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12話 リオルside
しおりを挟むカノンが客室から出て行ってすぐ
「なんで俺が庇ってやったのに何も言わなかった!」
父上に怒鳴られた。
「だ、だって...あの状況じゃ俺が何を言っても......」
俺が何を言っても聞いてくれないだろ?
だから黙っていただけだ。
すると父上は大きなため息をついて
「はぁ......お前なぁ。たった一言でも謝ったか?」
「それは......」
.........謝っていない。
ただ一言、ごめん、って言えば少しは俺の話すことを聞いてくれたのか?
「だからあの時謝って終わろう、って話を出してやったのにお前は黙ったまま!あそこが1番謝るタイミングだっただろ!」
そんなこと言っても......タイミング?そんなの知るわけがないだろ。
「お前のせいで、ダルジェーン商会との繋がりがなくなってしまった!お前のせいだ!」
父上はそう言うと、乱暴に扉を開けて客室から出て行ってしまった。
部屋に残されたのは、俺と母上の2人だけだ。
何を話したらいい?
いや、話すことなんて.........
そう思っていると
「......本当はなぜそんなことしたの?」
母上は今まで聞いたことがないくらい低い声でそう聞いてきた。
「......相手側の誘惑に負けて...でもまさか妊娠するなんて思わなかったんだっ!」
あっちが先に誘惑してきたんだ...っ!
俺だって最初は拒んださ!
でも、あんなに何回も何回も、偶然のように家の途中で待ち伏せされて、毎回誘惑されたら男だったら我慢出来ないだろ!?
母上は俺の言葉に大きくため息をついて
「貴方は自分の立場をわかってる?婿養子に入ったのよ?」
立場。
カノンの家に入婿として入ったんだから、多少は気を使って過ごさなきゃいけないことは理解していた。
「.........わかってるつもりだった」
「はぁ......まさかリオルがこんなことをする子だと思わなかったわ」
母上はそう言うと、客室から出て行ってしまった。
まるで俺に話すことはもうない、と拒否られたような感じだった。
次の日、職場に行って謝ろうとしたのに、カノンはもう俺をいなかったこととして過ごしていた。
追い出されるように職場を出て、向かった先は
「リオルさぁ~ん!」
「ミア......」
もちろん『ミア』の家だ。
兄上にも今回のことは話が伝わってしまったから、今の俺の居場所は実家ですらなくなってしまった。
朝起きると兄上に批判され、逃げるように向かった職場にも拒否られ。
もう俺の居場所はここにしかない。
「どうしたんですかぁ?なんだか顔色も悪いですよ?」
「い、いや...なんでもない」
ミアには離婚の話はまだするつもりはない。
だって、ミアの家よりカノンの方が商会も大きいし、子供も2人いるからな。
絶対カノンの方がいいに決まっている。
「そうだ!急に1週間くらい泊まらせて欲しいなんて、奥さんはいいんですか?」
「あ、あぁ。友達の家に泊まるって言ってあるから」
「そっかぁ.........」
そう言って、悲しそうな顔をするミアを見ていると、離婚することを話してしまいそうになる。
でもそれをぐっと堪えて
「離婚するのは難しそうなんだ、ごめんな」
自分にも言い聞かせるようにそう言うと
「良いんですよ~。妻子持ちを好きになった私が悪いんですから」
ミアはそう言って微笑んだ。
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