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1話
しおりを挟む「ねぇ、マノン様の奥様。私妊娠したの」
そう言ったのは娼婦のように胸元が広く空いていていやらしい笑みを浮かべる、私の旦那の浮気相手であるリリー・アバズレー男爵令嬢だ。
赤いクセのある髪の毛に黄色いつり目をしていて、胸はあまり大きい方ではないのに何故か毎日、体を強調するドレスを着ている。
まぁ...正直、気が強そうな顔立ちをしているな、という印象だ。
「ちょっと!なんか言いなさいよ!!」
ジロジロとリリーを見ていると何も言わないのに痺れを切らしたのか、怒鳴られてしまった。
私は溜息をつきたくなるのを堪えて
「おめでとうございますわ」
そう言ってニッコリ微笑むと、お祝いの言葉を言われるのは想定外だったのだろう。
え?と間抜けな声を出していた。
でも戸惑ったのはそれは一瞬で、すぐに顔をキッと引き締めて
「そうやって強がるのも今のうちなんだから!ここに、今日から私が住むんだから早く出ていきなさいよね!」
と言われた。
「...構いませんが......マノン様には伝えてあるのですか?」
「伝えなくても、愛しの私が住むのよ!いいって言うに決まってんじゃない!」
私が困っているふりをして首を傾げるとリリーは鼻息を荒くしながら馬鹿みたいなことを言い出した。
.........まぁ、いいですわ。
あの人と離婚することが出来るのでしたら喜んで住ませてあげましょう。
そう思って、自分の荷物を片付けてくる、とその場を後にした。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
遅くなりましたが自己紹介をさせてくださいませ。
私の名前はシエラ・ハーヴェストと申しますわ。
お母様譲りの銀色の髪の毛に青色の目が特徴です。
私は社交界の華と呼ばれた昔のお母様にそっくりならしくて、自分でもそこそこ顔はいい方だと思ってますわ。
とある小説の中では私と全く同じ名前の人が聖女だの祈りだので持て囃されていますが、その人とは全く別の人ですわよ。
この世界には魔法とか魔物とか全く居ませんので......。
さて、話が逸れてしまいましたわね。
私は2年前に結婚をした相手がいるんですが、初夜の日になんて言ったと思います?
「私には愛する人がいる」
ですって!
だったら結婚するなっていう話ですよね!
まぁ、そんな男に私の乙女を汚されないだけ良かったのですが、流石にそろそろ限界かしら?と思っていた時に懐妊の知らせですわ。
お義父さまとお義母さまは素敵な人ですのに、なんであのような子供が出来るのか不思議で仕方ありませんわよね。
なので、そろそろ旦那のことを捨てようと思うのです。
良いですわよね?
だって、旦那としての義理も果たさずにひたすら浮気相手と遊んでいるんですもの。
もう味方なんてする意味もありませんわ。
私は幼い時から私の専属メイドをしてくれているメイリスを呼んで
「メイリス、私はお父様達のところに向かうわ。荷物を全て持っていくと多すぎてしまうから、どこかに隠しておきたいんだけど......」
と尋ねた。
すると、うーん...と少しだけ悩んでから
「でしたら、私の部屋にでも置きますか?お嬢様の部屋には入るかもしれませんが、使用人の部屋なんて物色しないでしょう」
そんなことをしたら、ただの強盗と変わらないですし、と笑いながら提案してくれた。
「うふふ、良い提案ね。じゃあ、お願いできるかしら?」
ふわっと微笑みながらお願いすると勿論です!とメイリスは荷物をまとめだした。
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