婚約破棄されましたが、お兄様がいるので大丈夫です

榎夜

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53話 ブレイドside

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本当はシャルロットが元婚約者に迷惑をかけられている時も、どうにかしてやりたかった。

なんならシャルロットの隣で、支えてあげたかった。

でも、俺にはそんな資格はないことをわかっているから、ぐっと堪えた。

そんなある日、急に母上から呼び出された。

母上が俺を呼ぶのは珍しいことだし、何かあったのか?と思いながら母上の部屋に向かうと、そこにはお茶もお菓子もしっかりと用意されていて、長い話になるんだろう、というのを察しながら座った。

すると母上は、俺が席に着いたのを確認するとすぐに

「覚悟を決めたから婚約者を決めたのよね?」

と聞いてきた。

急にそんなことを聞かれて戸惑ったせいもあって、なかなか答えられずに黙っていると、母上は小さくため息をついた後に

「そんな中途半端な気持ちの人と婚約する相手の気持ちも考えてみなさいな。嫌なら嫌と断ればいいわ」

と俺に言ってきた。

もしかして、母上は俺の気持ちに気付いているのか?

だから、敢えてそんなことを言っているのか?

母上の考えはわからないが、とりあえず

「い、いえ.....そのようなわけではありません」

とだけ言って椅子に座りなおすと、

「そう?私にはブレイドは悩んでいるように見えたわよ?」

母上はそう言って、なぜか父上と同じような、寂しそうな顔で苦笑していた。

そうだよな.......。

こんなに中途半端な気持ちで、婚約するなんて相手にも失礼だよな。

そう思ったからシャルロットに

「他の人と幸せになれ」

なんて思ってもいないことを言った。

これで、完全にこの気持ちは忘れよう、と思ったから。

完全に拒絶をされればシャルロットだって俺に好きだ、とか言ってこなくなると思ったから。

そして、俺がシャルロットにそんなことを言った次の日、シャルロットに婚約者候補が出来た。

自分で言っておいて自分勝手なのはわかっているけど、婚約者が出来たと聞いた時には心の底から選ばれた人が羨ましいと思った。

しかも、兄上からシャルロットの婚約者候補になった、との手紙があった。

今度会うから、シャルロットの好みの男性のことを教えてくれ、なんて書いてあったな。

でも、そんなの教えられるわけがない。

いや、教えたくない、と思ってしまった。

シャルロットの婚約が上手くいってしまうと、俺の元から離れていってしまうから。

他の人からしたら、自分で他に良い婚約者が、とか言っておきながら何を言ってるんだ、という話だよな。

自分でもそれはわかっていたけど、兄上が婚約できるのに俺が婚約できない、というのは物凄く納得できなくて、シャルロットの好みとはかけ離れた、元婚約者のことなんて書いて送ってしまった。

勿論、実際に会った後に何かしら言われることは承知でやったことだから、何か言われても仕方がないことだと思う。

でも、それほどまでにシャルロットに婚約者が出来て欲しくない、と思ったんだ。

自覚はあるけど、俺って相当女々しい奴だよな。
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