54 / 89
53話 ブレイドside
しおりを挟む本当はシャルロットが元婚約者に迷惑をかけられている時も、どうにかしてやりたかった。
なんならシャルロットの隣で、支えてあげたかった。
でも、俺にはそんな資格はないことをわかっているから、ぐっと堪えた。
そんなある日、急に母上から呼び出された。
母上が俺を呼ぶのは珍しいことだし、何かあったのか?と思いながら母上の部屋に向かうと、そこにはお茶もお菓子もしっかりと用意されていて、長い話になるんだろう、というのを察しながら座った。
すると母上は、俺が席に着いたのを確認するとすぐに
「覚悟を決めたから婚約者を決めたのよね?」
と聞いてきた。
急にそんなことを聞かれて戸惑ったせいもあって、なかなか答えられずに黙っていると、母上は小さくため息をついた後に
「そんな中途半端な気持ちの人と婚約する相手の気持ちも考えてみなさいな。嫌なら嫌と断ればいいわ」
と俺に言ってきた。
もしかして、母上は俺の気持ちに気付いているのか?
だから、敢えてそんなことを言っているのか?
母上の考えはわからないが、とりあえず
「い、いえ.....そのようなわけではありません」
とだけ言って椅子に座りなおすと、
「そう?私にはブレイドは悩んでいるように見えたわよ?」
母上はそう言って、なぜか父上と同じような、寂しそうな顔で苦笑していた。
そうだよな.......。
こんなに中途半端な気持ちで、婚約するなんて相手にも失礼だよな。
そう思ったからシャルロットに
「他の人と幸せになれ」
なんて思ってもいないことを言った。
これで、完全にこの気持ちは忘れよう、と思ったから。
完全に拒絶をされればシャルロットだって俺に好きだ、とか言ってこなくなると思ったから。
そして、俺がシャルロットにそんなことを言った次の日、シャルロットに婚約者候補が出来た。
自分で言っておいて自分勝手なのはわかっているけど、婚約者が出来たと聞いた時には心の底から選ばれた人が羨ましいと思った。
しかも、兄上からシャルロットの婚約者候補になった、との手紙があった。
今度会うから、シャルロットの好みの男性のことを教えてくれ、なんて書いてあったな。
でも、そんなの教えられるわけがない。
いや、教えたくない、と思ってしまった。
シャルロットの婚約が上手くいってしまうと、俺の元から離れていってしまうから。
他の人からしたら、自分で他に良い婚約者が、とか言っておきながら何を言ってるんだ、という話だよな。
自分でもそれはわかっていたけど、兄上が婚約できるのに俺が婚約できない、というのは物凄く納得できなくて、シャルロットの好みとはかけ離れた、元婚約者のことなんて書いて送ってしまった。
勿論、実際に会った後に何かしら言われることは承知でやったことだから、何か言われても仕方がないことだと思う。
でも、それほどまでにシャルロットに婚約者が出来て欲しくない、と思ったんだ。
自覚はあるけど、俺って相当女々しい奴だよな。
38
お気に入りに追加
2,508
あなたにおすすめの小説

【完結】『婚約破棄』『廃嫡』『追放』されたい公爵令嬢はほくそ笑む~私の想いは届くのでしょうか、この狂おしい想いをあなたに~
いな@
恋愛
婚約者である王子と血の繋がった家族に、身体中をボロボロにされた公爵令嬢のレアーは、穏やかな生活を手に入れるため計画を実行します。
誤字報告いつもありがとうございます。
※以前に書いた短編の連載版です。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。


異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果
富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。
そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。
死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?

【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…
まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。
お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。
なぜって?
お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。
どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。
でも…。
☆★
全16話です。
書き終わっておりますので、随時更新していきます。
読んで下さると嬉しいです。
婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。
国樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。
声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。
愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。
古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。
よくある感じのざまぁ物語です。
ふんわり設定。ゆるーくお読みください。
地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。

王太子に婚約破棄され塔に幽閉されてしまい、守護神に祈れません。このままでは国が滅んでしまいます。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
リドス公爵家の長女ダイアナは、ラステ王国の守護神に選ばれた聖女だった。
守護神との契約で、穢れない乙女が毎日祈りを行うことになっていた。
だがダイアナの婚約者チャールズ王太子は守護神を蔑ろにして、ダイアナに婚前交渉を迫り平手打ちを喰らった。
それを逆恨みしたチャールズ王太子は、ダイアナの妹で愛人のカミラと謀り、ダイアナが守護神との契約を蔑ろにして、リドス公爵家で入りの庭師と不義密通したと罪を捏造し、何の罪もない庭師を殺害して反論を封じたうえで、ダイアナを塔に幽閉してしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる