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73話 ベルンside
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とりあえず、アリスが縁を切られたことはよくわかった。
ということは、俺だけがこんな目に遭っているわけではなくアリスも同じような目に遭っている、ということだよね。
それがわかったら、なぜか心が軽くなった。
だって、自分だけではないからな!
今までは1人だけだと思っていたから苛立ちがあったが、違うとわかればもう十分だ。
そう思って男爵が完全に屋敷の中に入ったのを確認してから、馬車に乗り込んだ。
アリスも不幸になっているとわかればここには何も用事がない。
俺も帰って金目の物を集めないといけないからさっさと帰らなければ。
そう思って家に帰るよう命令を出していると
「待ちなさいよ!」
と言う声が聞こえてきたと思ったら閉めたはずの馬車のドアが再び開いた。
もちろんドアを開けたのはアリスだ。
アリスは凄い形相で馬車に乗り込もうとして来て、咄嗟に
「な、なんだ。勝手に乗ってくるな!」
そう言って中に入ってこれないようにドアを閉めようとしたが
「あんたのせいでこんなことになったんだから責任取りなさいよね!」
そう言いながらアリスはドアが閉まらないよう、なんとか体を中に入れ込んできた。
その姿はまるで餌に群がる動物のような、そんな勢いだった。
そんなアリスに
「はぁ?俺だってお前の被害者だ!なんでお前の面倒まで見ないといけないんだよ!」
そう言って降りるようアリスを押したがビクともしない。
な、なんだ?
本当に女なのか?
そう思いながらもアリスを馬車に乗せるわけにはいかないと思って必死に抵抗するが
「ちょ......っ!何よ!さっさと馬車に乗せなさいよ!」
とアリスは諦めることなく、力も衰えることはなくどうにかしてでも馬車に乗り込もうとしてくる。
流石にこのままだとまずい!
そう思った俺は
「こ、このまま出発してくれ!」
馬車の操縦している我が家の執事にそう言うと、戸惑ったように振り返ったが俺を助けようとする気配は一切ない。
なんだよ!
そんなに心配そうな顔をするくらいなら状況を見て助けてくれたっていいじゃないか!
この状況を見ても見て見ぬふりを続けようとする執事に苛立ちながら、
「さっさと出発しろ!」
と怒鳴りつけると、アリスの
「はぁ!?私を殺そうとでも思ってるの?人殺しになるつもり!?」
という言葉で我に返った。
アリスの勢いの凄さで忘れていたが、確かにこのまま馬車を走らせるとアリスは馬車にしがみついたまま進む、ということだ。
体力を考えると、それだって長くはもたない。
そうなれば馬車から落下して、アリスは.............。
そう考えると、馬車を出発させようとした自分の行動にぞっとした。
今でも状況は最悪なのに、それに殺人まで加わったら......それこそ、まともな生き方なんて出来なくなってしまう。
色々考えた結果、アリスが諦めるとは考えられない、というのも考慮して
「はぁ.....わかった。乗ればいい」
とアリスに言うと、待ってましたと言わんばかりに荷物と自分を馬車の中に押し込んできた。
その表情はなんだか得意げで腹が立たなくもないが、乗っても良いと許可してしまったんだから仕方がない。
はぁ.....と大きくため息をついた後に
「その代わり、ここから離れたところで降ろすからな。俺だって暇じゃないんだ」
そうアリスに言うと、
「わかったわ~」
と呑気に返事をしているが、本当にわかっているのか?
ということは、俺だけがこんな目に遭っているわけではなくアリスも同じような目に遭っている、ということだよね。
それがわかったら、なぜか心が軽くなった。
だって、自分だけではないからな!
今までは1人だけだと思っていたから苛立ちがあったが、違うとわかればもう十分だ。
そう思って男爵が完全に屋敷の中に入ったのを確認してから、馬車に乗り込んだ。
アリスも不幸になっているとわかればここには何も用事がない。
俺も帰って金目の物を集めないといけないからさっさと帰らなければ。
そう思って家に帰るよう命令を出していると
「待ちなさいよ!」
と言う声が聞こえてきたと思ったら閉めたはずの馬車のドアが再び開いた。
もちろんドアを開けたのはアリスだ。
アリスは凄い形相で馬車に乗り込もうとして来て、咄嗟に
「な、なんだ。勝手に乗ってくるな!」
そう言って中に入ってこれないようにドアを閉めようとしたが
「あんたのせいでこんなことになったんだから責任取りなさいよね!」
そう言いながらアリスはドアが閉まらないよう、なんとか体を中に入れ込んできた。
その姿はまるで餌に群がる動物のような、そんな勢いだった。
そんなアリスに
「はぁ?俺だってお前の被害者だ!なんでお前の面倒まで見ないといけないんだよ!」
そう言って降りるようアリスを押したがビクともしない。
な、なんだ?
本当に女なのか?
そう思いながらもアリスを馬車に乗せるわけにはいかないと思って必死に抵抗するが
「ちょ......っ!何よ!さっさと馬車に乗せなさいよ!」
とアリスは諦めることなく、力も衰えることはなくどうにかしてでも馬車に乗り込もうとしてくる。
流石にこのままだとまずい!
そう思った俺は
「こ、このまま出発してくれ!」
馬車の操縦している我が家の執事にそう言うと、戸惑ったように振り返ったが俺を助けようとする気配は一切ない。
なんだよ!
そんなに心配そうな顔をするくらいなら状況を見て助けてくれたっていいじゃないか!
この状況を見ても見て見ぬふりを続けようとする執事に苛立ちながら、
「さっさと出発しろ!」
と怒鳴りつけると、アリスの
「はぁ!?私を殺そうとでも思ってるの?人殺しになるつもり!?」
という言葉で我に返った。
アリスの勢いの凄さで忘れていたが、確かにこのまま馬車を走らせるとアリスは馬車にしがみついたまま進む、ということだ。
体力を考えると、それだって長くはもたない。
そうなれば馬車から落下して、アリスは.............。
そう考えると、馬車を出発させようとした自分の行動にぞっとした。
今でも状況は最悪なのに、それに殺人まで加わったら......それこそ、まともな生き方なんて出来なくなってしまう。
色々考えた結果、アリスが諦めるとは考えられない、というのも考慮して
「はぁ.....わかった。乗ればいい」
とアリスに言うと、待ってましたと言わんばかりに荷物と自分を馬車の中に押し込んできた。
その表情はなんだか得意げで腹が立たなくもないが、乗っても良いと許可してしまったんだから仕方がない。
はぁ.....と大きくため息をついた後に
「その代わり、ここから離れたところで降ろすからな。俺だって暇じゃないんだ」
そうアリスに言うと、
「わかったわ~」
と呑気に返事をしているが、本当にわかっているのか?
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