62 / 89
61話 ブレイドside
しおりを挟む
父上が立ち去った後の温室は何とも言えない空気が漂った。
それほどまでに、父上が苛立っている、ということは皆に伝わった、ということだ。
たった1人を除いては。
「ジオルグ様のお父様はなんであんなに怒っていたのかしら?」
本当にわかっていないらしく、アンナ嬢はキョトンとした顔をして頬に手を当てていた。
はぁ.....状況も理解できないのか。
これが公爵夫人になるなんて無理な話だな。
もしかしたら、今頃婚約がなかったことになるように父上が動いているだろう。
そうなったら俺は一生結婚出来ない、ということか........。
そう思っていると、急にアンナ嬢が
「父上!もう話は終わったし、ジオルグ様と2人で話がしたいわ!」
と言って自分の父親を温室から追い出したではないか。
2人?
俺とアンナ嬢ってことだよな?
話がしたいって、一体何を話せばいいんだ?
と俺が戸惑っているうちにもビューリア伯爵はアンナ嬢をおいたまま温室を後にしてしまった。
後ろに我が家のメイドがいる、ということはきっと馬車まで案内しよう、ということだろう。
そう思いながらビューリア伯爵の後ろ姿を見送っていると、急にアンナ嬢が
「ジオルグ様って、本当にカッコいいですわぁ~」
と言いながら、流れるように俺の膝の上に座ってきた。
まだ婚約はしていないのに、こんな行動はあり得ないことだった。
だから
「アンナ嬢、流石にそれはおかしい」
そう言って、俺の膝の上から降ろそうとした時だった。
後ろの方から
「お兄様!」
という聞き覚えのある声が聞こえてきた。
これには驚いて、アンナ嬢を降ろすことも忘れて
「シャル、違うんだ......っ!」
とシャルに説明をしようとしたが、
「近寄らないでくださいませ」
そう言ったシャルの顔は今まで見たことがないくらい顔をしていた。
俺のことを軽蔑したような、そんな顔だ。
別に何かをしていたわけでもないし、説明すればシャルならわかってくれると思っていたのに、帰ってきた答えは明らかに拒絶だった。
そのことにショックを受けて固まっていると
「えぇ~?何もしてないですわよ?」
そう言ったときのアンナ嬢の顔は、まるでシャルに対して喧嘩を売っているような、挑発している顔をしていた。
本当にやめてくれ。
何もしていない、ということは合っているがそんな顔をしていると何かあったけど何?と捉えられても仕方がない。
シャルの
「だったら今すぐにそこから降りてくださいな。気持ちが悪いですわ」
という言葉のおかげでアンナ嬢は膝から降りてくれたが、絶対にシャルは勘違いしている。
こんな状況では俺に対する印象が最悪じゃないか。
そう思って必死にシャルに説明しようとしても聞いてもらえず、諦めかけている時にアンナ嬢が喧嘩を売るようなことをシャルに言うものだから本当にため息が止まらない。
はぁ......俺にどうしろって言うんだ。
そう思っているとアンナ嬢と言い合っていたシャルが
「お兄様は所詮一代限りの当主でこの家の本当の娘は私だけです。お兄様よりも私の方が立場的に上ですわ」
と言ったのが聞こえてきた。
いや、確かにシャルの言っていることは合っている。
合ってはいるが、父上とシャル、2人から俺はこの家の子供ではない、という現実を見せられたような気がして、胸にナイフのようなものがグサッと刺された感じがした。
シャルの言葉にショックを受ける資格なんてないし、わかっていることなのに..........。
最後にシャルは
「お兄様の顔も当分見たくありませんわ」
と言って温室を後にしたが、俺の頭の中にはシャルが言った言葉がずっと残っていた。
本当の娘、俺は本当の息子ではない。
そのことがこんなにも傷つく言葉だったとは思ってもいなかった。
それほどまでに、父上が苛立っている、ということは皆に伝わった、ということだ。
たった1人を除いては。
「ジオルグ様のお父様はなんであんなに怒っていたのかしら?」
本当にわかっていないらしく、アンナ嬢はキョトンとした顔をして頬に手を当てていた。
はぁ.....状況も理解できないのか。
これが公爵夫人になるなんて無理な話だな。
もしかしたら、今頃婚約がなかったことになるように父上が動いているだろう。
そうなったら俺は一生結婚出来ない、ということか........。
そう思っていると、急にアンナ嬢が
「父上!もう話は終わったし、ジオルグ様と2人で話がしたいわ!」
と言って自分の父親を温室から追い出したではないか。
2人?
俺とアンナ嬢ってことだよな?
話がしたいって、一体何を話せばいいんだ?
と俺が戸惑っているうちにもビューリア伯爵はアンナ嬢をおいたまま温室を後にしてしまった。
後ろに我が家のメイドがいる、ということはきっと馬車まで案内しよう、ということだろう。
そう思いながらビューリア伯爵の後ろ姿を見送っていると、急にアンナ嬢が
「ジオルグ様って、本当にカッコいいですわぁ~」
と言いながら、流れるように俺の膝の上に座ってきた。
まだ婚約はしていないのに、こんな行動はあり得ないことだった。
だから
「アンナ嬢、流石にそれはおかしい」
そう言って、俺の膝の上から降ろそうとした時だった。
後ろの方から
「お兄様!」
という聞き覚えのある声が聞こえてきた。
これには驚いて、アンナ嬢を降ろすことも忘れて
「シャル、違うんだ......っ!」
とシャルに説明をしようとしたが、
「近寄らないでくださいませ」
そう言ったシャルの顔は今まで見たことがないくらい顔をしていた。
俺のことを軽蔑したような、そんな顔だ。
別に何かをしていたわけでもないし、説明すればシャルならわかってくれると思っていたのに、帰ってきた答えは明らかに拒絶だった。
そのことにショックを受けて固まっていると
「えぇ~?何もしてないですわよ?」
そう言ったときのアンナ嬢の顔は、まるでシャルに対して喧嘩を売っているような、挑発している顔をしていた。
本当にやめてくれ。
何もしていない、ということは合っているがそんな顔をしていると何かあったけど何?と捉えられても仕方がない。
シャルの
「だったら今すぐにそこから降りてくださいな。気持ちが悪いですわ」
という言葉のおかげでアンナ嬢は膝から降りてくれたが、絶対にシャルは勘違いしている。
こんな状況では俺に対する印象が最悪じゃないか。
そう思って必死にシャルに説明しようとしても聞いてもらえず、諦めかけている時にアンナ嬢が喧嘩を売るようなことをシャルに言うものだから本当にため息が止まらない。
はぁ......俺にどうしろって言うんだ。
そう思っているとアンナ嬢と言い合っていたシャルが
「お兄様は所詮一代限りの当主でこの家の本当の娘は私だけです。お兄様よりも私の方が立場的に上ですわ」
と言ったのが聞こえてきた。
いや、確かにシャルの言っていることは合っている。
合ってはいるが、父上とシャル、2人から俺はこの家の子供ではない、という現実を見せられたような気がして、胸にナイフのようなものがグサッと刺された感じがした。
シャルの言葉にショックを受ける資格なんてないし、わかっていることなのに..........。
最後にシャルは
「お兄様の顔も当分見たくありませんわ」
と言って温室を後にしたが、俺の頭の中にはシャルが言った言葉がずっと残っていた。
本当の娘、俺は本当の息子ではない。
そのことがこんなにも傷つく言葉だったとは思ってもいなかった。
35
お気に入りに追加
2,508
あなたにおすすめの小説

【完結】『婚約破棄』『廃嫡』『追放』されたい公爵令嬢はほくそ笑む~私の想いは届くのでしょうか、この狂おしい想いをあなたに~
いな@
恋愛
婚約者である王子と血の繋がった家族に、身体中をボロボロにされた公爵令嬢のレアーは、穏やかな生活を手に入れるため計画を実行します。
誤字報告いつもありがとうございます。
※以前に書いた短編の連載版です。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。


異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果
富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。
そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。
死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?

【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…
まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。
お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。
なぜって?
お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。
どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。
でも…。
☆★
全16話です。
書き終わっておりますので、随時更新していきます。
読んで下さると嬉しいです。
婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。
国樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。
声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。
愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。
古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。
よくある感じのざまぁ物語です。
ふんわり設定。ゆるーくお読みください。
地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。

王太子に婚約破棄され塔に幽閉されてしまい、守護神に祈れません。このままでは国が滅んでしまいます。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
リドス公爵家の長女ダイアナは、ラステ王国の守護神に選ばれた聖女だった。
守護神との契約で、穢れない乙女が毎日祈りを行うことになっていた。
だがダイアナの婚約者チャールズ王太子は守護神を蔑ろにして、ダイアナに婚前交渉を迫り平手打ちを喰らった。
それを逆恨みしたチャールズ王太子は、ダイアナの妹で愛人のカミラと謀り、ダイアナが守護神との契約を蔑ろにして、リドス公爵家で入りの庭師と不義密通したと罪を捏造し、何の罪もない庭師を殺害して反論を封じたうえで、ダイアナを塔に幽閉してしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる