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82話

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さて、到着しましたわ。

私が向かっていた場所、それは調理場ですの。

ここにジュリア様がいる、とのことですわ。

中に入ろうとすると

「早く助けなさいな!誰かいませんの!?」

という、今まで聞いたこともないくらい切羽詰まったジュリア様の声が聞こえてきました。

あれが本性、ということでしょう。

今まで傲慢なところは隠してきたんでしょうが、流石に今の状況でお淑やかにいるのは難しかったんでしょうね。

そう思いながら調理場に入ると、希望に満ちた顔で振り返ったものの、来たのが私だとわかって

「こ.....皇妃様........」

と顔を真っ青にしていますわ。

全く....そんな顔になるくらいでしたら、最初からやらなければよかったんですのよ?

そう思いながらジュリア様にニッコリと笑って

「何をしていますの?」

と聞いてみましたわ。

今のジュリア様は冷蔵庫の前に膝をついています。

そして、その隣にはお母様たちが泊っている間に使うメインの食材たちが落ちていますわ。

あらあら.....盛大にやりましたわね。

ジュリア様のみっともない姿に呆れていると

「た、助けてください!動けなくて......っ!」

と涙目になって私に言ってきましたわ。

この状況で私に助けを求めるなんて、意外と図太い神経をしていますのね。

そう思いながら

「聞いていました?何をしていますの、と言ったんですが」

そう言うと、ジュリア様は目線をキョロキョロと動かして

「え、えっと.........」

と戸惑っていますわ。

ジュリア様がなぜ冷蔵庫の前で動けなくなったのか。

それは、私と料理長で考えた罠があるからですわ。

どこの国かは忘れてしまいましたが、『とりもち』というものがあるらしいんです。

私も聞いたことがあるくらいで、作り方とか詳しいことは知らなかったんですが料理長がなぜか詳しく知っていましたの。

入口の所で置いておくと、水が欲しかった、とか何かしらの言い訳をする可能性があったので、冷蔵庫の前にしたんですが、大正解でしたわね。

まぁ、まさかこんなに簡単に......しかも、ジュリア様が引っかかるとは思っていませんでしたが。

ジュリア様はとりあえず、とりもちから抜け出したいようで必死に動いていますが、普通に歩きだそうとして転んだのでしょう。

しっかりと手と膝までくっ付いていますわ。

冷静にジュリア様の様子を観察していると、私が助ける気なんてないと気付いたのか思いっきり睨みつけてきましたわ。

あら、怖いですわね。

なんて呑気に思いながら

「この国の人は都合が悪くなったら黙るように言われていますの?早く質問に答えてくださいな」

そう言ったんですがジュリア様はだんまりを続けています。

はぁ......何が何でも言うつもりがない、ということでしょうか?

別に良いんですけどね。

そう思いながら、わざとらしくため息をついて

「仕方ありませんわ。私とお話をしたくないようなので、アルフレッド様を呼んできますわね。そっちでお話してください」

と言ってジュリア様を放置したまま調理場を出ようとすると、流石にアルフレッド様にこの姿を見られるのはまずいとわかったのか

「や、やめてっ!話しますわ!ちゃんとお話しします!」

顔色を変えながらそう言いましたわ。

はぁ......最初から素直にそうしてくれた方が私も嬉しかったですわ。








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