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マノンside 2
しおりを挟むそれから1週間後
まだリリーに振られた傷が癒えていない中での顔合わせだった。
正直、もう誰が婚約者だとかどうでもよかった。
そんな思いで父上と一緒に客室で待機していると、扉をノックする音が聞こえた。
そして入ってきた人を見て、俺は驚いた。
銀色の髪の毛はサラサラで光が当たるとキラキラと輝いていて、青い瞳は透き通ってとても綺麗な色をした。
可愛らしいリリーとは真逆な、美しい令嬢だった。
俺が挨拶をすると、令嬢は優しく微笑んだ。
その微笑みは女神のように綺麗で、見ていた父上でさえ息を飲むほどだった。
しかも話をしてみると、領民のこと、両親のことを話す時の顔がとても優しくて、見ていて心が洗われていくような気分だった。
この人なら良い関係を築ける、そう思った。
それがシエラとの出会いだった。
それから、俺はシエラと婚約を結ぶことになった。
話をすればする程、優しくてみんなに好かれていることに気が付いた。
学園での評判も良くて、それでいて美人。
正直、俺には勿体ないくらいの中に素晴らしい人だと思った。
何も問題なく、準備が進みシエラとの結婚まであと5日となった。
もう式の準備は終わっているし、招待客の名簿もしっかり覚えた。
そんなとき、シエラに何かプレゼントしたいと思った俺は久しぶりに下町に向かった。
リリーの取り巻きだったときは結構な頻度で行っていたが、シエラとの婚約者になってからは初めてだった。
でも、そのせいでこんなことになるなんて思わなかった。
シエラに似合いそうなネックレスを探そうと歩き始めると、前から懐かしい声が聞こえてきた。
その声の主はリリーだった。
前と変わらず男と一緒に腕を組んでいたが、俺を見て焦ったようにそれを外して一緒にいた男をどこかに追いやった。
そして、
「マノン様!会いたかったですぅ~!」
と猫なで声を出しながら俺の腕に自分の腕を絡めてきたが、俺はそれを無かったかのように外して、なんのようだ?と睨みつけた。
まさかそんなことをされるとは思っていなかったのか、え?と小さい声が聞こえたが、すぐに
「なんのようって...酷いです......私がマノン様からのプロポーズを断ってから全く会いに来てくれなくなったし......」
そのときは、わざとらしく目を伏せるリリーを、昔はこれが可愛いと思っていたんだな、と冷静に眺めていると
「でも離れてみてわかったの!やっぱりマノン様が1番だって!プロポーズ、やっぱり受けたいなぁって思って...!」
昔好きだった令嬢らしからぬ笑顔でそう言われると、心の奥にしまい込んだと思っていたリリーへの思いが溢れ出てきそうになった。
「で、でも、俺は結婚するんだ。シエラを大切にするって決めたんだ」
と残っていた理性でそう言うと、リリーは悲しい顔をしてこう言った。
「じゃあ2番目でいいの。結婚して欲しいとは言わないから、せめて愛人として傍に居させて」
昔愛した人にそう言われて、俺は断れなかった。
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