婚約破棄されましたが、お兄様がいるので大丈夫です

榎夜

文字の大きさ
上 下
43 / 89

42話

しおりを挟む

ベルン様に変な噂を流された、という話を聞いてから4日間が経過しました。

今日は休日、ということは私の婚約者候補の人と会う日。

そしてお兄様の婚約者も家に来る日ですわ。

はぁ......なんで日にちが被ってしまうのか、と思いましたが2人とも隣国から来ていますし仕方ありませんわよね。

一応、私の方も家に来てくれるともことで私が午前中、お兄様が夕方ごろ、という予定になっています。

こんなに立て続けに来客があることなんて滅多にありませんので、今日のメイド達はなんだか慌ただしく動いていますわ。

忙しい中、私の準備も入念にしてくれるメイド達には頭が上がりませんわね。

お兄様の婚約者のことも気になりますし........。

どんな人なんでしょう?

真面目で綺麗な人でしょうか?

それとも私とは違って可愛げのある、甘え上手な方なんでしょうか?

どちらにしても、お兄様と堂々とイチャイチャしていられる、という権利を持っているだけでも羨ましいで.......いや、そんなことを思ってはいけませんわよね。

そんなことを考えているうちに、私の準備が終わって

「お嬢様、素敵ですよ」

というメイドの声でハッと我に返りましたわ。

私は今婚約者になる可能性がある人と会うんです。

お兄様のことを考えている暇なんてないんですわ。

そう自分に言い聞かせながら、

「ありがとう」

とメイドにお礼を言って鏡を見ると、普段の私よりも、あからさまに気合の入ったメイク、髪型、そしてドレスを着ている姿が目に入ってきました。

淡いオレンジ色のドレスに白の花の刺繍がされていて、髪の毛はハーフアップで綺麗に巻かれています。

パーティーの時以外は装飾なんて付けないのに、今日はブレスレットもネックレスもしっかりとついていますわ。

それがまた、今日は特別な日なんだ、という思いにさせます。

ですが今はそれが億劫ですわ。

別に名前でなんとなく決めた相手だというのに、こんなに気合を入れるなんて........。

鏡で見た自分の姿に、ついため息をついていると、私の着替えを手伝ってくれたメイドが不安そうに

「お気に召しませんでしたか?」

と私に聞いてきました。

そうですわよね。

このタイミングでため息なんてつかれると自分のメイクか何か悪かったのでは?と不安になってしまいますわ。

これはメイドに悪いことをしてしまいました。

なのでメイドにニッコリと微笑んで

「違うの、凄く綺麗だわ」

そう言いましたが、やっぱり何か不安げな顔をしています。

申し訳ないですわ.......。

本当にメイドがやってくれたことは完璧でしたの。

でも、自分の今の心境のせいでなんだか気分が落ちてしまいましたの。

流石にメイドにそんなことは言えませんけどね。

ふっ、と笑った私の顔を見てメイドは

「す、すみません!どこが嫌でしたか?すぐに直します!」

と慌てて片付けたはずのメイク道具を準備してしまったので

「本当に大丈夫ですわ」

そう言って止めると、不服そうですがなんとか頷いてくれましたわ。

はぁ.....切り替えないとですわよね。

こんな気持ちで他の人と会うなんて失礼ですもの。

そう思いながら、深い深い深呼吸をして目を瞑りました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】『婚約破棄』『廃嫡』『追放』されたい公爵令嬢はほくそ笑む~私の想いは届くのでしょうか、この狂おしい想いをあなたに~

いな@
恋愛
婚約者である王子と血の繋がった家族に、身体中をボロボロにされた公爵令嬢のレアーは、穏やかな生活を手に入れるため計画を実行します。 誤字報告いつもありがとうございます。 ※以前に書いた短編の連載版です。

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

【完結】ご安心を、問題ありません。

るるらら
恋愛
婚約破棄されてしまった。 はい、何も問題ありません。 ------------ 公爵家の娘さんと王子様の話。 オマケ以降は旦那さんとの話。

【完結】政略結婚はお断り致します!

かまり
恋愛
公爵令嬢アイリスは、悪い噂が立つ4歳年上のカイル王子との婚約が嫌で逃げ出し、森の奥の小さな山小屋でひっそりと一人暮らしを始めて1年が経っていた。 ある日、そこに見知らぬ男性が傷を追ってやってくる。 その男性は何かよっぽどのことがあったのか記憶を無くしていた… 帰るところもわからないその男性と、1人暮らしが寂しかったアイリスは、その山小屋で共同生活を始め、急速に2人の距離は近づいていく。 一方、幼い頃にアイリスと交わした結婚の約束を胸に抱えたまま、長い間出征に出ることになったカイル王子は、帰ったら結婚しようと思っていたのに、 戦争から戻って婚約の話が決まる直前に、そんな約束をすっかり忘れたアイリスが婚約を嫌がって逃げてしまったと知らされる。 しかし、王子には嫌われている原因となっている噂の誤解を解いて気持ちを伝えられない理由があった。 山小屋の彼とアイリスはどうなるのか… カイル王子はアイリスの誤解を解いて結婚できるのか… アイリスは、本当に心から好きだと思える人と結婚することができるのか… 『公爵令嬢』と『王子』が、それぞれ背負わされた宿命から抗い、幸せを勝ち取っていくサクセスラブストーリー。

異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果

富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。 そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。 死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?

誤解されて1年間妻と会うことを禁止された。

しゃーりん
恋愛
3か月前、ようやく愛する人アイリーンと結婚できたジョルジュ。 幸せ真っただ中だったが、ある理由により友人に唆されて高級娼館に行くことになる。 その現場を妻アイリーンに見られていることを知らずに。 実家に帰ったまま戻ってこない妻を迎えに行くと、会わせてもらえない。 やがて、娼館に行ったことがアイリーンにバレていることを知った。 妻の家族には娼館に行った経緯と理由を纏めてこいと言われ、それを見てアイリーンがどう判断するかは1年後に決まると言われた。つまり1年間会えないということ。 絶望しながらも思い出しながら経緯を書き記すと疑問点が浮かぶ。 なんでこんなことになったのかと原因を調べていくうちに自分たち夫婦に対する嫌がらせと離婚させることが目的だったとわかるお話です。

【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…

まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。 お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。 なぜって? お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。 どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。 でも…。 ☆★ 全16話です。 書き終わっておりますので、随時更新していきます。 読んで下さると嬉しいです。

婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。

国樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。 声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。 愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。 古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。 よくある感じのざまぁ物語です。 ふんわり設定。ゆるーくお読みください。

処理中です...