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マノンside 3
しおりを挟むこうしてリリーが愛人になることを了承した俺は、リリーと別れてから酷く後悔した。
シエラを幸せにするって決めたじゃないか
大体入婿が愛人なんて持てるわけがないだろう?
リリーは俺以外にも男がいるんだから.........
そう思っても1度了承したことを覆すわけにはいかない。シエラと結婚するまで、と自分に言い訳をして次の日も、また次の日もリリーと会った。
そしてシエラとの結婚式が行われた。
前日に別れを言おうと思っていたのに、いざとなると言えなかった。
結婚式の最中、知らない男がこっそりと紙を渡してきた。
『今日の22時、いつものところで。来るまで待ってる』
そう書いてあった。
差出人は書いてないけどリリーだと何となくわかった。
今日はシエラと待ちに待った初夜を迎えるはずだった。
それなのに俺は、リリーを優先させた。
そして、リリーに欲望を吐き出してから、また後悔に襲われた。
それからというもの、リリーとの関係はズルズル続いていて、シエラの仕事を手伝って、終わり次第リリーの所へ行く。そんな日々が続いた。
どこで手伝っているのかって?
俺は基本的に外交の仕事を手伝っていたから、家で事務作業というより、色んな場所で直接話をしてくる方が多かった。
今思うと、シエラはリリーとの関係に気付いていて、あえて外の仕事ばかり頼んでいたんじゃないか、と思う。
でも、そのときの俺は気付けなかった。
当時の俺の中の殆どはリリーが基本になっていて、少しの仕事しか頼んでこないし、完璧なシエラに俺は必要ないんじゃないか、としか思っていなかった。
それとは真逆にリリーは俺にお願い事を沢山してくれた。
ドレスが欲しい、宝石が欲しい、高級料理を食べたい......あげたらキリがない。
冷静になって考えると、リリーは俺の事を金蔓としか思っていなかった。
でも当時はそのお願い事を叶えてあげたくて、仕事をして貰っていたお金も全てリリーに使った。
自分で買いたい物は何も買えなかったし、1人で外食することすら厳しいくらいお金を搾り取られた。
でも断れなかった。
断ったらリリーに嫌われてしまう、そう思っていたから。
最初は嬉しかったリリーのお願い事も、日が経つにつれて酷くなっていった。
俺の愛人なんだから公爵家に住まわせろ
当主なんだからシエラなんか追い出して欲しい
挙句の果てには、シエラを殺して自分と結婚しろ、なんて言い出したこともあった。
本当は入婿は愛人なんて持てないこと
自分は当主じゃないこと
シエラを殺してもリリーと結婚できないこと
全てわかっていた。
それなのに俺は否定しないで、ただただ笑って誤魔化した。
この頃、俺が公爵家に帰らなくなって半年近く経っていた。
2ヶ月前くらいに仕事のことで家の中に入ったが、荷物や仕事道具を持ってすぐに家を出たからシエラは気づいてないだろう。
だから、シエラとは文面でしか話していない。
その内容も仕事のことだけ。
最初のうちは、どこにいるのか、とか、帰ってきて欲しい、と書かれていたけど今は全く無くなってしまった。
愛想尽かされたんだろうな...そう思いながら眠りについた。
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