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41話 リオル兄side
しおりを挟むなぜ部屋がこんなことになっているんだ?
まさか、盗人が.......いや、この家は警備だけはしっかりしているからそんなはずがない。
だったらいったい誰が......。
そう思っていると、顔色を悪くした嫁が俺の横を通りすぎようとしたから咄嗟に
「どこに行くんだ!」
と肩を掴むと嫁の手には大きな荷物を抱えていた。
なんだ?この大きな荷物は。
それに、よく見たら部屋から俺のもの以外ほぼ無くなっているじゃないか。
なんでこんなことを.....。
まるでこの家から出ていく準備をしていたみたいじゃないか。
昨日までそんな気配は全くなかったのに........。
呆然としている俺に
「離して!もう限界ですわ!」
嫁は大きな荷物を振り回しながら俺を遠ざけた。
そんな嫁に向かって、静かに
「どういうことだ」
と尋ねると
「毎日毎日お金の話か自分たちの家族を殺すことだけ。もう頭がおかしくなりそうなんですわ!」
そう言われてハッとした。
確かに最近父上たちが家にいるから、というのもあるがリオルを殺すことか金の話しかしていない。
そんな俺に嫌気がさした、ということなのか?
でも、俺は家族のことを思って、子供達といるときはそんな話を一切しないように気を付けていたつもりだ。
そう思っていると
「リオルの慰謝料だって払ってあげられない額ではないでしょう!?なんでそこまでして嫌がるのか意味が分かりませんわ!」
本当にその通りだ。
リオルの慰謝料なのに、なぜ俺が払ってやらないといけないんだ、という思いだけが先行していた。
冷静になってみればなぜ俺はそこまで嫌がる必要があったんだ?
唯一の弟を殺してまで金のことをケチる必要はあったのか?
嫁の正論に何も返すことが出来ず、ただただ呆然としていると
「こんなところにいたら、そのうち私や子供達もどうなるかわからない......こんな人と結婚したのが間違っていたともっと早く気付くべきでしたわ」
そう言って嫁は部屋を出ていってしまった。
俺はその後ろ姿を見つめることしか出来なかった。
はぁ......まさかリオルのことで俺までこんな目に遭うなんて思っていなかった。
なんでこんなことになったんだ?
でも俺は元々リオルを殺そうだなんて考えていなかった。
なるべく自分に被害がないように動いていたつもりだ。
それなのになぜ.......?
そう思っていると、母上が慌てた様子で俺の部屋に入ってきた。
「ど、どうしましょう.......っ!」
と慌てている母上に
「なに?」
と聞くと
「私達に逮捕状が出てるって........っ!」
........は?
何を言っているんだ?
逮捕状?なぜ?
はぁ.....嫁に出ていかれたばかりでそんな冗談はきつい。
そう思って母上の話を無視して部屋を出ると、何やら家中が騒がしい気がする。
誰か来たのか?
そう思って騒がしい方に歩みを進めると、1人の兵士らしき人に
「お前は現レントル子爵だな」
と聞かれたから
「はい....そうですが」
と答えたが、誰なんだ?
色々考えようとしたけど全然頭が働かない。
どうしたらいいんだ?
そう思っていると
「一緒についてきてもらおう」
と言って、兵士らしき人が俺の手に手枷をつけてきた。
なんだこれ?まるで犯罪者みたいじゃないか。
そう思ったけどそれを言ってやる気力は今の俺には残っていなかったから大人しく連れていかれることにした。
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