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8話
しおりを挟む「いい加減にしなさい!」
そう叫んだのは今まで黙って俯いていたお母さんでした。
普段は声を荒らげることなんてないので、リオルもビックリしています。
「あ、あの......お義母さん.........」
リオルが何とか絞り出した声も
「貴方にそう呼ばれたくないわ!」
というお母さんの声で掻き消されてしまいました。
実は、今回の件を誰よりも1番怒っているのはお母さんなんです。
浮気までならなんとか更生させよう、で終わるけど、子供までいるとなると話が違う、とのことで......。
確かにその通りですよね。
お母さんはリオルをギロりと睨みつけると
「自分の過ちを認めるどころか、ひたすら嘘と言い訳の積み重ね......いい大人がなんて見苦しいのかしら!」
そう言いました。
私が思っていたことです。
素直に謝ればここまで激怒することはなかったでしょうけど、リオルは往生際が悪すぎます。
「それは......っ」
「もう言い訳なんて聞き飽きたわよ!」
お母さんが私の思っていたことを全部言ってくれたので
「私達は離婚、貴方の両親にはこの事を全て話すから」
とだけ言って、ひとまず部屋から出ようとしました。
ですが
「ま、待ってくれ......!」
「まだ何かあるの?」
「俺は離婚したくない......」
「はぁ?」
意味がわかりません。
自分でも離婚を望んでいるようなことを言っていたじゃないですか。
「本当はリリアだって離婚しなくていいと言ってくれてるんだ。たまに会うだけでいいから、って......!」
「訳わかんない。自分で早く片付けるから、とか言ってたくせに」
私の足に縋ってくるリオルを冷たく見下ろしながらそう言うと
「それは......子供の前だから仕方なく......っ!」
「へぇー?まぁ、私には関係ないわ」
えぇ、本当にもう関係ありません。
明日リオルの家に報告だけして、すぐに帰って......後は家の中にあるリオルの物を持って行ってもらいましょう。
我が家から業者に頼む必要はありませんよね。
リオルが自分で手配すればいいです。
それから、子供達には上手くリオルが居なくなることを説明しないといけませんね。
今はまだなんのことかわからないと思うので、なんて言ったらいいでしょうか?
私の頭の中はリオルと離婚した後のことしか考えていませんでした。
1つ嫌になると、全てが嫌になるのって本当なんですね。
リオルを見ても、良いところなんてひとつも思い出すことが出来ません。
するとリオルは
「ほ、ほら!子供達だって俺がいないと寂しがるだろう!?」
確かにそうかもしれませんね。
ただ、それは最初のうちだけです。
お父さんもお母さんも、商会の従業員もいますし、すぐに慣れますよ。
逆に、別れるのなら早いうちにそうした方が絶対良いです。
なので
「そのリリアとかいう人の娘さんの方が寂しがってるんじゃない?」
私がそう言うと
「そんな......」
リオルは膝から崩れ落ちてしまいました。
やっと諦めたんですかね?
はぁ......面倒くさかったです。
「はぁ......明日リオルの両親にも説明しに行くからな。それまでに自分がやったことをもう一度考えてみろ」
とお父さんが締めてくれたのでその場はお開きになりました。
明日からが本番、みたいなものですよね。
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