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86話 アンナside
しおりを挟む今日もブレイド様との婚約の話がなかったわね。
そう思いながら馬車の中でため息をついた。
だって、私のような美人が結婚してあげるって言ってるのに、ブレイド様はただただニコニコしているだけ。
メイドに理不尽に怒鳴りつけても何も言ってこないのに、私が近くに座ろうとするとなぜか距離を取ろうとしてくる。
本当に意味が分からないわ。
でも、公爵夫人という立場はおいしいからこの婚約は確実に成立させないと!
だって公爵よ?
お金も沢山あるし、忙しいだろうから屋敷の中に男を連れ込んでも絶対にバレたりもしない。
今のまま行くと、家のことに関しても私に好き勝手やらせてくれそうだし、最高じゃない!
よしっ!そうと決まれば明後日会うときはもっと積極的にいかなきゃ!
そう思いながら鼻歌交じりで家までの帰路を楽しんだ。
ーーーーーーーーーーー
家に到着すると
「どういうことだ!」
と何やらお父様がメイド達を怒鳴りつけているのが玄関まで聞こえてきた。
一体何があったの?
っていうか、隣国までって意外と遠いから早く休みたいんだけど。
そう思いながらも、ここで声をかけないのはおかしいか、と思い、お父様の声のする方向に歩いていくと、そこには顔を真っ赤にして怒るお父様、その横には顔を真っ青にして一枚の紙を持って震えているお母様とお兄様が執務室にいた。
「どうしたの?」
と私が声をかけると、その声に気付いたお父様が
「おい!お前、公爵家の家に行ったとき、何か話したのか!?」
凄い形相をしながら私に詰め寄ってきた。
公爵家で何か、って..........
「え?何かって、そりゃあ他愛のない話くらいはしたわ」
そう言って肩をすくめた。
だって、何も話さない、なんてありえないでしょ?
まぁ、そうは言ってもブレイド様を褒めたりとか、自分のことは特に話さないで相手の情報を聞き出すことに徹底したけどね。
といっても、ブレイド様も警戒しているのか何なのかしらないけど、本当にしょうもない事しか教えてくれなかったけど。
そう思いながら荒れているお父様を見ると
「その時に我が家のことも話したんだろう!」
と言ってきたわ。
何?家のことですって?
私が男を誑かして、とかそういうことを言っているの!?
やってもいないことを私のせいにしようとしているお父様に
「何のこと!?流石にそんなことは言わないわよ!だってバレたら公爵夫人になれないじゃない!」
と言って、とりあえずお母様が持っている紙を見せてもらおうと距離を取ると、そんな私に対して
「ふんっ!お前は嘘つきだからな。それも、本当なのか信用出来ん」
そう言ってお父様は執務室から出ていってしまった。
お母様もお兄様も絶望したような顔をしてるし........何が起こっているの?
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