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39話
しおりを挟むリオルを保護したと聞いて3日が経ちました。
やっと落ち着くことが出来た、とのことで、今日はリオルと久しぶりに会う日です。
この3日間、弁護士さんと色々話をして、どうすればいいのかも聞いてきました。
慰謝料はどうなるかわからない、とのことですが、こんなことになってもまだリオルからお金を取ろうだなんて一切考えていません。
別にそこまでお金に困っているわけじゃないですしね。
「あまり刺激するようなことは言うなよ」
私にそう言ってきたのはノアです。
なぜかアイボリー侯爵家に行くというのにノアがついてきたんですよね。
「わかっているわ」
と頷きましたが、なんででしょう?
兵士もいるから大丈夫と言ったんですけどね。
そう思っているうちに、客室に到着しました。
......ここにリオルがいるんですね。
ふぅ.......と大きく深呼吸をしてから扉を開けると、そこには痩せてしまったリオルが座っていました。
聞いていた話ではボロボロで前とは別人だ、とのことでしたが、今のリオルはただ前よりは痩せたな、と思うくらいです。
リオルも私に気付いたようで、目が合ったので
「久しぶり」
とだけ言うと
「カノンっ!俺は....っ!」
泣きそうな顔をしながら話始めようとしましたが
「先に私から話すわね。リオル、貴方は家族から見放されたわ。これがその証明」
そう言って弁護士さんが用意してくれた書類を取り出しました。
リオルが死んだ、ということになっている紙と、調査して義父が提出した、という証拠の2枚です。
それを見たリオルは
「でも、俺は生きているのに.....!」
と必死に言いますが、私に言っても何もできませんよ。
そう思いながら
「えぇ、生きているわね。でもあの人たちは慰謝料を支払いたくない、という一心で貴方を亡き者にした。お金とリオルを天秤にかけてお金を取ったのよ」
リオルからすればそんな風に言われたくないかもしれませんが、これが事実です。
するとリオルは
「俺はどうなるんだ......?」
と私に聞いてきましたが
「平民として生きるしかないんじゃない?」
しか言えませんよね。
.....というか、リオルは今も平民でしたね。
あぁ、それから
「あの家は、今頃潰されているかもね。良くて全員平民落ち、悪くて終身刑か鉱山行きじゃない?」
このことは、あまりにも酷すぎる、とのことで上の人.....陛下にも報告が行きました。
まぁ、貴族の間ではよくある話ではありますが、理由が良くなかったですよね。
それと、
「それから、ミアさんは逮捕されたよ」
と私が言うと
「な、なぜ....?」
物凄く小さな声で聞いてきたので
「父親を殺しかけたんだって。今頃、牢屋の中に入ってる」
と答えました。
ババリーさんは目が覚めたみたいで、近いうちに退院できると聞いています。
もちろん、風の噂ですけどね。
私の答えに衝撃を受けたリオルは呆然としたまま下を見つめ続けています。
もう言うことは終わりましたね。
なのでさっき出したのとは違う紙を机の上に置いて
「書いてちょうだい」
と言いました。
私が出したのは勿論、離婚届けです。
たかが浮気と離婚だけなのにこんなに話が大きくなるとは思いませんでしたね。
するとリオルは
「.......嫌だ」
と絞り出したかのような声を出したと思ったら
「それを書いたら俺は1人になってしまう!なんでもする!なんでもするから離婚は......っ!」
こんなことになって、まだ再構築できるなんて思っているんでしょうか?
流石にそれは頭が弱いとしか言えないですね。
そう思った私はついつい大きなため息をつきながら
「なんで今回のことがこんなに大事になったかわかってる?」
と言ってしまいました。
するとリオルは再び下を向いてしまったのでなんとなくムカついたので
「リオルが素直に離婚に応じて、働きながら慰謝料なり養育費なり払ってくれていればこんなに大事になっていないのよ。......いや、違うわね。リオルが現実から目を背けて逃げ出したせいでこんなことになったのよ」
吐き出すように言ってしまいました。
リオルは、というと下を向いて黙り込んでいます。
そんなリオルに
「でも唯一の救いはリオルが犯罪に手を染めていなかったことよ」
これは本当に思っていることです。
もしリオルが家を出てから人を殺していたり、盗みをしていたら、牢屋に行くことになっていたかもしれないしね。
私の言葉にリオルはポロポロと大粒の涙を流しているのが見えました。
なので
「これからは心を入れ替えてしっかり生きて」
なるべく優しくそう言うと
「すまなかった......本当にすまなかった.....っ!」
初めてリオルが謝ってくれた瞬間でした。
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