞こえてきましたわ。

これは確実に目的地に着きましたわね。

なんて思っていると、急にフェルマー様が私の手を掴んで

「さて、皇妃様。足元にお気を付けください」

と言ってきましたが、だったら目隠しをしないで欲しいですわよね?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

婚約者を義妹に奪われましたが貧しい方々への奉仕活動を怠らなかったおかげで、世界一大きな国の王子様と結婚できました

青空あかな
恋愛
アトリス王国の有名貴族ガーデニー家長女の私、ロミリアは亡きお母様の教えを守り、回復魔法で貧しい人を治療する日々を送っている。 しかしある日突然、この国の王子で婚約者のルドウェン様に婚約破棄された。 「ロミリア、君との婚約を破棄することにした。本当に申し訳ないと思っている」 そう言う(元)婚約者が新しく選んだ相手は、私の<義妹>ダーリー。さらには失意のどん底にいた私に、実家からの追放という仕打ちが襲い掛かる。 実家に別れを告げ、国境目指してトボトボ歩いていた私は、崖から足を踏み外してしまう。 落ちそうな私を助けてくれたのは、以前ケガを治した旅人で、彼はなんと世界一の超大国ハイデルベルク王国の王子だった。そのままの勢いで求婚され、私は彼と結婚することに。 一方、私がいなくなったガーデニー家やルドウェン様の評判はガタ落ちになる。そして、召使いがいなくなったガーデニー家に怪しい影が……。 ※『小説家になろう』様と『カクヨム』様でも掲載しております

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

姉と妹の常識のなさは父親譲りのようですが、似てない私は養子先で運命の人と再会できました

珠宮さくら
恋愛
スヴェーア国の子爵家の次女として生まれたシーラ・ヘイデンスタムは、母親の姉と同じ髪色をしていたことで、母親に何かと昔のことや隣国のことを話して聞かせてくれていた。 そんな最愛の母親の死後、シーラは父親に疎まれ、姉と妹から散々な目に合わされることになり、婚約者にすら誤解されて婚約を破棄することになって、居場所がなくなったシーラを助けてくれたのは、伯母のエルヴィーラだった。 同じ髪色をしている伯母夫妻の養子となってからのシーラは、姉と妹以上に実の父親がどんなに非常識だったかを知ることになるとは思いもしなかった。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

居場所を奪われ続けた私はどこに行けばいいのでしょうか?

gacchi
恋愛
桃色の髪と赤い目を持って生まれたリゼットは、なぜか母親から嫌われている。 みっともない色だと叱られないように、五歳からは黒いカツラと目の色を隠す眼鏡をして、なるべく会わないようにして過ごしていた。 黒髪黒目は闇属性だと誤解され、そのせいで妹たちにも見下されていたが、母親に怒鳴られるよりはましだと思っていた。 十歳になった頃、三姉妹しかいない伯爵家を継ぐのは長女のリゼットだと父親から言われ、王都で勉強することになる。 家族から必要だと認められたいリゼットは領地を継ぐための仕事を覚え、伯爵令息のダミアンと婚約もしたのだが…。 奪われ続けても負けないリゼットを認めてくれる人が現れた一方で、奪うことしかしてこなかった者にはそれ相当の未来が待っていた。

処理中です...