旦那様は私に隠れて他の人と子供を育てていました

榎夜

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40話 リオル兄side

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一回役人が家に来てからずっと父上が苛立っている。

「おい!リオルはまだ殺せないのか!」

はぁ......また怒鳴ってるよ。

リオルだってもううちの領地にいるはずがないのに、毎日同じところを捜索して見つからないに決まってるじゃないか。

怒鳴られている兵士も

「す、すみません」

って縮こまってるし。

なんだか可哀そうに思って

「ねぇ、いつまでここにいるつもりなの?」

と父上に尋ねると

「うるせぇ!俺といたくないなら自分が出ていけばいいだろ!出来の悪い息子しかいないのか!」

......はぁ?

「何切れてるんだよ。苛ついているからって人に当たるのは違うだろ!」

本当に腹が立つな。

母上もよくこんなのと結婚したよ。

そう思っていると、父上は

「お前になんか一円たりとも財産を残してやらないんだからな!」

と言ってきた。

はぁ......腹が立つ。

別に財産がどうとかの前に、家はもう俺が継いでるし、現金はまともに持っていないことだって知ってるから死んでも対して金は入ってこない。

大体、隠居している家があるのに居座ってるのはそっちのくせになぜこんなに威張っているのかわからない。

これもリオルが早く死んでくれないからこんなことになっているんだ。

そうだ、リオルが死んでくれれば父上だってまた隠居している家に戻るし、そうすれば俺だってこんな思いをしなくて済む。

リオルが死ねば解決するなら、俺も捜索するのを手伝えばいい話じゃないか?

そう考えた俺は

「父上、もう領地にはリオルはいないだろうから他を探そう」

と声をかけた。

領地にリオルがいないことは、きっと父上もわかっているはずだ。

そう思っていると

「他の領地の捜索だと?だが、勝手にやるわけにもいかないだろう」

この言葉だけでなんとか怒りは収まりかけてるな。

多分、自分だけが必死になっていると思って余計に苛ついてるんだ。

それがわかったなら後は優しく手を差し伸べてあげるだけで父上は気分を良くするだろうな。

調子に乗らせるのは嫌だが仕方ない。

嫁と子供に八つ当たりされる方が嫌だからな。

心の中で大きなため息をつきながら

「領地で食い逃げした奴がそっちに行ったかも、とか言えば大丈夫だよ。俺が言っておくし」

そう言って部屋を出ようとすると

「おぉ!流石俺の息子だな!」

さっきの言っていることとは一変して俺を自慢の息子だ、と褒めてきた。

はぁ......単純な奴で助かるが、本当に面倒くさいな。

父上の最後の言葉は無視だな。

話をするだけでも疲れた.........。

早く部屋に戻ろう。

そう思って戻ったのはいいが、部屋の様子を見て俺はただただ呆然と立ち尽くしていた。

「な、何をしているんだ?」

と声をかけた先にいたのは顔を真っ青にして震えている嫁の姿だった。
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