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33話 魔族
しおりを挟む「なによ!なによ、なによ!!」
リリーは頭を振り乱しながら、急に甲高い声で発狂しだした。
「私は悪くない!聖女とか知らないしっ!修道院なんて入んない!!」
目を血走らせ叫ぶリリーはあの可愛かった面影が全く無くなっていた。
待機していた兵士達がリリーを押さえつけようと駆け寄るが何かによって弾き飛ばされてしまい、近付けない。
「あぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
リリーが叫んだと思ったら窓ガラスが全部弾け飛んだ。
「り、リリー!落ち着くんだ!!」
とマノンがビビりながらも必死に声をかけるがそれがダメだった。
「うるさい!うるさいうるさいうるさいうるさい!!あんたが!あんたのせいよ!」
リリーの体から溢れ出したオーラがどんどん膨れ上がり、割れた窓から外へと流れ出ていく。
「あ、アバズリー男爵令嬢を捉えよ!」
という陛下の声も色んなところから聞こえてくる悲鳴にかき消されて誰にも届かなかった。
その間に、黒いオーラは王都全体を真っ黒に染め上げ、まだ昼間だというのに夜のように暗くなっていた。
その様子を見ていたフォストは
「これは......」
と驚いたように呟いたのを私は聞き逃さなかった。
「フォスト様、何か知っているんですか!?」
と私が尋ねるとフォストは顔をしかめながら
「.........見たことは無いが、聞いたことがある」
そう前置きをして静かに語ってくれた。
「そこの令嬢は、魔族に侵されているかもしれない」
フォストの話によると、
遠い昔、家族から虐待され、婚約者を妹に奪われた令嬢がいた。
その令嬢は、両親を、妹を、婚約者を、その両親を憎み、復讐することを誓った。
だがその憎しみが、あまりにも強すぎた。
恨み、憎しみを好んだ魔族がその令嬢にとりつき、復讐を果たしたが、それは復讐というより虐殺と言った方が正しかったと言われているらしい。
それは、家族や婚約者達に収まらず国全体の人が被害にあったとか。
最終的にその国からは人が消え、滅びてしまった。
そして、その虐殺が行われた時の街は............今のように真っ暗だったらしい。
フォストは説明が終わると、さて、と話を区切ってからこう続けた。
「これはあくまでも予想でしかないが、あの令嬢は牢屋に入れられていたんだろう?その間に色々考える時間があったんじゃないかな」
という言葉に私は、確かに...と思わず呟くとフォストは苦笑してから
「そして、考えている間に、シエラ嬢達に対する恨み、又は憎しみが強くなっていき、魔族がとりついた......という感じだろう」
そう言われてリリーを見ると、なんだか少し苦しんでいるように見えた。
「フォスト様、どうにかして止める方法はありませんか?」
と尋ねるとフォストは、わからない、と首を振った。
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