婚約破棄されましたが、お兄様がいるので大丈夫です

榎夜

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76話

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私の言葉に、お父様は眉をひそめながら

「家の跡継ぎについてはブレイドだって最初から決まっていたじゃないか」

と言ってきましたわ。

これには、お父様の隣にいる執事も、お母様も頷いています。

えぇ、そうですわね。

私が幼いころからお兄様が後継ぎだ、って決まっていましたわ。

それは私もしっかりとわかっていますし、そのつもりで今までいましたわ。

ですが

「じゃあ、今のあのお兄様にこの家を継いでもらう、と言うんですの?」

とお父様の顔をしっかりと見て尋ねてみました。

今のあのお兄様、というのはアンナ様にデレデレとしている、といいますか今後も続いたら害でしかないお兄様のことですわ。

2日に1回のペースで、これだけメイド達が疲弊しているんです。

これが毎日続くとなると、メイドが1人も残らなくなってしまいますわ。

するとお父様もそのことを理解しているみたいで

「それはだな........」

と難しそうな顔をしています。

あと一押し、と言うところでしょうか?

そう思って

「今のお兄様とアンナ様が家を継ぐのなら、この家は終わってしまいますわ。だったら陛下に私からでもお願いして、女でも跡を継げるようにしてもらおうと思っています」

とお父様、それからお母様の顔を見てしっかりと伝えると、皆が黙ってしまいました。

まさか私がそんなことを言うとは思っていなかったんでしょう。

だって、ここ最近は大人しく婚約者候補となっている2人とお話をしていましたもの。

表向きは、ですけどね。

なんて思っていると、沈黙を破ったのはお母様で

「でも、貴方の婚約者候補の2人はどちらも嫁に来ることを前提としているのよ?」

と私に言ってきたので

「えぇ、2人にはこの1か月間、しっかりと話をしてきましたわ」

と答えましたわ。

表向きは、婚約者をどっちに決めるか、と楽しく雑談しているように見えていたかもしれませんが2人には、もしかしたらこの婚約自体がなくなるかもしれない、としっかり話をしています。

するとお父様はお兄様のことも詳しく話していると思ったのか

「どこまで話したんだ.......」

と顔色を悪くさせて、私に聞いてきましたわ。

まぁ、1人の令嬢にべた惚れして、家を継がせるわけにもいかなくなってしまった、なんて他の人に聞かせられるような話ではありませんしね。

それにどちらかと言うと、お兄様は他に相手がいないからアンナ様との婚約がなくなるわけにいかない、みたいな、必死感が伝わってきているので、馬田惚れ、とかそういう話ではないような気がします。

なんて思いながら、顔色を悪くさせているお父様に

「もちろん、お兄様に任せることは出来ない、なんてことは言っていませんわ。純粋に、私がお父様の後を継ぎたい、という思いだけを伝えています」

と言うと、あからさまにホッとしたのが伝わってきましたわ。

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