婚約破棄されましたが、お兄様がいるので大丈夫です

榎夜

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48話

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この声を聞き間違えるわけがありませんわ。

お兄様です。

そう思って振り返ると、そこには思った通りお兄様が立っていて、私とフレッド様のことを交互に見ながら驚いた顔をしています。

一方フレッド様は、どこかで会うだろう、と思っていたのか驚くことなくお兄様のことを見ていますわ。

.......それにしても、こうやって並ぶと本当にそっくりですわね。

目の形も、大きさも、雰囲気も............。

血の繋がり、というものを感じますわ。

そう思いながらお兄様に

「私の婚約者候補になったフレッド様ですわ。今から2人でお話をしに行きますの」

とだけ言ってニッコリと微笑みました。

そんなことを言わなくても名前はわかっているでしょうけど、私なりの決意の表れですわ。

お兄様ではない人と婚約します、という。

すると、お兄様は戸惑いながらも

「あ......あぁ。そうなんだ」

そう言ってぎこちない微笑み返してくれました。

なんでお兄様が戸惑うのかわかりませんわね。

だって、自分でもっといい人がいる、と私に言ったくせに、婚約者が決まりかけている状況で今更そんな反応をされても困りますわ。

何がしたいんでしょうね?

そう思いながらフレッド様を見ると、なんだか険しい顔をして

「あの手紙はどういうことなんだ?」

とお兄様に尋ねていました。

なんとなくですが、フレッド様の周りの空気が冷たいような、そんな気がしますわ。

手紙、ですか?

確かに、兄弟たちと手紙のやり取りをしている、と言う話はよく聞きますが、一体何があったんでしょう?

お兄様は楽しそうに返事を書いているような話でしたが違うんでしょうか?

フレッド様の質問に首を傾げていると、お兄様は、はぁ....と小さくため息をついて

「一体何のことかわかりません」

とだけ言うと、さっきのメイドとその場を後にしました。

........本当に何のことでしょう?

フレッド様との手紙に何か気に障ることでも書いていたんでしょうか?

でもお兄様に限ってそんなことはりませんわよね。

そう思いながらフレッド様を見ると、何もなかったかのように

「行こうか?案内してくれる?」

と微笑みました。

聞かれたくないんでしょうかね?

だったら私も深くは聞かない方が良いでしょう。

そう判断した私は

「えぇ、勿論ですわ」

フレッド様の言葉に頷いて、温室へと歩みを進めました。



ーーーーーーーーーーーーー

温室に到着すると、すでに席の準備がしてありましたわ。

お父様が急ぐように命じたんでしょうね。

お兄様の婚約者が来る前の準備で忙しいのに、なんだか申し訳ないですわ。

そう思いながら席に座ると、すぐにメイドがお茶を用意してくれました。

なんだかありがたいような、申し訳ないような、複雑な心境になって、メイドに

「忙しいのにごめんなさい」

と謝罪をすると

「いえ!気にしないでください!」

そう言ってニッコリと微笑んでくれましたわ。

本当にメイド達には頭が上がりませんわね。

今度、何か美味しいクッキーでも差し入れましょう。

そう決意して、入れてもらったばかりのお茶を一口、口の中に含みました。
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