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14話
しおりを挟む今日は特別な日.........いや、勝負の日です。
なんと、お相手さんの家に乗り込むことになりました。
ノアに紹介してもらった弁護士と話をしたところ、とりあえず、円満に離婚することが出来るのならその方がいい、との事でした。
離婚した後は、養育費も払ってもらった方がいい、とか相手側から慰謝料を請求した方がいい、とか色々教えてもらいました。
正直、自分が離婚するなんて思っていなかった私は、慰謝料などの存在は知っていましたがどうやってやるのかまでは知らないのでとても助かっています。
出来れば会話を録音するように、とも言われたので録音機もちゃんと用意しています。
相手側の家には取り引きの話、とだけ伝えてあります。
今日の話次第で、取り引きはなくなるので間違ってはいないですよね。
いつもはこっちに来てもらっているんですが、今日は私が向かう側です。
理由は簡単。
あちらの家にリオルがいるので、その方が話が早いですもの。
馬車を走らせること、約20分。
こんなに近いところだと確かに通いやすいですよね。
「お久しぶりです、カノンさん」
そう言って出迎えてくれたのは優しそうな顔をした【ババリー工具店】を経営しているお相手さんの父親です。
私は普通にババリーさん、と呼んでいます。
「すみません、来ることになって......」
まだ中に入る前なので悟られないようにいつも通りに接します。
「いえ、とんでもないです!ダルジェーン商会にはいつもお世話になっていて......」
えぇ。こちらこそとてもお世話になっていますよ。
主に旦那の方がね。
と言いそうになりましたがグッと堪えてババリーさんと一緒に客室に向かいます。
客室に到着すると、珍しく奥さんも一緒みたいですね。
私としては丁度いいですが、何かあるんでしょうか?
私が客室に入るなり
「あら、カノンさん久しぶりですね。ご両親もお子さん達も元気にしていますか?」
と奥さんが聞いてきたので椅子に座りながら
「えぇ。とても元気にしていますよ。そちらはお孫さんが生まれたんですよね?」
あたかも他愛のない話、くらいの感じでサラッと言ってみました。
すると奥さんの顔色がみるみるうちに変わるじゃないですか。
こんなの自分から何かある、と言っているようなものですよね。
「ど、どこでそれを......」
「いえ、少し小耳に挟んだだけですよ。お祝いを言えなくてすみませんね」
まだ録音機のボタンを押していないので、ここら辺で一旦止めておきましょうか。
この状況でそんなことを考えられるなんて、なんだか自分でも驚くくらい落ち着けていますね。
「い、いいんです。そんなの......」
奥さんの方は思いっきり動揺していますけど......。
「どうしましたか?顔色が凄く悪いみたいですが......?」
「な、なんでもありません!それより、取り引きのことってどういうことですか...っ?」
あれ?今日は奥さんの方が話を仕切るんですね。
いつもはババリーさんに全部任せているのに珍しいです。
まぁ、そんなのは関係ありませんね。
だって今から言うことは変わりないんですから。
「あ、そうですね。では先にそちらを話しましょう」
ニッコリと笑ってそう言ったあと、1度深呼吸をします。
この間に録音機のボタンはしっかりと押しましたよ。
そして
「ダルジェーン商会はババリー工具店との取り引きから手を引こうと思っているんです」
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