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7話
しおりを挟むリリーは今座ったばかりのソファーから立ち上がって
「な、何言ってんのよ!お腹の子はマノン様の子よ!」
と明らかに狼狽えながらそう言った。
リリーはマノン以外は皆不信な目を向けているのに気付いたのか顔を歪めた後
「なんなのよ!自分がマノン様との子供が出来ないからってバカみたいなこと言わないでよ!」
とヒステリックに叫んだ。
チラッとマノンの方を見ると何故か私に期待しているような目を向けていた。
そうなのか?と言いたそうな目だ。
勿論、そんなことは一切ない。
というか、1度も寝床を共にした事がないのに子供なんてできる訳が無いでしょ?
私は、はぁ...と溜息をつきながら
「私が言いたいのは、お腹の子供がマノン様の子供だと断言出来るのか、ということですわ」
と言うとリリーはあからさまに戸惑っていたが、すぐに、なんのことよ、と視線を逸らした。
一方、マノンはなんの事かわからない、という感じでキョトンとしていて、マージェン夫妻は怒りで肩を震わせている。
「騎士団長の息子...確かロルフさん、でしたっけ?他にもアバズレー家の執事、商人の息子さん...あぁ、ここにいる間に我が家の庭師にも言いよっていたみたいですね?妊婦が何をしていますの?」
ふふ、と笑いながら言うとリリーは顔を真っ赤にして肩を小刻みに震わせていた。
その横にいるマノンは、どういうことだ!とリリーに聞いている。
どういうことも何も、こんなことをしているから娼婦とか言われるんですよ。
まさか我が家の庭師にまで手を出そうとするなんて...流石にブチ切れるところでしたわ。
マノン様は、ただの入婿の分際で勝手に当主になったと周りに言ってるらしいし...バカじゃないんですか?
あ、ちなみにそれを信じてる人なんて極わずかですよ。常識の知らない人だけです。
まぁ、リリーさんは頭が弱い人ですから、その嘘を信じて誑かした男の中で最も地位が高いマノン様を選んだんでしょうけど。
私が頭の中でそう考えていると、いつの間にか周りが静かになっていて、全員が私のことを見ていた。
なぜ?と首を傾げていると
「シエラ...また口に出ていたぞ」
とお父様に言われた。
隣のお母様は苦笑しながら頷いていたから本当なのだろう。
あらまぁ、またやってしまったのね。
「少しお口が滑りましたわ」
と私が微笑むと、それが合図かのようにマージェン元伯爵とリリーはマノンに、マノンはリリーにギャーギャー言い合いを始めた。
「マノン!貴様はそんな嘘をついて、これからどうするつもりだ!」
「マノン様!当主じゃないって話が違うじゃない!」
「リリー!お前は俺以外にも男を誑かしていたんだな!この、淫乱女!」
皆が一斉に喋りだしてしまったので、何を言っているのか聞き取れなくなっている。
というか、同時に話すとかバカなんですかね?
横を見るとお父様とお母様も呆れた顔をしていた。
怒鳴り合うのは家に帰ってからやって欲しいと思い、その場を収めようとすると
「いい加減にしなさい!!」
という声が響き渡った。
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