旦那様、離婚しましょう

榎夜

文字の大きさ
上 下
12 / 19

マノンside 3

しおりを挟む

こうしてリリーが愛人になることを了承した俺は、リリーと別れてから酷く後悔した。

シエラを幸せにするって決めたじゃないか

大体入婿が愛人なんて持てるわけがないだろう?

リリーは俺以外にも男がいるんだから.........

そう思っても1度了承したことを覆すわけにはいかない。シエラと結婚するまで、と自分に言い訳をして次の日も、また次の日もリリーと会った。


そしてシエラとの結婚式が行われた。

前日に別れを言おうと思っていたのに、いざとなると言えなかった。

結婚式の最中、知らない男がこっそりと紙を渡してきた。

『今日の22時、いつものところで。来るまで待ってる』

そう書いてあった。

差出人は書いてないけどリリーだと何となくわかった。

今日はシエラと待ちに待った初夜を迎えるはずだった。


それなのに俺は、リリーを優先させた。

そして、リリーに欲望を吐き出してから、また後悔に襲われた。





それからというもの、リリーとの関係はズルズル続いていて、シエラの仕事を手伝って、終わり次第リリーの所へ行く。そんな日々が続いた。

どこで手伝っているのかって?

俺は基本的に外交の仕事を手伝っていたから、家で事務作業というより、色んな場所で直接話をしてくる方が多かった。

今思うと、シエラはリリーとの関係に気付いていて、外の仕事ばかり頼んでいたんじゃないか、と思う。

でも、そのときの俺は気付けなかった。

当時の俺の中の殆どはリリーが基本になっていて、少しの仕事しか頼んでこないし、完璧なシエラに俺は必要ないんじゃないか、としか思っていなかった。


それとは真逆にリリーは俺にお願い事を沢山してくれた。

ドレスが欲しい、宝石が欲しい、高級料理を食べたい......あげたらキリがない。

冷静になって考えると、リリーは俺の事を金蔓としか思っていなかった。

でも当時はそのお願い事を叶えてあげたくて、仕事をして貰っていたお金も全てリリーに使った。

自分で買いたい物は何も買えなかったし、1人で外食することすら厳しいくらいお金を搾り取られた。

でも断れなかった。

断ったらリリーに嫌われてしまう、そう思っていたから。






最初は嬉しかったリリーのお願い事も、日が経つにつれて酷くなっていった。

俺の愛人なんだから公爵家に住まわせろ

当主なんだからシエラなんか追い出して欲しい

挙句の果てには、シエラを殺して自分と結婚しろ、なんて言い出したこともあった。


本当は入婿は愛人なんて持てないこと

自分は当主じゃないこと

シエラを殺してもリリーと結婚できないこと

全てわかっていた。

それなのに俺は否定しないで、ただただ笑って誤魔化した。



この頃、俺が公爵家に帰らなくなって半年近く経っていた。

2ヶ月前くらいに仕事のことで家の中に入ったが、荷物や仕事道具を持ってすぐに家を出たからシエラは気づいてないだろう。

だから、シエラとは文面でしか話していない。

その内容も仕事のことだけ。

最初のうちは、どこにいるのか、とか、帰ってきて欲しい、と書かれていたけど今は全く無くなってしまった。

愛想尽かされたんだろうな...そう思いながら眠りについた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください

迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。 アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。 断るに断れない状況での婚姻の申し込み。 仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。 優しい人。 貞節と名高い人。 一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。 細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。 私も愛しております。 そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。 「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」 そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。 優しかったアナタは幻ですか? どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。

【完結】新婚生活初日から、旦那の幼馴染も同居するってどういうことですか?

よどら文鳥
恋愛
 デザイナーのシェリル=アルブライデと、婚約相手のガルカ=デーギスの結婚式が無事に終わった。  予め購入していた新居に向かうと、そこにはガルカの幼馴染レムが待っていた。 「シェリル、レムと仲良くしてやってくれ。今日からこの家に一緒に住むんだから」 「え!? どういうことです!? 使用人としてレムさんを雇うということですか?」  シェリルは何も事情を聞かされていなかった。 「いや、特にそう堅苦しく縛らなくても良いだろう。自主的な行動ができるし俺の幼馴染だし」  どちらにしても、新居に使用人を雇う予定でいた。シェリルは旦那の知り合いなら仕方ないかと諦めるしかなかった。 「……わかりました。よろしくお願いしますね、レムさん」 「はーい」  同居生活が始まって割とすぐに、ガルカとレムの関係はただの幼馴染というわけではないことに気がつく。  シェリルは離婚も視野に入れたいが、できない理由があった。  だが、周りの協力があって状況が大きく変わっていくのだった。

〖完結〗もうあなたを愛する事はありません。

藍川みいな
恋愛
愛していた旦那様が、妹と口付けをしていました…。 「……旦那様、何をしているのですか?」 その光景を見ている事が出来ず、部屋の中へと入り問いかけていた。 そして妹は、 「あら、お姉様は何か勘違いをなさってますよ? 私とは口づけしかしていません。お義兄様は他の方とはもっと凄いことをなさっています。」と… 旦那様には愛人がいて、その愛人には子供が出来たようです。しかも、旦那様は愛人の子を私達2人の子として育てようとおっしゃいました。 信じていた旦那様に裏切られ、もう旦那様を信じる事が出来なくなった私は、離縁を決意し、実家に帰ります。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全8話で完結になります。

【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。

美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯? 

酷いことをしたのはあなたの方です

風見ゆうみ
恋愛
※「謝られたって、私は高みの見物しかしませんよ?」の続編です。 あれから約1年後、私、エアリス・ノラベルはエドワード・カイジス公爵の婚約者となり、結婚も控え、幸せな生活を送っていた。 ある日、親友のビアラから、ロンバートが出所したこと、オルザベート達が軟禁していた家から引っ越す事になったという話を聞く。 聞いた時には深く考えていなかった私だったけれど、オルザベートが私を諦めていないことを思い知らされる事になる。 ※細かい設定が気になられる方は前作をお読みいただいた方が良いかと思われます。 ※恋愛ものですので甘い展開もありますが、サスペンス色も多いのでご注意下さい。ざまぁも必要以上に過激ではありません。 ※史実とは関係ない、独特の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。魔法が存在する世界です。

【完結】私を裏切った最愛の婚約者の幸せを願って身を引く事にしました。

Rohdea
恋愛
和平の為に、長年争いを繰り返していた国の王子と愛のない政略結婚する事になった王女シャロン。 休戦中とはいえ、かつて敵国同士だった王子と王女。 てっきり酷い扱いを受けるとばかり思っていたのに婚約者となった王子、エミリオは予想とは違いシャロンを温かく迎えてくれた。 互いを大切に想いどんどん仲を深めていく二人。 仲睦まじい二人の様子に誰もがこのまま、平和が訪れると信じていた。 しかし、そんなシャロンに待っていたのは祖国の裏切りと、愛する婚約者、エミリオの裏切りだった─── ※初投稿作『私を裏切った前世の婚約者と再会しました。』 の、主人公達の前世の物語となります。 こちらの話の中で語られていた二人の前世を掘り下げた話となります。 ❋注意❋ 二人の迎える結末に変更はありません。ご了承ください。

ただ誰かにとって必要な存在になりたかった

風見ゆうみ
恋愛
19歳になった伯爵令嬢の私、ラノア・ナンルーは同じく伯爵家の当主ビューホ・トライトと結婚した。 その日の夜、ビューホ様はこう言った。 「俺には小さい頃から思い合っている平民のフィナという人がいる。俺とフィナの間に君が入る隙はない。彼女の事は母上も気に入っているんだ。だから君はお飾りの妻だ。特に何もしなくていい。それから、フィナを君の侍女にするから」 家族に疎まれて育った私には、酷い仕打ちを受けるのは当たり前になりすぎていて、どう反応する事が正しいのかわからなかった。 結婚した初日から私は自分が望んでいた様な妻ではなく、お飾りの妻になった。 お飾りの妻でいい。 私を必要としてくれるなら…。 一度はそう思った私だったけれど、とあるきっかけで、公爵令息と知り合う事になり、状況は一変! こんな人に必要とされても意味がないと感じた私は離縁を決意する。 ※「ただ誰かに必要とされたかった」から、タイトルを変更致しました。 ※クズが多いです。 ※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。 ※独特の世界観です。 ※中世〜近世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

モラハラ王子の真実を知った時

こことっと
恋愛
私……レーネが事故で両親を亡くしたのは8歳の頃。 父母と仲良しだった国王夫婦は、私を娘として迎えると約束し、そして息子マルクル王太子殿下の妻としてくださいました。 王宮に出入りする多くの方々が愛情を与えて下さいます。 王宮に出入りする多くの幸せを与えて下さいます。 いえ……幸せでした。 王太子マルクル様はこうおっしゃったのです。 「実は、何時までも幼稚で愚かな子供のままの貴方は正室に相応しくないと、側室にするべきではないかと言う話があがっているのです。 理解……できますよね?」

処理中です...