旦那様、離婚しましょう

榎夜

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2話

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自室の荷物をまとめ終わった頃にマノンが2ヶ月ぶりくらいに帰宅したとの連絡があった。

散々リリーの家に入り浸っておきながら、今更なぜ帰ってきたんでしょう?

と私が首を傾げていると急にバンっと乱暴に扉が開かれた。

「シエラ...っ!」

扉を開いた人は勿論マノンだった。

急いで帰ってきたのだろう。せっかく顔だけは良いのに台無しになっている。

青いサラサラな髪の毛は汗で額に張り付いていて、あんなに澄んでいたオレンジ色の目は焦りなのか、怒りなのか...濁ってしまっている。


「...マノン様。お久しぶりですね」

そう言って微笑むとマノンは何とも言えない複雑な表情を浮かべた。

なぜ、そんな顔をしているんでしょう?邪魔者が消えるのだからもっと喜んだらいいのに...。

するとマノンは少し掠れた声で

「この部屋の荷物はどうしたんだ...?」

と聞いてきた。

なぜ教えなければならないんだ。いや、正直に私の物をリリーさんが盗まないように隠しましたよ、なんて言ってみる?

言ったところで怒るんだろうなぁ...。

マノンは黙っている私を見てイライラし始めたのか

「早く教えろ!」

と目をつりあげて叫んだ。

「......あ、そうそう、リリーさんが懐妊なさったようですね。おめでとうございます」

「は...?今はそんなこと関係ないだろ!?」

「わざわざ教えに来てくれましたのよ?良かったですね。愛しのリリーさんが貴方のものになりましたよ」

色んな方々の相手をしてましたもの、と言うと顔を真っ赤にして肩を震わせて

「お前には関係ないだろ!」

とだけ言って逃げるように部屋を出ていった。

全く...何しに来たんでしょう?
荷物の場所を聞くなんて、リリーさんだけではなくマノン様も私の物を盗もうとしていたのかしら?


私がため息をついていると今度はメイリスが部屋に入ってきた。

「お嬢様!全部隠してきました!」

と荷物を隠し終えたことを教えてくれたので、私はとりあえずお父様達が隠居されているお屋敷に向かうことを伝えると

「わかりました!では私もついて行きますよ!」

メイリスは鼻息を少し荒くしながらお嬢様一人では行かせません!と言っていた。

いや、元々一人で行くつもりはなかったし、執事のノアも連れていくし護衛も連れていくつもりなんだけど...。

メイリスにそれを伝える前に準備してきます!と部屋を出ていってしまった。

こんなことになっているのに、いつも通りのメイリスを見ると自然と笑顔になってしまう。



「とりあえず、皆に事情を話して一旦マノン様の言うことを聞いてあげるように頼んでおかなきゃ」

そう思った私は従者達、一人一人に事情を説明してまわった。

すると、理由を聞いた時は全員が激怒していたが、その後の作戦を説明すると皆悪い笑みで、いってらっしゃいませ!と送り出してくれた。


とりあえず、あの二人は一時の幸せに油断していればいいんだ。と皆と同様に悪い笑みを浮かべて私はお父様と元へと向かった。
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