皇妃になりたくてなったわけじゃないんですが

234話

リオン様の話を聞き終えたアルフレッド様は、というと、自分の経験したことのない話だったこともあって、なんだか呆気に取られているみたいですわね。

まぁ、当然の反応ですわ。

しかも、自分の従兄弟がここまで変わってしまったんですもの。

一方、リオン様は話し終えた達成感のようなものを感じているのか、満足げにお茶を飲んでいますわね。

そんなリオン様をなぜかジュリアは優しい目をして見つめていますわ。

この2人の間に何かあったんでしょうか？

それとも、ジュリアもリオン様の変化に喜んでいる、とか？

そう思いながら、まるで令嬢のように、優雅にお茶を飲んでいるリオン様に

「興味深い話をありがとうございますわ」

と言って微笑むと

「あら、こんなのでよかったらいつでも話すわよ」

リオン様は目をキラキラと輝かせて、そう言ってくれましたわ。

こんなの、だなんて言っていますが、私としては初めて聞く話しかなかったので、本当に楽しかった、というのが本音ですわ。

なので、リオン様にそう言ってもらえて嬉しい、と純粋に思った私は

「本当ですの？だったら今度隣国の話を色々と詳しく聞きたいですわ！」

と返事をしましたわ。

なんとなくですが、私の頬が緩んでいる気がしますわね。

無意識に口角が上がってしまいますわ。

そんな私にリオン様も

「えぇ、もちろんよ！女子会でも開きましょうか！」

と言ってニコニコしながら、胸の前で手をパンっと合わせました。

女子会、ですか。

とってもいい提案ですわね。

リオン様は喋り方が影響しているのかわかりませんが、令嬢とお話をしているみたいで楽しいですし、これから仲良くなれそうな気がしますわ。

なんて思っていると、私達の話を聞いていたアルフレッド様が急に

「んんっ！」

と咳払いをしたかと思ったら

「とりあえず、リオンは宰相として明日から王宮に通ってもらうことになる。いいな」

と私達の話を遮ってきましたわ。

せっかく楽しく話をしていたのに、邪魔をされたような気分になって少しムッとしてしまいましたが、よくよく考えると今は宰相になってくれるのか、という話だったんですものね。

そう考えると、今は宰相とは何も関係のない話だったので仕方ありませんわ。

リオン様はアルフレッド様の言葉に

「えぇ、わかったわ」

と頷くと、今度は私の方に

「ユーフェミアは今日まで苦労をかけたな。明日からは自分の仕事に専念してくれ」

とアルフレッド様が言ってきましたわ。

正直苦労はしていませんが、自分の仕事に専念できる、というのは嬉しいですわね。

なんて思いながら、私も

「えぇ、わかりましたわ」

と頷くと、アルフレッド様はどこからか、契約書を取り出しましたわね。

チラッとしか見えなかったので、詳しい内容はわかりませんが、真ん中あたりに『リオン・バレンタイアを宰相に～』と書かれていたので、雇用の契約書でしょう。

リオン様は、アルフレッド様から受け取った書類を、ササっと読み終えると

「ここにサインで良いのよね？」

と言いながら、自分の名前を書類の下の方に書きましたわ。

........これで、宰相が確定した、ということですわね。