旦那様は私に隠れて他の人と子供を育てていました

榎夜

文字の大きさ
上 下
30 / 44

29話 リオル兄side

しおりを挟む

父上がリオルの死亡届を出してからだいぶ日付が経ったある日の朝、急に役人の人が家を訪れていた。

まぁ、連れていかれたのは俺ではなく父上だったから、また何かやらかしたんだろうな、くらいでしか思わなかったが、帰ってきた父上の顔は怒りに満ち溢れていて思わず

「何だったんだ?」

と聞くと

「アイツ!黙って言うことを聞いていれば良いのに今更、リオルが死んだことをカノンにも伝えるなどと言ってきた!」

なるほど。それで怒っていたのか。

だが、

「なぜカノンが関係あるんだ?」

リオルが死んだ、ということはカノンはもう我が家と何も関係がないじゃないか。

そう思ったから俺だってカノンに手紙を書かなくなった。

まぁ、それに関しては書くのが面倒になってきたから丁度良かったな、くらいでしか思ってないが......。

すると母上がキレ気味に

「関係あるに決まっているじゃない!リオルとカノンさんはまだ離婚していないのよ?」

と父上に言うと

「どうせ離婚するつもりだったんだろう!?だったらなぜ言う必要がある!?」

あぁ、こうなってしまうと面倒だから、とりあえず言い合いさせておこう。

つまりはリオルとカノンはまだ夫婦だから死亡したことを報告するのは当然だろう、ということで父上は呼び出されたのか。

それは確かに役人の方が正しいな。

いや、その前に死亡届を出した時点で報告されるのが普通だろう?

なぜわざわざそんなことで話をしに来たんだ?

そう思っていると

「あぁ!だから離婚してからにしましょうって言ったのに貴方が勝手に進めてしまうから!」

............は?

「いや、ちょっと待て。母上は最後までリオルのことを反対していたんじゃないのか?」

確か母上は、父上がリオルを死んだことにする、と言った時1人だけ反対していたはずだ。

だが、今の言い方だったら死亡させてもいいけど離婚してからにしろ、と言ってるのと同じだ。

すると父上は母上を思いっきり睨みつけながら

「ふんっ!こいつが反対したのはお前の前でだけだ!寝室に入るなり、離婚してからにしろ、とか財産のことを揉めなくて済むわ、と喜んでいた」

「ちょっ.........そんな風には言ってないじゃないの!」

「どうだかな」

なるほどな。

つまり母上もリオルの浮気ごときで金を出すのが嫌だった、ということか。

後は父上の財産狙い、といったところだろう。

馬鹿馬鹿しい。

思わず溜息をついてしまった。

すると、2人の視線は一気に俺に集中してしまったから仕方なく

「.........俺だってリオルの件は了承した。だが、勝手に死亡届を出したのは父上だ」

と話すと

「お前だって乗り気だっただろ!」

はぁ......相変わらず都合が悪くなると全て人のせいにするんだな。

なぜか母上は期待している目で俺を見ているし。

面倒くさい。

そう思いながら

「もういい。とりあえず、このことはカノンに伝えるか伝えないかは父上に任せる。ここまで勝手にやったんだから最後まで勝手にやっててくれ」

と逃げるように部屋を出た。

父上が何か叫んだ気がするが勝手にやっててくれ。

俺はこの件に関しては無関係だからな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴方にはもう何も期待しません〜夫は唯の同居人〜

きんのたまご
恋愛
夫に何かを期待するから裏切られた気持ちになるの。 もう期待しなければ裏切られる事も無い。

あらまあ夫人の優しい復讐

藍田ひびき
恋愛
温厚で心優しい女性と評判のカタリナ・ハイムゼート男爵令嬢。彼女はいつもにこやかに微笑み、口癖は「あらまあ」である。 そんなカタリナは結婚したその夜に、夫マリウスから「君を愛する事は無い。俺にはアメリアという愛する女性がいるんだ」と告げられる。 一方的に結ばされた契約結婚は二年間。いつも通り「あらまあ」と口にしながらも、カタリナには思惑があるようで――? ※ なろうにも投稿しています。

二度目の恋

豆狸
恋愛
私の子がいなくなって半年と少し。 王都へ行っていた夫が、久しぶりに伯爵領へと戻ってきました。 満面の笑みを浮かべた彼の後ろには、ヴィエイラ侯爵令息の未亡人が赤毛の子どもを抱いて立っています。彼女は、彼がずっと想ってきた女性です。 ※上記でわかる通り子どもに関するセンシティブな内容があります。

【完結】さよなら私の初恋

山葵
恋愛
私の婚約者が妹に見せる笑顔は私に向けられる事はない。 初恋の貴方が妹を望むなら、私は貴方の幸せを願って身を引きましょう。 さようなら私の初恋。

元妻からの手紙

きんのたまご
恋愛
家族との幸せな日常を過ごす私にある日別れた元妻から一通の手紙が届く。

こんな人とは頼まれても婚約したくありません!

Mayoi
恋愛
ダミアンからの辛辣な一言で始まった縁談は、いきなり終わりに向かって進み始めた。 最初から望んでいないような態度に無理に婚約する必要はないと考えたジュディスは狙い通りに破談となった。 しかし、どうしてか妹のユーニスがダミアンとの縁談を望んでしまった。 不幸な結末が予想できたが、それもユーニスの選んだこと。 ジュディスは妹の行く末を見守りつつ、自分の幸せを求めた。

もうすぐ婚約破棄を宣告できるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ。そう書かれた手紙が、婚約者から届きました

柚木ゆず
恋愛
《もうすぐアンナに婚約の破棄を宣告できるようになる。そうしたらいつでも会えるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ》  最近お忙しく、めっきり会えなくなってしまった婚約者のロマニ様。そんなロマニ様から届いた私アンナへのお手紙には、そういった内容が記されていました。  そのため、詳しいお話を伺うべくレルザー侯爵邸に――ロマニ様のもとへ向かおうとしていた、そんな時でした。ロマニ様の双子の弟であるダヴィッド様が突然ご来訪され、予想だにしなかったことを仰られ始めたのでした。

【完結】私の事は気にせずに、そのままイチャイチャお続け下さいませ ~私も婚約解消を目指して頑張りますから~

山葵
恋愛
ガルス侯爵家の令嬢である わたくしミモルザには、婚約者がいる。 この国の宰相である父を持つ、リブルート侯爵家嫡男レイライン様。 父同様、優秀…と期待されたが、顔は良いが頭はイマイチだった。 顔が良いから、女性にモテる。 わたくしはと言えば、頭は、まぁ優秀な方になるけれど、顔は中の上位!? 自分に釣り合わないと思っているレイラインは、ミモルザの見ているのを知っていて今日も美しい顔の令嬢とイチャイチャする。 *沢山の方に読んで頂き、ありがとうございます。m(_ _)m

処理中です...