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32話

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ひとまず衝撃的な事実を聞けたことで忘れるところでしたが、私がアイボリー侯爵家に来た理由はわざわざこんなことを言うためではありませんでした。

「その......それで本題なんですが、リオルを探したいんです。なので侯爵家の領地を捜索しても良いでしょうか?」

少し言い出しにくかったですが、様子を伺いながらそう聞くと

「もちろんだとも!それなら私も手伝おう」

即答ですか。

なんかもう少し言われると思ったんですけど......。

というか、今手伝う、と言いました!?

「い、いえ!そこまでお世話になる訳には......」

流石にそれは申し訳なさ過ぎますよ。

元々人員はどうにか確保する予定でしたし、そこまでやってもらうのは......。

そう思って断ろうとしましたが

「いや、そうさせて欲しい。私のわがままだけどカノンちゃんの結婚を止められなかったお詫びと思って欲しい」

「......わかりました。ではお願いしてもいいですか?」

お詫びなんて必要ないです、と言っても聞いてくれませんよね。

私としても、手伝ってもらえるのは嬉しいですしお願いしましょう。

ということになりました。

元侯爵様に、リオルを発見して日にちが経ってしまっていること、もしかしたら隣の領地の方に移動している可能性もあることを伝えると、それも全て頭に入れて捜索してくれるとのことでした。

「何から何までありがとうございます」

「いや、それくらい構わないよ」

もう頭が上がりませんよ。

すると

「うちの息子を呼びつけて捜索を手伝うようにも言っておくから。カノンちゃんは仕事もあるでしょう?」

さも当たり前のように息子さんも手伝わせようとするものですから

「そんな!息子さんにまで手伝ってもらっておいて私だけ何もしないなんて出来ませんよ!」

これだけは必死に止めました。

だって、息子さんって今の侯爵家当主ですよね?

元侯爵様に頼んでいる私が言うのもなんですが、流石に私の頼みでそこまで動かしてもらう訳には行きませんよ。

それに、仕事に穴を開けなくてもいいのは嬉しいですが、皆が捜索している中、私だけいつも通りに過ごすなんて.........。

そう思いましたが、元侯爵様は急に真剣な顔をして

「......言わないつもりだったが、もしカノンちゃんが1人になったところで元旦那と出くわしたら危険な目にあうかもしれない。人間、追い詰められたらどんな行動をとるかわからないから」

と言ってきました。

確かにその通りなんですよね......。

親があれなので、リオルだってまともかどうかなんてわかりませんもの。

「今回は私に甘えておいて欲しい」

.........そこまで言われたら頷くしかできません。

そう思ってお礼を言うと

「お礼はいつものやつを安く売ってくれればいいよ」

「もちろんですよ!」

もうそれでも足りないくらいですよ。

本当にありがたいですね。
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