旦那様、離婚しましょう

榎夜

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マノンside 4

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ある日、仕事が終わってからリリーのところに向かっている途中、学園時代の友人と偶然再開した。

「マノン、久しぶりだな」

「あぁ、お前は今結婚したのか?」

なぜ聞いたのかって?コイツも一時期リリーの取り巻きで婚約が決まってから離れていった1人だからだ。

「勿論!お前は公爵家に入婿したんだろ?シエラさんは美人で優しくて羨ましいよ」

まぁ、俺は嫁一筋だけどな!と言って笑っている友人を見て、俺は何をやっているんだろう、と思った。

その場を逃げるように立ち去ろうとすると、そういえば、と呼び止められてしまった。

「なんだよ」

「噂で聞いたけどさ、お前はまだリリーと関係続けてんだろ?あんなクソビッチにお熱をあげてシエラ様を放置してるって社交界で笑われてるぞ」

...は?

噂になってるだと?

リリーと外で会う時はなるべく人気が少ないところで会うようにしているし、そうじゃない時はリリーの家に行ってる。

貴族の誰にも見られないようになるべく注意を払って行動していたつもりだ。

それなのになぜ......

俺が唖然としていると、その様子じゃ知らなかったみたいだな、と笑われてしまった。

「こんなことじゃ、いつシエラ様から離婚されてもおかしくないな」

と言って友人は立ち去ってしまった。

その後、リリーと会っても友人の言葉が頭から離れなかった。

シエラが俺と離婚したいなんて思うわけがない。

だってシエラは俺の事を愛しているから......

そう思っても不安は消えなかった。




次の日、仕事が早く終わったから久しぶりにシエラと直接話をしようと公爵家に向かった。

シエラは噂を知っているのか確認しなければ、そう思ったからだ。

家に着いてすぐ、メイドにシエラの場所を聞くと自室にいるとのことだった。

何故かすれ違う従者達が全員睨みつけてくるが、今更どの面下げて来ているんだ、と思っているんだろう。

自分がしてきたことだから仕方ない、そう思いながら急いでシエラの部屋に向かった。


扉を開けると、シエラの部屋から物が無くなっていた。

大きな家具などはそのままだが、服やアクセサリーなどをまとめた物が1箇所にまとめられていた。

「......マノン様、お久しぶりですね」

と言って微笑んだシエラは何かスッキリした顔をしていて、今まで抱えていたものが無くなったような、そんな感じだった。

それで俺は悟った。

シエラに捨てられるんだ、と。

でも認めたくなくて、何とか声を絞り出して荷物はどうしたんだ、と尋ねた。

古いものを処分しようとまとめただけ。

その答えを待ったが、返ってきた答えは全く違うものだった。

「...あ、そうそう、リリーさんが懐妊なさったようですね。おめでとうございます」

そう言って微笑んだが、シエラの目は全く笑っていなかった。
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