婚約破棄されましたが、お兄様がいるので大丈夫です

榎夜

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80話

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私に言い返されて、顔を真っ赤にしているアンナ様ですが、お兄様は必死に

「ま、まぁ......確かにここに居ても意味なかったからね」

とアンナ様を庇っていますわ。

ヘタにアンナ様が怒って、この婚約が白紙になるのは避けたいんでしょうけど、もう意味ないですわよ。

まぁ、婚約は白紙、どころか元々なかったんですけど。

そう思いながら、2人を横目に温室を後にしました。

心のどこかでは、まだお兄様を慕う思いはあります。

ですが、なんでしょう?

私以外の女性に必死に媚びようとしているからでしょうか?

最近のお兄様は見ているだけで凄くイライラしますわ。

出来ることなら視界にも入って欲しくないほどに。

はぁ......アンナ様がここに来なくなったら変わるんですかね?

自分のことですが、私もどうなるのかわかりませんわ。





ーーーーーーーーーーー

自分の部屋に戻って、ゆったりとした時間を過ごしていると、急にコンコン、と私の部屋の扉をノックする音が聞こえてきました。

もう夕食の時間かしら?

と思って時計を見てみましたが、まだ早いですわね。

さっきの話の続きをしに、お母様が来たんでしょうか?

そう思いながら

「どうぞ?」

と返事をすると、まさかの

「急にごめん........」

と言いながら部屋の中に入ってきたのはお兄様でしたわ。

な、何の用事でしょう?

ま、まさか、私がさっき勝手にメイドを離れさせたことについての苦情?

もしそうだとしたら私はなんて言葉を返したらいいんでしょう.......!?

内心、まさかのお兄様の訪問に戸惑っていますが、それを悟られないように

「どうしましたの?お兄様が部屋に来るなんて珍しいですわね」

と平然を装って聞いてみましたわ。

すると

「い、いや......シャルにはアンナ嬢が来るようになってから負担ばかりかけていると思って........」

そう言ってきた時のお兄様は、なんだか本当に申し訳なさそうにしていますわ。

こんなお兄様、見たことがない、というほどです。

なので驚きましたが、ここで私が黙ってしまうとなんだか嫌な空気になってしまうので

「そう思うのでしたらお兄様も調子に乗らせないように、ハッキリと言うべきではありませんか?」

と言って苦笑しました。

今の私がお兄様に言える、精一杯の嫌味のようなものですわ。

そう思いながら、お兄様を見つめると

「そ、それはそうなんだけど.......アンナ嬢以外、婚約者となる人がいないかも、と考えるとあんまり強くもいけなくて」

と言ってお兄様も苦笑しています。

まぁ、そうだとは思っていましたがアンナ様以外婚約者になる人がいない、ですって?

あれだけ私がお兄様と結婚する、という話をしていたのにそんなことを言いますの?

.....お兄様の中では、私と結婚する、という選択肢は最初からなかった、ということですわよね。

そう思いと、なんだか悲しいような、寂しいような、そんな感情がこみ上げてきましたわ。

ですが、お兄様にその感情がバレるわけにはいかないので

「それで?話はそれだけですの?」

そう言って、もう話は終わり、と言わんばかりに背中を向けました。

だって、もう私も話すことはありませんもの。

ですがお兄様は

「さっき父上から伯爵家の調査結果を聞いてきた」

私が背中を向けているにも関わらず、そう話しかけてきました。

これには

「........そうですか」

としか返せませんでしたが、つまり伯爵家の悪事をすべて把握した、ということですわよね?

なんで、私にその話をしに来たんでしょう?

私が知らないと思っているんでしょうか?
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