婚約破棄されましたが、お兄様がいるので大丈夫です

榎夜

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82話 ブレイドside

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アンナ嬢が帰った後、なぜか急に父上に呼び出された。

.....いや、なぜか、なんて言ったが本当は大体の見当は付いているんだけどな。

きっと、アンナ嬢と婚約することになってからの俺についてだろう。

あんなにも目に見えて疲れ切っているメイドに対して、特に労うこともなければ、まだ婚約すら結んでいないアンナ嬢に好き勝手やらせている、ということ。

父上からすれば面白くないに決まっているよな。

だが、アンナ嬢以外に俺の婚約者になってくれる、なんて物好きはいないんだから、多少のことは我慢しないと.......。

そんなことを考えながら色々言われることの覚悟を決め、執務室に向かった。

コンコン、とノックした後に中に入ると、執務室にはなぜか母上も一緒にいて、機嫌悪そうでもなく、なんだか面白そうな顔をしているようにも思える。

ただ、父上は難しそうな、険しい顔をしているが.........。

何かあったんだろうか?

そう思いながら促された椅子に座ると、机の上には数枚の紙が置かれていることに気付いた。

これは.....俺が読んでも良い、ということなのか?

そう思って、父上に

「えっと......これは?」

と尋ねると

「まぁ、とりあえず読んでみろ」

父上はそれだけ言うと、無言で他の仕事を始めてしまった。

これには何が書いてあるんだ?と思って助けを求めるように母上の方を見たが、母上もただただにこりと微笑むだけで何を考えているのか全く伝わってこない。

と、とりあえず読めばいい、ということだよな。

意を決して、机の上の書類に手を伸ばして一枚めくると、そこの一番上書かれていたのは【ビューリア伯爵家調査書】と書かれていた。

驚いて書類を読む前に顔を上げて、父上の顔をじっと見つめると

「婚約者に、と決める前に家のことを調べておくのは当然のことだろう?これはその結果だ」

そう言ってきた父上は、なんだか残念そうな、でもどこか納得したような、そんな顔をしていて、嫌な予感がした。

いや、その前に良い結果だったらわざわざ調査書を読ませるようなこともしないはずだ。

つまりは.....そういうことだよな。

そう思って調査書を読み進めていくと、もう真っ黒だった。

なんとなく、アンナ嬢と話をしていて男慣れしすぎている、とは思ったがまさかこんなことをしていたとは.......。

調査書を読み終わった俺は、父上に

「ということは、アンナ嬢との婚約は」

と呟くと

「白紙だな。この調査書は隣国の陛下にも送っているから、今頃処罰を言い渡されたところだろう」

という答えが返ってきた。

これには

「そうですか..........」

という返事しか出来なかったが、残念に思う気持ちよりも、なんだかホッとした気持ちの方が大きくて自分でも少し驚いてしまった。

アンナ嬢に優しくして、一緒にいればシャルへの気持ちが薄れるか、なんて思っていたが、そんなに簡単なことではないんだな。

でも、シャルにはもう他に婚約者が出来るし、シャルと婚約したい、という人は沢山いるんだ。

そう思いながら、父上に

「あの......俺の婚約はどうなるんですか?」

なるべく早くめに自分にも婚約者を、と思って尋ねると

「また探すしかあるまい。まぁ、我が家に婚約を申し込む物好きな令嬢が現れるのを待つしかないな」

そう言ってため息をついた。

......ということは、アンナ嬢以外に俺と婚約したい、と言ってくれるような令嬢はいない、ということか。

もういっそのこと、死ぬまで独身でいても........

そう思っていた時だった。

今まで黙っていた母上が、急に

「あら?ブレイドと婚約したい、という物好きな令嬢ならすぐに近くにいると思うんだけど?」

ニッコリと微笑みながらそう言ってきた。

物好きな令嬢が近くにいる?

一体どういうことなんだ?

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