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31話
しおりを挟むお母様の言葉はなぜかストン、と私の中に落ちてきて、今までの自分の行いについて少し考える余裕が出来ましたわ。
なんといいますか、今まではお兄様の婚約が決まってしまった、ということしか考えてなかったですわね。
そう思っているとお父様は
「なんでシャルロットにそんなことを言うんだ」
とお母様を怒っていますが、お母様は間違えたことは言っていませんわ。
ベルン様が嫌いだから婚約が嫌だと言ってみたり、血の繋がりは無くてもお兄様と婚約したい、なんてあり得ないことを言ってみたり.........。
貴族の中では望まない結婚をする人なんて沢山しますし、好きな人と結婚できた人の方が数えるくらいしかいませんわ。
それでも、ちゃんと家族として、夫婦として仲を深めて幸せに暮らしている人が沢山いる中で私はなんて甘いことを言っていたんでしょう。
そう考えるとお兄様が相手じゃなくてもいいのでは?と思えてしまいます。
私の周りの人があまりにも幸せに暮らしているのですっかり忘れていましたわ。
まぁ、お兄様に対する思いもその程度だった、ということなんですけどね。
考えを改めた私は、下を見ながら話を聞いていたのを辞めて、しっかりとお母様の顔を見ると、お母様もそれに気付いてニッコリと微笑んでくれました。
まだお母様に怒っているお父様に
「お父様」
と私が声をかけると一瞬だけ動きが止まりましたがすぐに私の方向いて
「どうしたんだ?」
と尋ねてきました。
多分、私の顔が吹っ切れていたんでしょうね。
なんだかホッとしたような顔をしていますわ。
まぁ、私からでは自分の顔はわかりませんけどね。
なんて思いながら
「婚約の件、後で詳しく話を聞いても良いですか?」
そう言ったものの、なんとなく恥ずかしくて苦笑していると、お父様は嬉しそうに
「あぁ!わかった、後で執務室で話そう」
と言ってニッコリと笑っていますわ。
そんなに私の婚約が決まるのが嬉しいんでしょうか?
それとも、私が前に進もうとしているのが嬉しいんでしょうか?
どちらにしても、いずれはそうなるんですから、そこまで喜ぶことではありませんわ。
そう思いながらニッコリと笑って
「お父様、さっきお母様を怒ったのは謝ってくださいな。お母様のおかげで考えが変わったんですもの」
そう言うと、お父様はハッとしたような表情をしていますわ。
結構色んなことを言っていましたからね。
あれは私だったら口もききたくなくなりますわ。
お母様も内心、怒っていたようで
「そうですわね。あなた、謝ってくださいな」
と言ったときの笑みは顔は笑っているけど目は笑っていない、という怖いものですわね。
流石のお父様もまずい、と思ったようで、すぐに
「す、すまなかった......っ」
とお母様に頭を下げていますわ。
これで、良いんですのよね?
私は貴族ですもの。
好きな人と一緒になりたい、というのであれば貴族ではなく平民として生きていかない限り無理な話ですわ。
お兄様は私の好きな人ではなく、お兄様ですのよ。
しっかりと区別しなさいな。
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