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119話

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コンコン、と執務室の扉をノックして中に入ると

「あぁ、戻ってきたのか」

とフェルマー様同様に力なく机に向かっているアルフレッド様がいますわ。

これは精神的疲労なのか、それとも肉体的疲労なのかわかりませんが、相当しんどそうですわね。

そう思いながらアルフレッド様のいる机の近くに向かうと、フェルマー様が言っていた通り沢山の手紙が置かれていましたわ。

普段なら書類に埋め尽くされているはずですのに、今は全て便箋と封筒ですわね。

余りの多さについため息をつきたくなりましたが、ぐっと堪えて

「フェルマー様から話は聞きましたわ。そのお返事、私が書いても良いですか?」

と尋ねると、アルフレッド様は驚いた顔をしましたがすぐに

「いや......見ない方が良い内容だってある。俺が書こう」

そう言って再び机に向かってしまいましたわ。

どんな内容なのかはわかりませんが、枚数が枚数なので遠慮なんてしなくていいんですけどね。

なんて思いながら

「そうは言っても、私のことが書いてありますのよね?だったら私が書いた方が良いですわ。アルフレッド様は一旦休んでくださいませ」

そう言って、アルフレッド様の隣にあった手紙をサッと奪い取りました。

するとその手紙には、皇帝は騙されている、目を覚ましてください、あんな悪女が皇妃だなんて、などなど。

まぁ.......私のことだけならまだしも、アルフレッド様は操られているから早く目を覚ましてくれ、という言葉が並んでいますわ。

これは確かに疲れますわね。

それに、人を操る能力があるんだったら反皇妃派の人達なんて出てきませんのよ。

本当に面白い手紙ですわね。

そう思いながら

「まぁ、随分な言われようですわね」

と呟くと

「だから言っただろう?ユーフェミアこそ、ジュリア嬢についていなくていいのか?」

とアルフレッド様に睨まれてしまいましたわ。

酷い内容だとは言いましたが、これくらいで悲しむような人ではありませんのにね。

それにジュリアに、ですか。

「メイドのことはメイドに任せた方が良いですわよ。私だってずっと近くにいれるわけではないですしね」

私がそう言うと、アルフレッド様は

「確かにそうだな......」

と納得してくれたみたいですわ。

まぁ、気になる、というのもわかりますわ。

本当は私もジュリアについて教えてあげたいです。

ですが、私がいなくなって困ってしまうような状況を私が作り上げるわけにもいきませんからね。

なんて思いながら、アルフレッド様の机の前に置いてあるソファーに座って

「紙をくださいな。後ペンも貸してくださいませ」

とアルフレッド様に言うと、はぁ......と大きくため息をついてしまいましたわ。

まさか本当に私が返事を書くと思っていなかったんでしょう。

勿論書きますわよ。

言われっぱなしなのは嫌ですもの。

その気持ちが伝わったのか、諦めたのか

「違う仕事を片付けているから何かあったら声をかけてくれ」

と言ってペンと便箋を渡してくれましたわ。

さて、どう返事をしましょうか?

喧嘩を売るような感じで行くべきか、それとも下手に出てみるか.........。

字にも性格が出る、なんて言いますし、人によって変えてみるのも良いかもしれませんね。
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