婚約破棄されましたが、お兄様がいるので大丈夫です

榎夜

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56話

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執務室に到着すると、お父様はすぐに

「それで?聞きたいことというのは?」

と私に尋ねてきましたわ。

私もなるべく早めにお父様を休ませてあげたかったので、単刀直入に

「お兄様の婚約者の名前が知りたいんですの。少し気になる話を聞いたので」

というと、一瞬驚いた顔をしましたが、すぐに

「アンナ・ビューリア伯爵令嬢だ、と聞いている」

と教えてくれました。

多分ですが、私の興味本位で、と一瞬思ったんでしょうが、私の顔が真剣だったのですぐに思い直してくれたんでしょう。

しかも、まさかのビンゴでしたわね.........。

これには思わずため息をついてしまいましたわ。

しかも、お父様の前でついたことがないほど、とても大きなため息です。

流石のお父様も

「ど、どうしたんだ!?」

と戸惑ってしまっていますわ。

そんなお父様には申し訳ないですが、流石に名前が一緒で黙っているわけにもいかないので

「実はフレッド様から少し気になる話を聞きましたの」

と前置きをしてフレッド様から聞いたことをそのまま伝えましたわ。

すると

「はぁ......なんということだ.......」

お父様は絶望に似たような、そんな表情をしていますわ。

まさかお兄様の婚約者の方がそんな人だとは思いませんわよね。

なんだか私の方が申し訳なくなって

「私もフレッド様から聞いた話なので、そのまま伝えることしか出来ませんが......」

そう言うと、

「いや、十分だ。調べるのはこっちでやろう」

とお父様が言ってくれましたわ。

やっぱりこういう時は頼りになりますわね。

まぁ、私のことではないんですが、我が家のことですもの。

心配になりますわ。

なんて思いながら

「ありがとうございます」

とお礼を言って、お父様が休みたいだろうと思ったので執務室から出ようとすると、それよりも先に

「それに、多分この婚約はなくなると思っているんだ」

とお父様が言ってきましたわ。

.....この婚約が無くなる、ですか?

一回しか会っていませんのに、急な話ですわね。

疲れ切っているお父様には申し訳ないですが、これは流石に聞かずにはいられないので

「それはどうしてですの?」

と尋ねると

「ブレイドは我が家の血が入っていないから、一代限りの当主ということになるだろう?」

「えぇ、そうですわね」

「だが相手側がそれを良く思っていないんだ。大体、考えればこれくらいのことは想定出来ただろうに」

そう言って深いため息をつきました。

大体想像できますがやっぱり面白く思わないですわよね。

しかも、私の息子が当主になったら、お兄様達は隠居しないといけない、ということですもの。

まぁ、公爵夫人になれるだけ良いと思いますけどね。

なんて思いながら

「それで疲れた顔をしていましたのね」

とお父様に言うと

「はぁ......ブレイドも何も言わないし、私だけ何か言っても話も聞けないし」

とのことでしたわ。

これは意外ですわ。

お兄様まで何も言わない、ということは、実は息子が後継者になれないことを面白く思っていない、ということなんでしょうか?

流石のお父様も

「どうしたものか.......」

と頭を抱えていますし........。

お兄様は一体何がしたいんですの?
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