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33話

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私が紙を渡すとすぐに

「書きましたわよ」

と3人組が紙を返してきました。

「えぇ、ありがとう」

と言って受け取りましたが、やっぱり.....としか言いようがありませんわね。

他の2人は今やっと名前を書いている、というのに。

2人は名前を書き終えると

「か、書けました。これからよろしくお願いします」

「よろしくお願いしますわ」

と私に頭を下げてきたので

「えぇ、お願いします」

とニッコリ笑って答えました。

その様子を見た3人は

「いい子ぶっちゃって必死よねぇ」

クスクスと笑いながらバカにしていますが、本来なら全員が言ってないとおかしい話なんですけどねぇ。

まぁ、気付いていないみたいですし、私からも言うつもりはないので放っておきましょう。

「では部屋の案内はメイドがしますわ。私はやることがあるので、失礼しますわね」

そう言って、客室を後にしました。

さて、話は変わりますが、普通は契約書などにサインするときには説明がある、ない、関係なしに相違がないように内容を確認するのが常識ですわよね?

だって、少し確認するのを怠っただけで、自分に覚えのない約束までしてしまったら大変ですもの。

なので、今回の誓約書の最後の部分に『名前を書いたらよろしくお願いします、と言って提出すること』と付け加えましたの。

それでちゃんと契約書を読んでいるのか、はっきりとわかりますしね。

本当は説明と全く違うことを書こうかしら?とか意地悪なことを思ったんですが、流石に可哀そうですし、私の良心も痛むので止めておきました。

まぁ、結果は私が想像していた通りのものでしたし、書かなくて正解でしたよ。

そう思いながら部屋に戻ると

「お嬢様、どうでしたか?」

とユリが一番最初に結果を聞いてきました。

なので、苦笑しながら

「やっぱり私が思っていた通りですわ」

と答えるとカーラも苦笑しています。

「そうですか......先が思いやられますわね」

「えぇ、本当よね」

全く.....候補の半分以上がこんな常識的なことも出来ないなんて、本当に人選ミスでしかありませんわ。

まぁ、最初からあの人たちを側室にする気もないんですけどね。

ただ関わることもなく何もない状況で断るのも出来ないので、仕方なく入れているだけですし。

何か大きな問題を半年以内に起こしてくれたら遠慮なく切り捨てますわ。

そう思いながら

「さて、じゃあ私も皇妃としての仕事をしないといけないわよね」

と呟くと

「はい。皇妃専用の執務室があるみたいなので、そちらにご案内しますね」

あら?カーラが案内してくれるのね。

なんて呑気に思っていると、到着したのは私の部屋の2つ隣の部屋で驚きましたわ。

なのでつい、

「思った以上に近かったわね......」

というと、カーラも同じことを思ったようで

「私も最初は驚きましたよ」

そう言いながら執務室の扉を開けてくれました。

しかし、驚きはまだ続いて

「何よこれ.......っ!」

「どうされました?」

どうされました?じゃありませんわ!

なんですの!?この無駄に多い書類の山は....っ!

いや、仕事が多いのは別に構いませんわよ。

だって、そればっかりは仕方のないことですもの。

でも、私が今驚いているのは全く違うことですわ。

「ありえませんわ!皇帝のところに行ってくるわ!」

そう言って、一番上の方から数枚の書類の束を取って皇帝の元に向かうことにしましたわ。

もし、皇帝も同じ状況なら、今すぐにでも改善しないといけませんわ!

後ろから

「お、お嬢様!?」

とカーラの驚いている声が聞こえてきますが、とにかく急ぎましょう。
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