41 / 44
40話 リオル兄side
しおりを挟む一回役人が家に来てからずっと父上が苛立っている。
「おい!リオルはまだ殺せないのか!」
はぁ......また怒鳴ってるよ。
リオルだってもううちの領地にいるはずがないのに、毎日同じところを捜索して見つからないに決まってるじゃないか。
怒鳴られている兵士も
「す、すみません」
って縮こまってるし。
なんだか可哀そうに思って
「ねぇ、いつまでここにいるつもりなの?」
と父上に尋ねると
「うるせぇ!俺といたくないなら自分が出ていけばいいだろ!出来の悪い息子しかいないのか!」
......はぁ?
「何切れてるんだよ。苛ついているからって人に当たるのは違うだろ!」
本当に腹が立つな。
母上もよくこんなのと結婚したよ。
そう思っていると、父上は
「お前になんか一円たりとも財産を残してやらないんだからな!」
と言ってきた。
はぁ......腹が立つ。
別に財産がどうとかの前に、家はもう俺が継いでるし、現金はまともに持っていないことだって知ってるから死んでも対して金は入ってこない。
大体、隠居している家があるのに居座ってるのはそっちのくせになぜこんなに威張っているのかわからない。
これもリオルが早く死んでくれないからこんなことになっているんだ。
そうだ、リオルが死んでくれれば父上だってまた隠居している家に戻るし、そうすれば俺だってこんな思いをしなくて済む。
リオルが死ねば解決するなら、俺も捜索するのを手伝えばいい話じゃないか?
そう考えた俺は
「父上、もう領地にはリオルはいないだろうから他を探そう」
と声をかけた。
領地にリオルがいないことは、きっと父上もわかっているはずだ。
そう思っていると
「他の領地の捜索だと?だが、勝手にやるわけにもいかないだろう」
この言葉だけでなんとか怒りは収まりかけてるな。
多分、自分だけが必死になっていると思って余計に苛ついてるんだ。
それがわかったなら後は優しく手を差し伸べてあげるだけで父上は気分を良くするだろうな。
調子に乗らせるのは嫌だが仕方ない。
嫁と子供に八つ当たりされる方が嫌だからな。
心の中で大きなため息をつきながら
「領地で食い逃げした奴がそっちに行ったかも、とか言えば大丈夫だよ。俺が言っておくし」
そう言って部屋を出ようとすると
「おぉ!流石俺の息子だな!」
さっきの言っていることとは一変して俺を自慢の息子だ、と褒めてきた。
はぁ......単純な奴で助かるが、本当に面倒くさいな。
父上の最後の言葉は無視だな。
話をするだけでも疲れた.........。
早く部屋に戻ろう。
そう思って戻ったのはいいが、部屋の様子を見て俺はただただ呆然と立ち尽くしていた。
「な、何をしているんだ?」
と声をかけた先にいたのは顔を真っ青にして震えている嫁の姿だった。
85
お気に入りに追加
3,956
あなたにおすすめの小説
拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】
僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。
※他サイトでも投稿中
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。


【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。
かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。
ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。
二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。


人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。


【完結】正妃に裏切られて、どんな気持ちですか?
かとるり
恋愛
両国の繁栄のために嫁ぐことになった王女スカーレット。
しかし彼女を待ち受けていたのは王太子ディランからの信じられない言葉だった。
「スカーレット、俺はシェイラを正妃にすることに決めた」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる